2014年03月15日00時32分掲載
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科学
STAP細胞の論文騒動について 〜ある研究者はこう見る〜
理化学研究所の小保方晴子氏らが英科学誌ネイチャーに発表した新しい万能細胞「STAP細胞」。しかし、その論文に様々な疑問が寄せられ、論文が撤回される方向に動いている。これをいったいどう見たらよいのか。この分野に詳しいある研究者に話を聞いた。
「(論文は)完全にアウトですね。論文の中で行ったとしている実験の結果の証拠としての写真が博士論文作成時の別の実験のものであることが明白になったわけですから、まず今回の論文の寄って立つデータの一つがなかったことになります。
その時点でこの論文をアクセプトしたレフェリーは全員が本当の写真を要求するでしょう。それが出てこないところでリジェクトでしょうから、論文取り下げは当然ですね。
この人は(早稲田大学時代の)博士論文でも20ページに渡ってNIH(アメリカ国立衛生研究所)のウェブサイトの文章をコピペ(切り張りして引用)していたというから大胆にもほどがありますね。ただ、ここは人間性と言うよりも大学の指導の問題のような気がします。普通はばれたらまずいという頭が働くはずですが、今はこういうことが許されるという感覚がついてしまっている人も多いのかもしれません。
では、肝心のSTAP細胞は嘘か?というと、そこはわかりません。再現性を確認できた研究機関がないのか?アメリカの共同研究先では再現できているのかははっきりしませんがひょっとして1万回実験すれば1つくらいできる率で、たまたまできたのを報告したということもあります。
しかし、その場合、論文には作成効率が書かれてあるでしょうから、論文通りのやり方でやってその効率ではできないとすれば、論文は嘘になります。科学ではなく、職人芸の世界になります。世界中でこの人しかできませんというのは科学では説明できないのです。ひょっとすると、この人は「私にはできました」と言う言い逃れができると思っているのかもしれませんが、それは科学ではありません。
ただ、(山梨大学教授の)若山さんが関わっているので、本物なら再度論文を作りなおしてくると期待しています。科学の世界では999回実験して諦めた人と、1000回やって成功する人に分かれるのです。
私はIPS細胞を2つの遺伝子を導入して駄目だったので無理と諦めた側です。(京都大学の)山中さんは24個も導入して成功させました。最終的に必要なのは4つの遺伝子でしたが。その違いは信念です。
彼女が信念を持っているのなら、死ぬまで再挑戦するでしょうし、嘘で塗り固めた研究であることを自分で知っていれば、適当なところで身をひくでしょう。
この先を見守っています。」
この研究者の見立てではもし今回の論文の瑕疵が確信犯的な性質のものであれば途中で研究もやめるだろう。しかし、真にSTAP細胞の存在について信念があれば研究を継続するだろう、ということだ。
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