2014年06月15日09時16分掲載  無料記事
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コラム

「第三次世界大戦が勃発しているのに世界の人々は・・・・」

  海外の知人からこんなメールを今朝いただいた。 
 
  「今、ほとんど第三次世界大戦が勃発しているのに世界の人々はサッカーのワールドカップに夢中になって気がついていない」 
 
  第三次世界大戦、なぜ今?その人はこうつづっている。パキスタンのカラチの空港が炎上したのを覚えているかね? 
 
  イラクではアルカイダよりももっと原理主義的と言われる武装組織ISISが首都バグダッドに猛烈な勢いで迫っている。一方、イランがイラクに兵を進める用意をしていという。スンニ派の原理主義武装組織からイラクのシーア派政権を守るためだ。イラクではシーア派が約6割を占めている。さらに2週間前にはアルジェリア軍がスンニ派の原理主義組織アキム(AQIM)を討伐するためリビアに兵を進めたという。 
 
  イスラム原理主義武装勢力の攻撃と、それに対する反撃が世界各地でどっと高まっているのである。各地の地震観測計が波動をとらえるかのように、このところどっと情報がラッシュとなっている。アラブの春の第二章が始まったかのようだ。それはアラブ以外の地域にも「春」がもたらされつつあることだ。アラブの春で国家が崩壊した地域(リビア、エジプト、シリアなど)を基盤に、中東や北アフリカを越えて、中央アジアにも春が広がろうとしている。まずはインドと中国という二つの大国である。これは欧米の反イスラムのプロパガンダ情報と見る人もいるようだが、実際にはどうか。今後、情報の真偽に関心が集まるだろう。まだ不明な点が多い。一方、欧州ではアラブの春の結果を見て右翼政党が台頭している。 
 
  英紙ガーディアンはイランがイスラム原理主義組織ISISを討伐すべくイラクに派兵したことを発信したばかりだ。さらにイスラム原理主義組織アルカイダがカシミールのイスラム教徒にインドを攻めろとたきつけているとも伝えた。このことはウイグル問題を抱える中国も無縁ではないだろう。ユーラシア大陸の中央部でイスラム原理主義勢力とそうではない国々との戦争が醸成されている気配がある。ロシア、中国、インドの三大国の今後の動きが注目される。中央アジアはブレジンスキーが21世紀の世界の中心になるエリアだと論じていた。 
 
  イスラム原理主義の教えでは異教徒と戦って戦死した兵士は天国でこのうえない素晴らしいもてなしを受けることができる。それはこの世の楽しみの比ではないということのようだ。戦争と差別と貧困のこの世界にいるより、生死の境を越えようと考える若者が次々と生まれ、銃と爆薬を手にしている。彼らはアメリカが掲げる勝者総取りの新自由主義経済を否定する。欧州で差別を受けているイスラム教徒の若者たちの中には戦いに参加するため、中東を目指す人もいる。そして、その結果フランスでは右翼政党が台頭してきた。日本でも格差社会に恨みを持って刃物を手にする若者が生まれている。宗教こそ異なるが、心情は近いのではなかろうか。腐敗した社会に報いるために、自爆も辞せず。こう考える若者が増えつつある。彼らに銃と弾薬を授ける勢力がある。 
 
  イスラム原理主義の台頭。この潮流の大きな原因を作ったのはアフガニスタンの戦いであり、湾岸戦争であり、イラク戦争である。仕掛けたのは米国だ。その根っこにあったものはベトナム戦争での敗戦である。ベトナム敗戦の痛手を克服すべく、1979年、米国は第二次大戦後の第二章を始めた。この時、米国はアフガニスタンを第二のベトナムと化してソ連を同じ目にあわせたいと考えた。そこでアルカイダの首領となったビン・ラディンが率いるイスラム原理主義組織のソ連に対する聖戦にテコ入れし、ソ連のヘリを打ち落とせる兵器などを密かに大量に送り込んでいた。 
 
  この頃、イランでもホメイニ革命が起き、世界史においては戦争の現場がアジアから中東へと移った。日本政府は米国がスンニ派のイスラム原理主義武装勢力と手を組んでいた時も、一転して今度は戦い始めた時も米国に同調し続けてきた。イラク戦争では米国の侵略戦争に賛成した道義的責任がある。今では嘘のようだが、米国ではサダム・フセインがアルカイダと連携して2001年の9・11同時多発テロを行ったという情報が流れていた。サダム・フセインが駆逐された時点で、多くの米国民がそう信じていた。実際にはサダム・フセインはまったく逆で、イスラム原理主義勢力の対抗勢力だった。しかし、その情報は後で世に出てきた。サダム・フセインが駆逐されたのちである。時はすでに遅かった。 
 
  2003年にサダム・フセイン政権が討伐されたのち、今度は権力が空白となったイラクにイスラム原理主義組織が攻め込んでいる。さらにアラブの春の帰結である。これを見るだけでも、米国がその時その時の利害で視野の狭い中東政策を行ってきたことがわかる。しかし、日本政府がしてきたことは米国の政策を、それがなんであれ追認することだった。日本のメディアも基本的にはこの米政権の流れに沿って世界の事件を報じている。筆者は朝日新聞がカダフィやムバラクなどの顔写真を並べて、アラブの独裁者が退場する時が来た、と大々的に報じたのを記憶している。 
 
  ワールドカップの最中、日本では集団的自衛権の論議が国会で峠を越えようとしている。自民党と連立を組んでいる公明党が限定容認論を出すに至ったからだ。今世界には紛争の現場が有り余っている。「限定」がどのような意味であれ解釈改憲が通った後、日本政府の集団的自衛権の方針を決めるのはホワイトハウスだろう。 
 
 
■ガーディアン「’インドで聖戦を起こせ’、とアルカイダがビデオでカシミールの人々を促す」 
Al-Qaida video urges Muslims in Kashmir to wage jihad on India 
http://www.theguardian.com/world/2014/jun/14/al-qaida-video-muslims-kashmir-jihad-india 
 
■The Times of India'Caravan of jihadists coming from Afghanistan to liberate Kashmir: Al-Qaida' 
http://timesofindia.indiatimes.com/india/Caravan-of-jihadists-coming-from-Afghanistan-to-liberate-Kashmir-Al-Qaida/articleshow/36563717.cms 
 シリアやイラクで同朋が戦っているのを見習って、インドでも聖戦を始めよ、とアルカイダが檄を飛ばしているという記事。 
 
■英紙ガーディアン'Iran sends troops into Iraq to aid fight against Isis militants'(イランがISISと戦うためにイラクに派兵) 
http://www.theguardian.com/world/2014/jun/14/iran-iraq-isis-fight-militants-nouri-maliki 
■NHK「シーア派が政府軍参加 宗派間対立再燃も」イラク 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140614/k10015225311000.html 
  サダム・フセイン時代は少数派のスンニ派がイラクを統治していた。フセイン政権が倒れた後はシーア派が政権を握っている。しかし、ISISはスンニ派の原理主義武装組織であり、ISISがバグダッドを陥落させればスンニ派が再び実権を握ることになる。サウジアラビアやカタールもスンニ派である。 
 
■毎日「ウルムチ爆発:ETIMが関与か」 
http://mainichi.jp/select/news/20140524k0000m030091000c.html 
  ETIMは東トルキスタン(ウイグル)イスラム運動のことである。米国や国連はこの組織をアルカイダと関連しているとしているが、不明な点が多いとも言われている。 
 
  「中国当局がETIMと同一組織とみなしている「トルキスタン・イスラム党」のリーダーで、パキスタン北西部の山中に潜伏中とみられるアブドラ・マンスール氏は今年3月、ロイター通信の電話インタビューに対し、「中国は我々(ウイグル族)だけの敵ではなく、すべてのイスラム教徒の敵だ。中国に対する多くの攻撃を計画している」と宣言。さらに、「東トルキスタンの市民やイスラム教徒たちは目覚めたのだ。(中国政府は)これ以上抑圧できない」と語った。マンスール氏は昨年10月に北京・天安門前で車両が突入炎上した事件後に動画を公開。事件を「ジハード(聖戦)作戦」と称していた。」(毎日) 
 
  中国当局はパキスタンとアフガニスタンの国境付近に彼らの訓練施設があると見ているようだ。 
 
■パキスタン・ディフェンス「LIBYA The Algerian army intervened in western Libya」(アルジェリア軍がリビアに派兵) 
http://defence.pk/threads/algeria-sent-troops-to-lybia.317897/ 
 
■ロイター’Algeria evacuates diplomats from Libya after threats’ 
http://www.reuters.com/article/2014/05/16/us-algeria-libya-idUSBREA4F0J420140516 


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