2013年12月26日13時00分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201312261300544
欧州
欧州でもファシズムが復活の兆し 〜1930年代と2010年代〜 欧州連合の緊縮政策が後押しか
ニューヨークタイムズは12月19日付で’Is fascism returning to Europe?'(ファシズムは欧州で復活しつつあるのか?)と題する政治コラムを掲載した。
これは今日、南米より欧州において、権威主義的ポピュリズムの傾向が高まっていることを示している。むしろ、南米ではポピュリズムが退潮の兆しを見せているのに反し、欧州ではその傾向が増しているというのである。
2014年5月に欧州連合参加国内で欧州連合議員選挙が行われるが、この選挙で極右政党と呼ばれる各国の政党が躍進するのではないかと見られている。その先には欧州連合解体の可能性すらある。これらの極右政党が欧州連合に反対しているからだ。そこでは移民排斥運動が関係している。
欧州で権威主義的ポピュリズム(ナチスドイツもこのカテゴリーに分類されるとみられる)が復活しつつある理由は極端なグローバル化や欧州連合に参加したことで国内産業が空洞化したり、低賃金化が進んだり、失業率が高まったりといった負の影響が広がっていると見る人が増えていることにある。つまり、国境を開放したことで伝統的な生活が脅かされると感じる人々が各国で増えているのである。
このコラムでは書かれていなかったことを付け加えれば、欧州連合の拡大で、東欧から貧しい移民(ロマを含む)が流入する、アラブの春の影響でアラブ諸国から移民が流入する、などなど経済危機にある南欧諸国に移民がさらに入って来つつあるのだ。だから、たとえばフランスの内務省ではイスラム原理主義テロに警戒せよ、と繰り返しアピールしている。また、フランスのマニュエル・バル内務大臣(社会党)が「ロマをフランスに統合するのは無理。あまりにも習慣が違っているから」などと語ったことも報じられた。こうしたこともあって、移民排斥・欧州連合離脱・反グローバリズムを掲げる極右政党が躍進している。
コラムで印象深いのはブリュッセルにある欧州連合本部が欧州財政危機に対する対処法として「緊縮財政」を南欧諸国に課していることが極右勢力を活気づける原因となっていると指摘していることだ。この痛みを伴う緊縮政策には不況が深刻化している南欧諸国が軒並み反発している。通貨危機の震源地ギリシアはもとより、イタリア、ハンガリー、フランスなどの国々で欧州連合脱退を表明する、こうした勢力が伸びているのだ。
コラムでは触れられていないが、緊縮政策を進めているのは欧州連合の実質的なリーダーであるドイツであり、IMF(国際通貨基金)などのアメリカの影響が強い国際経済組織である。このように欧州連合において南北と東西に亀裂が入っている。それが鮮明になるのが2014年であり、権威主義ポピュリズムが台頭する可能性があるというのだ。
■NYT 'Is Fascism Returning to Europe?’
http://www.nytimes.com/2013/12/19/opinion/is-fascism-returning-to-europe.html?_r=0
■フィリップ・ロス作’The Plot Against America’
2004年に米作家フィリップ・ロスが書いた「プロットアゲンストアメリカ」は1940年の米大統領選で、ルーズベルト大統領が破れ、共和党から立候補した親ナチ派のリンドバーグ(大西洋を横断したあの飛行士である)が勝利した場合を仮想した小説である。米国も選挙で一つ間違えると危うかったのかもしれない。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。