2014年08月20日10時40分掲載
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アフリカ
アフリカを旅して ジンバブエのハラレから
最近、アフリカ南部にあるジンバブエの首都ハラレを訪ねた。ジンバブエで2006年に起きたハイパーインフレーションとその後を検証するためだった。旅の中でハラレに住むごくごく一般庶民の住まいが見たい、と案内人にお願いしたところ、ハラレ郊外の団地に案内された。
その団地はかつて英国領だった時代に建てられたもので、今は黒人家族が入居して暮らしていた。驚いたのはその内部の暗さである。真昼なのに、一歩中に足を踏み込むと、夜のように暗い。1つの部屋に家族が3つ、4つ布で部屋を区切ってシェアして暮らしていた。そうすることで家賃も、光熱費もシェアできるからだ。
取材したのはある姉妹だったのだが、その姉妹は二人とも失業中だった。姉は一度結婚したものの、子どもができなかったからか、離婚して今は妹と同居中。たった1つのベッドを妹とシェアしていた。ベッドの他にはオーディオが1つ。それだけだ。足の踏み場はほとんどなく、小さな窓から隣の公園が見張らせた。やることがなければ姉妹は1日中、このベッドでごろごろしているのだろうか。姉も妹も20代半ばだったが、生まれて一度も働いたことがないという。
ジンバブエのムガベ政権を攻撃する英国や米国は常日頃からムガベ政権の独裁ぶりを批判する報道を行ってきた。CIAはジンバブエの失業率を90%超としていた。無理のある数字だと思うが、失業率が高いことには変わりはない。だから多くの市民が隣国の南アフリカ共和国などへ出稼ぎに行く。
ハラレの郊外ではあちこちに路上の市が出来ていて、Tシャツ、靴下、石鹸、車の部品、音響機器、食材・・・なんでも売っていた。売ってドルが稼げるものなら、何でも売ろうと言うのだ。あの姉妹もいつかは商売がしたいと言っていた。商売に必要な資本はいくらですか?と聞いたら、20ドルあれば何か手に入れられる、という。20ドルあれば一応仕事を得ることができるのだ。しかし、20ドルあっても、商才がなくては継続は難しいかもしれない。なぜなら、夥しい市民がモノを売っているからだ。物売りを失業者とカウントするかどうかでも統計はかなり変わってくるだろうが、潜在失業者も少なくないだろう。
アフリカと言えば貧乏、クーデター、殺人、文盲・・・昔から遅れた国、残酷な国のイメージがてんこ盛りだ。それに加え、最近はボコハラムなどのイスラム原理主義運動が加わり、一層恐ろしい暗黒の大地に見えかねない。しかし、そんな中、ハラレに建てられてたのがチャイナタウンだった。巨大な中華街の門とその奥に広がる敷地、いったい何ができるのかわからないが中国人が入居するのだろう。だから、ハラレの人々は僕らアジア人を見ると、まず「中国人ですか?」と尋ねてくる。そして僕ら取材班もアジア食が懐かしくなったら、中華レストランに出かけることになる。運転手は初め食べたエビにすっかり魅せられていた。
日本の新聞で、中国人が近年資源欲しさにアフリカ詣でなどと書かれた記事をよく目にするが、ことジンバブエに関する限り、ムガベ大統領が1970年代にまだモザンビークに潜伏して白人政権〜ローデシア政権〜と武装闘争をしていた頃から、中国はアフリカの民族解放の戦いの為に金や兵器を支援していたのだ。資源欲しさに慌ててラッシュをかけているのは安倍政権の方である。
先ほどの姉妹は親と兄弟姉妹から食わせてもらっていて、部屋は親の名義で同居の2家族から家賃をとっている。大家族の中で食えない家族を食える家族が助けている。そうでもしなければ生きていくのは難しい。兄弟姉妹と言っても一家族に7人とか9人とか大量にいることも少なくない。この姉妹は外国に行って働きたい、と言った。僕はムガベ政権を英米のように非難するつもりはないが、失業率の高さは困ったものだ。それでも英国の植民地であったために、首都のビルディングも都市計画も堅固にできている。事情が好転すれば発展が見込める都市だと感じた。
ちなみにジンバブエの取材で同行していただいたアフリカ在住のコーディネーターからある注意を受けた。僕が日本からちょっとした記念品を携えていたことに対してだ。
「ここじゃ記念品なんかいらない。金がすべてなのよ」
300円の記念品を日本で買う金があるのなら、3ドル渡してあげた方がよほど相手の為になるというのだ。
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