2014年05月31日12時11分掲載  無料記事
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欧州

日本のメディアが見落としているフランスで右翼政党が台頭する理由2 左翼と右翼のねじれ

今欧州の政治が面白い。というのはすべての政治にとって面白いのは政治システムが崩壊する時期だからである。それは民主主義の危機であることもあれば、その逆のこともある。いずれにしてもフランスで起きていることは日本で政治に関わる人々にとって参照できるものがあるように思われる。 
 
  前回の記事で、急成長を遂げる右翼政党・国民戦線が伸びる理由を書いたが、書きそびれていることがある。それは左翼政党と右翼政党のねじれが起きていることである。そのねじれは今のフランソワ・オランド社会党政権にも起きているのだが、その前のサルコジ大統領の時代から起きていた。そのねじれが国民戦線に対するフランス国民の見方を変える1つのきっかけになったのではないか、と思われるのだ。 
 
  それは左翼政権が極めて好戦的になっていることである。オランド大統領が当選した理由は失業対策に対する国民の期待からであり、景気回復への期待だったはずだが、失業対策ではまったくと言っていいほど改善できていない。その一方で当初からフランス軍の海外派兵に積極的だった。マリに派兵したばかりでなく、アフガニスタンなどの中東にも増派しようと試みた。 
 
  さらに国民運動連合(UMP)のサルコジ大統領の時代に遡るとリビアのカダフィ政権つぶしにサルコジ大統領は国連決議の範疇を越えて前のめりに加担した。つまり目下の社会党政権であれ、前のサルコジ政権であれフランスは簡単に戦争に参加している。 
 
  そんな中、国民戦線のジャン=マリー・ルペン先代党首とマリーヌ・ルペン党首はサルコジ大統領のリビア侵攻を批判し、サルコジ大統領を「人殺し」と口を極めて非難していた。カダフィ大佐の赤ちゃんまでフランス軍の空爆で殺したときのことである。国民戦線はリビア軍事介入に対して反対の論陣を張っていたのである。その理由はサルコジ政権が支援しているリビア反体制派の中にイスラム原理主義の匂いを嗅ぎとっていたからにほかならない。」国民戦線は当時から「アラブの春」の虚妄性を訴えていた。「アラブの春」を指導しているのはカタールなど、イスラム原理主義勢力だという認識からである。イスラム原理主義勢力にとってカダフィ大佐やシリアのアサド大統領ら世俗派の指導者たちはその弾圧者である。だから、お人好しにも「アラブの春」をフランスが支援したら、いずれ独裁政権から解放されたイスラム原理主義が地中海全域に広がり、フランスにも遡上してくると考え警鐘を鳴らしているのである。 
 
  その理由はともあれ、右翼=好戦的、左翼=反戦平和という一見常識がここではまったく反転しているかに見えたのである。実を言えばマリーヌ・ルペンはオランド大統領のマリ軍事介入には賛成しているし、なにがなんでも戦争に反対しているわけではない。ただし、これもマリの情勢悪化の原因をサルコジ大統領のリビア軍事介入にあるとしており、(実際にその通りなのだが)、論理的に一貫しているのである。サルコジ政権時代のリビア軍事介入に疑問を持つフランス人は少なくなく、その時、真っ向からサルコジ大統領に対して国民戦線が批判をつきつけていたことは「あれ?国民戦線って、極右政党と呼ばれていたけど、二大政党より健全な政党なんじゃないか」という思いをフランス人にかきたてたのではなかろうか。この頃、国民戦線は爆弾にNOをつきつける反戦ポスターを作っていた。そして、それを訴えるのが女性リーダーだったのである。 
 
  先代のジャン=マリー・ルペン党首から三女のマリーヌに党首が変わったのが2011年であり、「アラブの春」が世界を揺さぶったのがまさにこの年だった。その年、カダフィ大佐も殺されている。その後、アフリカや中東で起きていることは大量の避難民が出て、それらの人々が生きる場所を求めて欧州に渡ろうとしていることだ。昨年だけでも30万人が渡航を試みたとされている。民主化を口にするのは簡単だが、その帰結は悲惨である。そして、欧州自身がその反作用を受けて、国境を閉ざそうとし始めている。 
 
  ちなみに昨年秋の段階で、フランスの新聞の世論調査によると、マリーヌ・ルペンが大統領になってもいいと言う声が約30%に及んでいた。これは国民戦線を今や含めてフランス三大政党で割り算すると、堂々と大統領選候補者の一角を占める数字である。そしてこれからフランス経済がますます悪化すればその結果、マリーヌ・ルペンの勝機は増えるだろう。マリーヌ・ルペンおよび国民戦線の課題は経済政策ができるのか、ということにある。一旦、政権を握ったら、今までのような昇龍にはいくまいが、それでも大統領の座を得て政権党になるまではその正体は見えないままなのである。 
 
 
■FNの大統領候補、マリーヌ・ルペン氏がリビアに軍事介入したサルコジ大統領を非難 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201110272048224 
 
■カタールがマリ北部のイスラム原理主義勢力を支援?フランスメディアが疑惑を報じる マリーヌ・ルペンFN党首もカタールを非難 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201301201223110 


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