2014年05月21日00時40分掲載
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反戦・平和
新外交イニチアティブ(ND)主催「今なぜ、集団的自衛権なのか」
「外交」と言うと政府の独占事業のような響きがあるが、普通の市民が主役を張る外交もある。民間シンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND/New Diplomacy Initiative)はその担い手の1つである。
事務局長の猿田佐世弁護士が中心となって2013年8月に設立したNDは、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、東京大学教授の藤原帰一氏、法政大学教授の山口次郎氏、ジョージ・ワシントン大学教授のマイク・モチヅキ氏、元防衛庁官房長の柳澤協二氏が理事に就任している。
NDは、自らの活動について次のとおり説明している。
○ 安全保障や外交問題に関する政策提言
○ 各国の政府・議会・大学・シンクタンク・NGO・マスメディアなどへの直接的な働き掛け
○ 海外情報の日本国内での発信
○ 日本の情報を海外に発信
既存メディアや政府の外交ルート以外から情報を収集するとともに、自らの情報を海外に発信する方法を模索していた沖縄県名護市が昨年、団体会員としてNDに加入したというニュースで既にご存知の方も多いかと思う。
筆者がこの原稿を書いている最中も、稲嶺進名護市長の訪米(5月15日〜)をコーディネートするなど活躍の場は広がりつつあるようだ。
そのNDは、今年4月下旬、東京・永田町の衆議院第一議員会館で集団的自衛権をテーマとする院内集会を開催している。
防衛庁出身で、小泉内閣、第1次安倍内閣、福田内閣、麻生内閣と4代に渡って総理に仕えたND理事の柳澤氏は、安倍政権が集団的自衛権の行使容認を目指す理由について、次のように分析した。
「『なぜ安倍さんは集団的自衛権の行使容認を目指そうとしているのか』を考えた末に私が辿り着いた結論ですが、安倍さんは『日米安保条約を堂々たる双務性にしていく』と語っているものの、実際のところ安倍さんの本質的な動機は『やりたいからやる』というところでしょう」
「安倍さんが掲げる『積極的平和主義』とは、一言で言うと『日本は戦後一貫して戦後秩序の受益者であった。それを、これからは秩序を作る側にならなければいけない』という発想です。これと集団的自衛権が合わさると、パワーポリティクスすなわち力を背景にした国際秩序の維持に日本も入っていくということです。しかし、力の外交というものは、そもそも日本にとって身の丈に合わないものです」
山口理事は、尖閣諸島の国有化をめぐる報道に触れつつ、今の日本の政治状況に懸念を示した。
「日中間の緊張が高まったとき、火を付けた当時の石原慎太郎東京都知事は、野田首相との会談の中で『日中で武力衝突が起こっても良いんだ』と発言したそうです。つまり、尖閣の問題を奇貨として、憲法9条あるいは戦後日本が作り上げてきた平和国家としての縛りを取っ払いたい、そのためには偶発的な衝突があっても良いと思っている人が政治の世界に一定数いるという現実を直視しなければなりません」
鳥越理事は、自らがキャスターを務めた報道番組でソ連のミサイル基地を取材したときのことを紹介し、
「戦後の日本は、朝鮮戦争を始めとしてアメリカの戦争に一貫して加担してきました。その上で、ソ連のミサイルが沖縄を狙っていたことを踏まえると、私は誰もが金科玉条の如く捉えている日米同盟を破棄しなければならないと思っています。日米同盟を結んでいる限り日本の危機は常に存在します。だからこそ集団的自衛権という話が出てくるのです。日米同盟が存在することが本当に良いことなのかを考えるべきです」と訴えた。
さらに鳥越氏は、安倍政権が過去の自民党政権と決定的に違う点は、教育とメディアの両方に手を突っ込んでいる点だと指摘し、
「戦争を可能にする1番の条件は、クラウセヴィッツが著書『戦争論』で指摘したように『国民の感情』があります。国民の感情をコントロールできなければ戦争は出来ないのです。安倍政権はその点をよく分かっていて、歴代自民党政権が触れてこなかった教育委員会制度を改正して首長・教育長のライン下に教育を支配しようとしています。また、安倍さんほどメディアの動きに敏感で、新聞社やテレビ局の社長と毎夜毎夜会食している首相はいません。これは安倍政権に対する報道姿勢に多少なりとも影響を与えている可能性があります。こうした出来事の背後に集団的自衛権の問題が存在しているのです」と安倍政権の動きに警告を鳴らした。(坂本正義)
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