2014年09月10日21時53分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発】「電力逼迫」危機をあおる業界紙(電気新聞) 山崎久隆
電気新聞は7月24日の記事で関西電力の「電力不足」を「警告」していますが、仮にも「電気」と銘打った業界新聞で、これほど低レベルな記事を書いているのは、とんでもないことだと思います。
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『[広がる電力危機・緊張の夏](1)中西地域、需給綱渡り 電気新聞
夏本番を迎え電力安定供給維持への取り組みも緊張感が増す』より
『まだ梅雨明け前の先週17日、関西電力エリアの電力使用率が95%に達した。今夏一番の暑さで冷房需要が高伸し、想定の90%を上回った。当日は火力発電所のフル稼働体制を敷いていなかったが、原子力ゼロの厳しい夏を予感させた。関電の八木誠社長は翌日の会見で「(今夏の)実質的な供給余力はゼロに等
しい」と、需給逼迫に警戒感を示した。
「異常事態だ」。総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)需給検証小委員会(委員長=柏木孝夫・東京工業大学特命教授)の委員は中西日本の供給予備率をこう評した。東京〜中部間の周波数変換装置(FC、計120万kw)を使って東京電力から融通を受けなければ最低限必要な3%に届かないからだ。』(以下略)
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○7月17日の関電の設備は2568万kw、一方電力使用は2465万kwで、その比率が95.99%と高率だったのは事実です。しかし関電は需要予測を90%程度と読み違い用意した発電設備が少なすぎただけです。実際に電力使用は翌周の25日に2681万kwと、この夏最大を記録していますが、この時の設備は2822万kwで、率は95.00%と逼迫にはほど遠いレベルだったのです。
前後を見ると、もっと顕著に関電の見込み違いが利用率の上昇になったことが分かります。前日の16日は2668万kwの設備に対して、最大電力は2383万kwです。比率は89.32%、最高気温は33.7度です。翌日は最高気温33.9度と、わずか0.2度しか違いません。ところが関電は100万kwも供給量を減らしました。理由はよく分かりません。これが利用率を95.99%に引き上げた原因です。分母を小さくすれば分子が変わらなくても比率は高くなるのは当たり前。
○18日には関電は供給力を2688万kwに戻します。ところが気温は32.7度と逆に1.2度下がったので、ピークは2382万kwと80万kw近く減少し、88.62%に利用率は急降下しました。
記事を載せた24日には、このような数字の並びだったことは分かっているのですから、関電の「読みの甘さ」を批判するのならばわかりますが、電力設備不足の証明とばかりに記事にするのでは、別の意図を感じざるを得ません。単なる関電の予測ミスを針小棒大に「需給逼迫に警戒感」などと書く内容ではないのです。
○東西連系を含む広域連系という十分対策があるにもかかわらず、「原発が止まって需要を満たせない」と言わんばかりに危機を煽り、原発再稼動への口実作りに躍起になることが問題です。東西連系120万kwとは、関電の設備の4%にも相当します。一方東電の設備に対しては2.4%に過ぎません。関電が99%になっても東電から120万kw送れば95%に下がり、一方その時東電が90%になっていても92.4%まで上昇するだけです。
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