2014年02月28日06時15分掲載  無料記事
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経済

ウクライナの経済危機 〜「マネードクター」のS.ハンケ教授は Currency Board 制を即導入せよと示唆〜

 ウクライナはソ連崩壊以来の政変を迎えているが、経済も破綻の危機にある。そこでマネードクターの異名を持つスティーブ・ハンケ(Steve Hanke)教授はカレンシーボード制(Currency Board System)をすぐに導入せよ、と示唆している。 
http://www.cato.org/blog/tags/ukraine 
 カレンシーボード制は経済変動で通貨危機に陥った場合に適用する対策の1つ。安定した外国通貨との交換レートを決め、そのレートに見合った水準で通貨発行量を規制する。その国の中央銀行から独自の金融政策を奪うことになるが、こうすればハイパーインフレに陥ることを防ぐことができる。もちろん、自国で自由に通貨の増発ができなくなる。 
 
  ハンケ教授はハイパーインフレの分析と対策では世界的に知られ、実際に過去に危機に瀕した国々から経済顧問に雇われてきた実績を持つ。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の経済学者だが、同時に米保守系シンクタンクのCATOインスティテュートにも属している。 
 
  ハンケ教授は1997年にハイパーインフレに陥ったブルガリアの大統領から経済顧問に招かれた。1997年2月のブルガリアの月間インフレ率は242%とハイパーインフレに陥っていた。100%の月間インフレ率は1か月で物価が2倍になることを意味する。200%では3倍。つまり、通貨増発により、わずか1か月で物価が3倍以上になる異常事態にブルガリアは陥っていた。ハイパーインフレの定義には諸説あるものの、通説では月間インフレ率が50%以上に達した場合を指す。つまり、1か月で100円だったものが150円に値上がりしたらハイパーインフレと考える。 
 
  月間インフレ率が242%になったブルガリアに招かれたハンケ教授はただちにカレンシーボード制を導入、ハイパーインフレを鎮静化することに成功した。ブルガリアのケースでは1ドイツマルク=1000Levaという交換レートに固定した。 
 
  Levaはブルガリアの通貨単位で、単数形がLev(レフ)、複数形がLeva(レヴァ)となる。ハンケ教授が書いているように1997年に安定していたドイツマルクにLevの為替レートを固定し、ハイパーインフレの鎮静化に成功。その後、欧州連合の通貨がユーロに統一されると、ブルガリア通貨Levもドイツマルクから新通貨ユーロへと、為替レートを固定する(pegする)対象を切り替えた。 
 
  今回のウクライナの危機でもハンケ教授はカレンシーボード制を導入すれば通貨に信頼がもたらされ、ハイパーインフレを避けることができると主張している。しかし、この場合は固定する(ペッグする)対象通貨がもしユーロなら、ロシアにとってはウクライナの欧州連合よりを認めてしまう、ということにもなりえるからカレンシーボード制を導入できるかどうか、また導入する場合の基準通貨が何か、そのあたり、先行きはまだ見えない。 
 
 
■ウクライナの債務 
 
  日経新聞によるとウクライナは対外債務が国内総生産(GDP)の約80%に相当する1400億ドル(2013年末現在、約14兆円)に達したと発表した。約150億ドルまで減少した外貨準備高の10倍近い額だという。 


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