2013年12月30日17時10分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201312301710281

中東

世界のベタ記事から 〜シリアの化学兵器処理で国連が声明「最も危険性の高い化学兵器の国外運びだしが年末期限に間に合いそうにない」

   シリア空爆回避の条件とされたのが化学兵器の廃棄だった。その期限は来年半ばと報じられたが、一部の危険性の高い化学兵器の国外への運びだしの期限が明日、12月31日つまり2013年末に設定されていたらしい。だが、その期限に間に合いそうにない模様だと国連が警告を出したと言う。 
 
  ニューヨークタイムズによれば年末のこの期限は国連安保理の枠組みの妥協策で最初の関門とされているという。内戦の激化、輸送システムの不良、悪天候など様々な条件がシリアのラタキア(Latakia、ラーディキーヤ)港からの化学兵器運びだしを妨げていると言う。ラタキアは地中海に臨むシリアの少し出っ張った港である。 
 
  今年の11月のBBCの記事によると、この港に近い場所をイスラエル空軍が攻撃している。BBCによると、イスラエル軍の狙いはロシア製ミサイルの破壊だったとされるが、このミサイルがレバノンの武装組織ヒズボラの手に渡るのを防ぐ目的だったとされる。レバノンとの国境はラタキアのおよそ100キロ南に位置する。 
  ラタキアはシリアのアサド政権が手堅く死守している町であると言う。イスラエル政府高官は「シリアが保有する兵器が、通常兵器であれ化学兵器であれヒズボラなどの地域の武装組織の手に渡る危険があれば攻撃する」と声明を出した。この兵器は一説によればロシア製のSA−125とされ(匿名の米高官)、記者によるとイスラエルの攻撃は米ロ間の難しい交渉のリスクになりかねない危険なタイミングでもあったということである。 
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-24767571 
  イスラエルは米国のシリア空爆中止に反対声明を出し、必要なら単独でも攻撃すると言っており、またシーア派の一派であるアサド政権と異なりスンニ派で占められるサウジアラビアもまた同様にシリアに対するタカ派的声明を出している。シリアのアサド政権による化学兵器廃棄作業が滞り、約束が守られなければ再びシリア空爆の声が高まる可能性がある。 
 
 
■OPCW (ORGANISATION FOR THE PROHIBITION OF CHEMICAL WEAPONS)=化学兵器禁止機関。1997年の化学兵器禁止条約に基づき発足。本部はオランダのハーグ。 
http://www.opcw.org/news/article/statement-by-the-director-general-6/ 
 
  ’ Noting the statement issued today on behalf of the Joint Mission that the transportation of the most critical chemical material before 31 December is unlikely, the Director-General recalls that his latest monthly report issued on 23 December 2013 encourages the Syrian authorities to look at all possible options for risk mitigation in order to transport the chemicals from their locations to the port of loading. ’ 
 
  化学兵器の輸送に際しては化学兵器貯蔵地から港まで、トラブルを避けるルートを慎重に検討するようにアドバイスをしたと書かれている。これを読むと、アサド政権が化学兵器廃棄に抵抗しているのではなく、状況が予断を許さぬために遅延している印象である。 


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