2014年06月27日14時18分掲載
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TPP/脱グローバリゼーション
【ほんまやばいでTPPその5】 「国益」論を超えて −排外主義とTPP反対運動− 大野和興
先ほど国益論、国家主義の話をしました。都知事選に出た田母神俊雄元自衛隊幕僚長は核武装論で自衛隊をクビになった人ですが、彼もTPPに反対している。ユーチューブで流れたのですが、国会の前で田母神がTPP反対の演説をしている。その周りをわーっと日の丸が囲んでいる。ヘイトスピーチや朝鮮学校襲撃で悪名高い「在特会」がかなり早くからTPP反対を打ち出していました。ヘイトスピーチとTPP反対が同居しているのです。彼らの主張は「TPPは国家を壊す」というものです。「TPPで日本の国家が危ない」という論理です。「人々の生存権」とは言わない。同じTPP反内ならいいだろうというのではなく、こういうところはきちんと腑分けして考えていかなければけないと思っています。
いま、社会運動の中にいわゆる民族派を自称する右翼が入り込んできています。TPPでは一水会も熱心です。脱原発では統一義勇軍が目立ちます。ここのホームページを見ますと「従軍慰安婦なんてなかった」と書いてある。それが、金曜日の国会前の脱原発に毎回出てきている。そして、それを脱原発運動は認めている。いずれにしても、日本の社会運動の状況が、実はだんだんだんだんそういう風になってきている。安倍が作り出した全体的な右傾化構造と呼応しながら、社会だけでなくって運動の中に入り込んできている。TPPも例外ではないということです。そうした動きに対抗するには、国家ではなく人権、生存権、平和です。そこのところをきちんと踏まえない運動はありえないと考えます。
◆ISD条項によだれを流す日本資本
TPPの交渉項目のんかにISD条項というのがあります。ご存知の方も多いと思いますが、例えばある国の資本、企業が日本に進出した。日本の環境基準に違反して廃水を流したり、廃棄物を流して、そして問題を起こした。そして日本の法律にそって国や自治体が操業停止をさせたり、罰金を課したりした。そうするとその企業は損をします。そうしたらその企業は投資の見返りとして得られるはずの儲けが得られなかったということで、日本国家に損害賠償を請求できるという制度です。これは実は北米自由貿易協定の頃から自由貿易協定には入っている条項です。日本とアジアとの間の自由貿易協定の中にも入っています。企業が国家を訴える権利と呼ばれています。
この条項をとらえて、日本のTPP反対運動の大きな部分は、「大変だ、大変だ。アメリカに訴えられる」と大騒ぎしました。被害者という視点しかないわけです。しかし私は「日本は加害の側だろう」といってました。世界第三位の経済強国で、世界中に経済進出している日本が、「ISDでやられる」という論理は成り立たない。 TPPとは関係ありませんが、日本資本が加害の側に立った典型的な事例としてフィリッピントヨタとマレーシアの三菱化成の問題があります。トヨタがフィリッピンに進出して子会社を作った。フィリッピンの労働者はしぶといですから、労働組合を作った。首を切った。争議が起こった。そしたら、資本家は、当時のアキノ大統領に引き上げるぞとという脅しをかけた。争議は今も続いてます。TPPでISD条項があったら、トヨタにとってこんなありがたいことないです。労働組合を作ったことで、こんなに損害が出たとフィリッピン政府を訴えればいいのですから。
もうだいぶ前んことですが、マレーシアで三菱化成が、放射性廃棄物を捨てたということがあります。これは有名な話しですけれども、北米自由貿易協定で、アメリカの廃棄物会社がメキシコに進出、向こうの基準の違反して廃棄物を放出するという事件がありました。それで地元自治体が操業停止にした。その企業がいま述べたISD条項を使ってメキシコ政府を訴え、賠償金をたんまり得た。
日本企業にとっては、こんなにおいしい話はない。だから、TPPを経済界がTPPを推進している大きな理由もそこにあるのではないかと考えられるほどです。
TPPを国益論でとらえると、そうした現実を見逃してしまいます。そうじゃなくして、フィリッピンの労働者、タイの村の人たちとどう手を組むかというところで運動をしないと、TPPの全体の中に踏み込めない。国益論は運動にならない。むしろ運動を阻害するという風に言っていいだろうと思っています。
◆満州移民の再現か
海外進出を農業の側面から見ていくと、さんざまな動きがここにもあります。先ほど見ましたように国内では農地を資本に明け渡す仕掛けをどんどん作っていく。その先には世界の土地があります。大規模化をして、「TPPに負けない強い農業を作る」なんて言っている若手農業経営者の中には、アジアに出ていくことがちょっとした流行になっています。。
長野に30代を中心にコメをつくる若手農業者のグループがあります。彼らの目標は、日本の国内で1000ヘクタール、インドネシアで1万ヘクタールの規模の稲作をやることです。日本の1000ヘクタールは国の政策にのって、耕作放棄地があったりしてそれは可能であるかもしれないけれども、インドネシアで1万ヘクタールというのは問題です。ジャワ島でやるというのですが、ジャワ島というのはちいさな農家がひしめきながら生きているところで、余った土地などない。そこで日本の農業者が1万ヘクタールやるということは、地元の小さな農家を彼らの土地から引き剥がすことです。いま、日本の農民の一部ではそういうことを平気でやっている人が増えている。その意味では、農民だから正しいとか正しくないとかはない。
これは昔の満洲移民です。日本の農民が昭和恐慌の中で、みんな貧困に陥って娘を身売りに出し、土地を求めて、国策に乗って満州に渡った。いまの中国東北部です。行った人たちは希望に燃えて行ったのですが、彼らが行った先には中国の農民がいて、そして彼らを蹴散らして自分たちの農地にしていった。だから敗戦で恨みを買うのは当然の話です。同じことをいまやろうとしている。
もっと大規模やっているのがアフリカのモザンビークです。1400万ヘクタールの農地を開発し、日本向けの農産物をつくる動きがあります。日本の農地が全体で400万ヘクタールですから3倍以上です。それを今、日本のJICA(国際協力機構)が日本のODA開発資金を使ってやっている。その土地にはアフリカの小さな農民がいて、農業で暮らしています。そのモデルはブラジルにある。ということでブラジル政府もかんでいる。ブラジルではセラード開発でJICAが大豆を作って成功したんですね。だけど成功したといっても、そこにも先住の農民がいた。それを排除して成功して、その大豆を世界市場に出している。それをモザンビークでやる。モザンビーク開発にはエネルギーや農業開発で三井物産、三菱商事、伊藤忠、三井住友銀行など大手企業がかんでいます。安倍首相は、今年、アメリカに行くときにモザンビークに寄って、1400万ヘクタールで作る農作物を運ぶ道路と港湾も日本が金を出しますと約束しています。
いま世界的に農民の土地強奪が進んでいる。このままいくと、その一翼に日本の農民の一部もその中に組み込まれていく。それなのに、日本の農民も農業も、TPPなったら大変なことになるのは間違いないのですが、その一方で「お前ら、加害者だろう。そこのところを忘れるなといわざるを得ない動きも一部農民の間では出ている。そういう風な足の地に付け方で運動をやっていかなきゃあいけないいう風にぼくは思っています。加害と被害も紙一重です。特に、日本というのは経済大国で資本進出を盛んにしています。日本資本のそういう動き方に添って動く一部の農民が出ているのです。
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