2013年12月09日11時56分掲載
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政治
国際人権団体ヒューマンライツ・ナウが特定秘密保護法成立で声明 「市民社会は政府を監視し言論の自由を行使する」
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、12月6日に成立した特定秘密保護法が市民を抑圧する法律であることを改めて強調、その廃止を政府に求めると同時に、同法が発動されることを通じて、言論・表現の自由等の人権侵害が発生しないよう、厳しい監視を続けていくとの声明を、7日に発表した。声明は、市民社会とジャーナリズムが委縮することなく、政府への監視活動を続け、言論の自由を行使していくことから今何よりも必要だと述べている。(日刊ベリタ編集部)
特定秘密保護法 可決成立にあたっての声明
1 2013年12月6日、第185回臨時国会において、日本国内外の大きな反対にも関わらず、特定秘密保護法が可決成立した。同法が施行されれば、表現の自由を含む日本の人権・民主主義を深刻に損なう危険性がある。
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、同法について、秘密の範囲が広範で限定がなく、国民の知る権利を侵害する危険性があること、憲法違反、重大な権力犯罪や人権侵害等が機密指定される危険性があること、秘密指定の濫用をチェックする第三者的機関もないこと、内部告発者に対する保護がないこと、「教唆・共謀・煽動」そのものを処罰する規定により、報道の自由が損なわれ、市民社会による行政監視・モニタリング活動そのものが侵害され、委縮させられる危険性があること、国政調査権、司法のコントロールという立憲主義の基本を掘り崩す危険性などを指摘し、法律に反対してきた。
同法は、ツワネ原則等、表現の自由・知る権利の保障に関する国際人権基準からも程遠い、人権保障のセーフガードを欠くものである。そのため、同法については、当団体の他にも国際的な人権NGOであるヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナル日本、Article 19、さらに国際ペンが、具体的な問題点を指摘して深刻な懸念を表明してきた。自由人権協会、日本弁護士連合会やその他法律家団体は法案に反対した。
さらに、11月22日、国連表現の自由に関する特別報告者フランク・ラ・ルー、健康の権利に関する特別報告者アナンド・グローバーが「透明性は民主主義における核心的要求であり、法案は秘密性について過度に広範かつ曖昧で、内部通報者やジャーナリストに対する深刻な脅威を含む」等として、これに懸念を表明し、12月2日には国連の人権トップであるピレイ国連人権高等弁務官が「何が秘密を構成するのかなど懸念が明確になっておらず、政府に不都合な情報も秘密指定できる」「日本国憲法や国際人権法で保障される表現の自由や情報アクセス権への適切な保護措置」が必要として拙速審議をしないよう求めた。
国連が日本の法案について、その成立以前から懸念を表明するのは極めて異例であり、このことは、法案がいかに国際人権基準に違反し、人権侵害を助長する危険性があるかを如実に示している。
ところが、日本政府は、こうした内外の声に一切耳を貸さず、国連や当団体その他の国際人権団体の指摘に対して真摯に受け止め、懸念を払しょくする議論も尽くさないまま、極めて拙速な短期間審議で採決を強行し、法律を成立させたものであり、著しく遺憾である。当団体は、法案採決に強く抗議する。
2 法案の成立の経過においても、審理が全く尽くされないまま、強権的な手法で採決を強行した。法案については、パブリックコメントで8割以上の国民が反対・慎重な意見を述べ、福島で開催された公聴会においては、全員が反対・懸念を示し、世論調査では、5割以上が反対し、8割以上が慎重な審議を求めていた。研究者、文化人、ジャーナリストからも続々と反対の意見が示された。
ところが、政府は、影響を受けるべき市民社会、報道機関、そして主権者の懸念・反対意見に何ら真摯に向き合うことなく、法案採択を強行したものであり、その手法は独裁的と言うべきであり、極めて問題と言わざるを得ない。
法案審議においては、自民党石破茂幹事長が自身のブログで「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」(引用)などと、国民の正当な表現行為をテロ類似の行為として敵視する認識すら示した。
こうした発想に基づき、独裁的な手法で政治が今後も続けられるのであれば、市民の言論・表現の自由等人権が危機に晒され、民主主義を阻害する深刻な懸念がある。
3 本法は、表現の自由、知る権利等を保障した日本国憲法に反する違憲性の疑いが濃厚であり、今後の運用で改善できるものではない。ヒューマンライツ・ナウは、政府に対し、このような法律を施行することなく、直ちに廃止するよう求める。
そして、本法を基礎に、政府、捜査当局が、憲法、国際人権法を逸脱して、国民の知る権利、表現の自由等を侵害するような事態は決して容認できない。
捜査当局・司法には、法が施行されるとしても、憲法・国際人権法に違反する運用・実施を行うことがないよう強く求める。特に、司法は、法令・適用の合憲性を厳格に審査し、憲法の番人としての役割を果たすよう要請する。
ヒューマンライツ・ナウは、日本を本拠とする国際人権団体として、今後とも市民社会や良心的な報道機関等と連携して、決して委縮・自己規制することなく、政府の行為へのチェック・情報収集・政策提言・表現活動等を継続し、市民社会としての役割を果たしていく。また、同法が発動されることを通じて、言論・表現の自由等の人権侵害が発生しないよう、厳しい監視を続けていく所存である。
以 上
2013年12月7日
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