2014年02月18日22時18分掲載
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コラム
人はほめて育てろ! 鬼塚忠
2月9日。鹿児島の鹿屋まで、友人である松永太郎さんが演出するミュージカル「ヒメとヒコ」を観にいった。実は去年もこの舞台を観に行っていた。その際、一公演だけ観るつもりが、あまりの完成度に私は4回も観た。期待をいい意味で大きく裏切るクオリティだった。そのなかでも特に光っていた女性がいた。高校二年生の宮園唯さん。私は松永さんに頼んで唯さんと直接話をさせてもらった。
「唯さんの歌は本当にうまい。感動するよ。その才能は全国レベルでじゅうぶん通用するから大学は東京に出てくればいい。歌に青春を賭ける意味はあると思うよ。もっと全国区レベルで勝負してはどうなの?」そう言った。お世辞だったわけではない。本当にそれだけうまいと心から感じたので、そう言ったのだ。
しかし彼女は喜ぶ表情をしながらも、「うーん」と言っていい返事をしない。彼女は商業高校に通っており、大学受験は考えていなかったようだった。それに保守的な環境だったので、もっと地道な道を進むよう周囲から言われていたようだった。
ところが、その言葉を励みに(してくれたのだろうというのは、私の一方的意見かもしれないが)、たった一年間で学業の偏差値を20ほど伸ばし、今年、見事に明治大学商学部に合格したのだ。偏差値も高く、かなりの難関である。その報告を受けた時、私はびっくりした。私だけでなく、周囲の人々全員が驚いただろう。何しろ、その高校はじまって以来の奇跡なのだという。
「人はほめて育てろ」よくそう言われるが、はからずも結果的にそうなったわけだ。もちろん、芯の強さを持つ彼女だったからこそ、頑張れたわけだが、本当にびっくりした。ほめて人を育てることの大切さを身をもって体験した。いい体験をさせてもらった。
気がつけば、私は今まで、経営する会社でもその他なんでも、人をほめて育てるなんてことはしなかった。それは自分の気持ちを保つために、自分の都合でものを言ったり、怒ったりするからで、言われる人のことを本当に思っていなかったからではないだろうか。ちょっと反省した。
私の会社でも、もうちょっとほめて育てることを取り入れようと思う。
鬼塚忠 (作家・出版エージェント)
「アップルシード・エージェンシー」代表
http://www.appleseed.co.jp/
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