2014年02月02日00時18分掲載
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米国
同性婚容認の背景は? 過去四半世紀、人工授精で子供を持つゲイのカップルが増加 家族の変貌
パリでレズビアンの恋人同士を描いた映画「アデルの人生」を見た。これは去年、最高賞のパルムドールを受賞したからご存じの人も多いだろう。3時間にわたる二部構成の大作ながら飽きさせることはない。構成的には以下のようである。
第一部 男子高校生とセックスをしたアデルだったが、町でふと出会った美大生の女性が忘れられなくなり、彼女との恋に目覚め、関係が深まり、同棲に到る。
第二部 二人の関係に亀裂を入れたのは妊娠中の女性だった。やがて画家になった恋人はアデルを捨て、出産したその女性と家族を持つ。
映画が仏語だったので多少、類推の所があるのはご容赦願いたいのだが、この映画がパルムドールを得たのは恐らく、同性愛を異性愛と変わらぬ人間の愛として遺憾なく描きつくしたことにあるのではなかろうか。「アデルの人生」ではレズビアン同志の出会いから、発展、そして浮気、喧嘩、別れまですべてにおいて、異性愛と変わらない生々しい人間の営みが見えた。しかしながら、衝撃的だったのは第二部の冒頭で、妊婦が突如二人の間に登場するくだりである。何か、不吉な前触れのように、それは主人公のアデルを不安にするのである。家族を持ちたい、という人間の持つ欲望が恋人に芽生えてくるのである。
今、アメリカの州で同性婚を認めるところが増えている。その背景には同性婚の人々も人工授精によって子供を持つようになったことが社会的な背景にあるのではなかろうか、と思われるのである。異性愛の人々でも子供を持たないカップルは少なくないし、生涯独身の人々もいる。そんな中で同性愛者でも子供を作って家族を持ち、育てる人々が増えてくると、社会の見方も変わり始めるのではないか。このテーマを取材したことがないために推測の域を出ないのだが、子供が生まれれば相続の問題や別れにまつわる親権の問題など様々な事柄が浮上してきて、そこには社会性が生まれてくるはずである。
以下は1989年のニューヨークタイムズの記事である。25年前、つまり四半世紀も前の記事である。ここにレズビアンの人々の間に人工授精で赤ちゃんを持ちたいと望むカップルが増え数千人に上っていると書かれているのだ。
http://www.nytimes.com/1989/01/30/us/lesbian-partners-find-the-means-to-be-parents.html
そして実際にたまたまであるが、デンマークのコペンハーゲンで米映画「名も知らぬ精子ドナー(Donor Unknown)」を見た。その映画は若かった頃、精子バンクのドナーとなった一人の独身の初老男性のもとに生物学上の父を捜して、子供たちが集まってくるドキュメンタリーだった。映画では彼の子孫は20数人に及んでいたが、彼の精子で子供を作ったカップルにはレズビアンもいてそのカップルも出演していた。彼の精子で人工授精を行ったクリニックの医師はこれまで総数で数万人を人工授精で産ませたと語っていた。そうした赤ちゃんたちがすでにたくさん成人しているのである。どのような論よりもこの実存は重い。たとえ結婚に対する考え方でゲイのカップルが不利益を被ったとしても、ゲイの子供たちは少なくとも差別を受ける言われはないからである。これらの人々が社会に数千人、数万人と巣立って来ると、自然と社会の認識を変えていくことになるだろう。
■ジェリー・ロスウェル監督「名も知らぬ精子ドナー(Donor Unknown)」 〜生物学上の父を訪ねて〜
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