2014年03月22日12時20分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発】米国で始まった脱原発の動き(下) 予算は凍結され、世界第三位のウラン濃縮企業が事実上の経営破たん 山崎久隆
もともと10億ドルの予算で始まった施設建設は、米国NGOの「憂慮する科学者同盟」エドゥイン・ライマン上級研究員によれば、既に現時点での見積もりでも77億ドルに急騰し、最終的には300億ドルにものぼるとみられている。
◆かさむコスト
今回凍結された予算は、2015会計年度(2015年10月から2016年9月)で、これは解体核兵器を含む国家安全保障上の予算総額が279億ドル(2兆8千億円)の規模だ。。
その中からMFFFを含むMOX燃料製造予算を削減し、総額を117億ドルに圧縮した。解体核プルトニウムに関する予算は、OX計画が外された結果、安全管理のための16億ドルにまで削減されている。
エネルギー省の予算削減は、これ以外にも「小型モジュール原子炉研究費用9,700万ドル(約100億円)、先進的原子炉開発と核燃料サイクル技術予算8億6,300万ドル(約880億円)」が含まれている。文字通り「先進的」原子力開発予算が大きく削減されていることが分かる。
MFFFの肥大化するコスト、どこかで聞いたような話だが、米国においても想定されない事態が度々発生し、そのたびに見積もりを修正していくうち、ついにMOX計画自体が総額3兆円規模にふくれあがり日本と同様の道筋を辿った。
しかも、ここで製造出来るのは最大でも32トンのMOX燃料だけである。プルトニウムを燃料にしても、その後に燃やすあてがなければ何もならない。実際に米国では、MOXを燃やす原子炉は決まっていない。
◆MOX計画から逃げる電力
MOX燃料を使う予定だったマクガイヤ1号、2号機、カトーバ1号、2号機(デュークエナジー社)の合わせて4基の原発で予定していたが本格実施は出来なかった。
フランスのカダラッシュにあるアレバ社のMOX燃料製造工場で作られた燃料体を入れて行われたMOXの燃焼試験では、異常な膨張などがあったとされている。原因はアレバ社の設計にあるとしているが具体的な情報は公開されていない。軍事用のプルトニウムであることから、秘密にされている。
しかし異常燃焼を来したことで、それぞれの原発でのプルサーマル計画は中止された。言い換えるなら、商業規模で使用するには看過できないほど危険だったことを意味する。
これでは使うあてのないMOX燃料体をいくら製造しても無駄で危険なだけ、そのため兵器級プルトニウム処分計画は根本から見直さざるを得なくなった。
◆ウラン濃縮「USEC社」の破産
世界の原子力産業界に衝撃が走る事態がもう一つ明らかになった。世界第三位のウラン濃縮企業、米USEC(ユーゼック)が、3月5日に連邦破産法第11条の適用を申請(日本では民事再生法の適用に相当)、事実上の経営破たんを来したことが明らかになった。
ウラン濃縮については、日本の原発が全部止まっている現在、世界需要の大きな部分が事実上消滅した。ドイツも脱原発の方針の下で稼働する原発が急減している。日本は2010年に約700トンの濃縮ウランを輸入したが、そのうち500トンがUSECでの濃縮だった。
さらにUSECでは、日本の需要を当て込み、高性能遠心分離法などの新たな濃縮プラントに投資する計画が進行していた。これもまた経営を圧迫したと考えられる。
ウラン濃縮工場を運営してきた会社が破産を申請したことは、原子力産業の黄昏がダウンストリーム(再処理や廃棄物処分)だけでなくアッパーストリーム(鉱山から核燃料加工まで)の分野においても確実に広がっていることを示している。<了>
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