2014年02月01日13時48分掲載
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社会
米国のカジノについて 〜特区構想を考える〜 負のコストも計算せよ
たまたま西条氏の寄稿があったので、記事を書く事にしたのだが、米国のカジノについて。筆者はカジノの研究者でもなく、犯罪研究を専門にしている人間でもなく単なる一映像業者なのだが、90年代にこのカジノの話題に少し関連する情報に接したことがあったのだ。それはアリゾナ州のネイティブ・アメリカン(昔で言うインディアン)居留地にカジノがあり、ネイティブのコミュニティが崩壊しかけている、という話である。
その情報は英字新聞の記事からのはずだが、当時インターネットなども含めて調べてみるとアリゾナ州の刑務所に収監されている犯罪者の半数以上はネイティブ・アメリカンであり、特に10代の若者が多かったことが注目された。さらに情報をたぐっていくと、少年たちの親はアルコール依存症にかかっているケースが多く、その家庭の若者たちも非行少年化し、彼らの犯罪も銃を使う強盗など凶悪化する傾向があるとされていた。
そこで地域のネイティブ・アメリカンの大人たちが<これではいかん>、と立ち上がり町の若者たちにバスケットボールなどのスポーツを奨励したりするコミュニティ復活運動に取り組み始めていたのだった。こうしたコミュニティ復活のための大人たちの行動はアリゾナ州だけでなく、各地のネイティブ・アメリカン居留地で起きていた。当時、筆者はこれを研究するプロジェクトを米財団に提出したことがあったので覚えているのである。
日本から見るとあまり見えないことだがネイティブ・アメリカンの居留地にカジノがよくあるのである。産業が特にないため、地域おこしで作るのだろう。だが、そこでは飲酒や過食で成人病やアルコール依存、さらには暴力行為などが増えていた。ネイティブ・アメリカンと言えば伝統を大切にし、民族に誇りを持ち、自然を大切にし、年寄りを尊敬し、古来からの知恵を持って自然とともに生きる・・それがイメージなのだが、実はそうした生活が損なわれているのだった。それは単にカジノだけの問題ではないだろうが、ギャンブルと酒がサービスの中心になっているカジノで両親たちが働くことによって、次第にその負の影響を家族も地域社会も受けてしまうのだ。ネイティブ・アメリカンは人種的・体質的には日本人に近いので、彼らのコミュニティにアルコール中毒や糖尿病が蔓延していることは他人ごとに思えなかったのである。
では最近はどうかと思ってネットを見ると、去年9月25日のフォーブス誌のウェブサイトにも同様の記事が掲載されていた。
http://www.forbes.com/sites/realspin/2013/09/25/as-native-american-casinos-proliferate-the-social-costs-of-the-gambling-boom-are-ignored/
’As Native American Casinos Proliferate, The Social Costs Of The Gambling Boom Are Ignored’(ネイティブ・アメリカンのカジノは増える一途だが、ギャンブルブームが社会に及ぼす負の面は無視されている)と題する記事である。
記事によれば2012年の研究ではある町にカジノができると、薬物乱用、自殺、暴力犯罪、泥棒、破産などが10%増加したとしている。他の研究でも8〜9%犯罪が増加し、それによって自治体の市民の負担となる費用は1年で市民一人当たり70ドル(約7000円)増えることになったという。またアトランティックシティの場合、カジノが1980年代に急発展した結果、カジノ周辺の半径30マイル(約50キロ)圏内で犯罪が2倍に増加したという。この記事はカジノにはカジノの魅力もある一方で、周辺コミュニティの崩壊を促し、その社会的コストも無視できないことを示している。また、そこでは犯罪組織によるマネーロンダリングや高利貸しなどの問題も出てくるであろうことを示している。
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