2014年09月16日01時53分掲載
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中東
アサド政権、自由シリア軍、ISIS・・・ 米軍、豪軍、英軍?・・・ ペイリン氏・・・
月曜のニューヨークタイムズ社説' A risky bet on Syrian rebels'(シリア反政府軍へのリスクのある賭け)を読んでも、寄稿'To stop ISIS in Syria,support Aleppo'(イスラム国を阻止するためにアレッポ(の反政府勢力)を支援せよ)を読んでも米国の前に霧が濃く立ち込めている印象だ。暗澹でかつ陰惨である。これを絵に描けるのはゴヤだけだ。
アサド政権とイスラム国と反政府軍とイラク政府軍がこの地域のプレイヤーとして存在している。アサド政権にとってはイスラム国も敵だが、同時に反政府勢力も敵であり、シリア北部のアレッポで戦っている反政府勢力はイスラム国ともアサド政権軍とも戦っている。そこで寄稿者はアレッポの反政府勢力をサポートせよ、と訴えている。しかし、社説を書いた論説委員は反政府勢力の最大の目標はイスラム国との闘争ではなく、アサド政権を倒することにある、と指摘している。
つまり、アレッポの反政府勢力は場合によってはイスラム国と領土を分け合う形になるかもしれない・・・記事を読むと、そう読める。どちらもスンニ派なのである。だからアレッポの反政府勢力に武器を送ってもイスラム国ではなく、むしろシーア派(の一種であるアラウィ派)のアサド政権打倒に力を注ぐかもしれない・・・。そこに米国の疑心があるらしい。それぞれの目指すゴールが全く違っているのだ。過去においても、反政府勢力への武器支援が結果的にイスラム原理主義勢力に強力な兵器をもたらした結果にもなった。
とはいえ、ここにはアサド政権を支援せよ、という論は少なくともこの日はなかった。ただ、'To stop ISIS in Syria,support Aleppo'(イスラム国を阻止するためにアレッポ(の反政府勢力)を支援せよ)を寄稿した二人の論者はアレッポで戦っている反政府勢力と政府軍を一時停戦させ、それぞれがイスラム国を当面の敵とするようにならないか、と構想している。アサド政権をこのように動かすためにはアサド政権を支援しているロシアとイランにプレッシャーをかけさせないとダメだと述べている。ポーランド出身の作家スワヴォーミル・ムロージェクの風刺短編小説を読んでいるかの印象だ。その時その時の短期的な都合でしか、物事を考えていない印象を受ける。
米メディアではアラスカのペイリン元知事が2008年にオバマでなく、ジョン・マケイン(と副大統領にペイリン氏)を選んでいたらこんなことにはならなかったと気炎を上げている。だが、そもそも2003年にイラク戦争を始めたのは共和党政権である。これがイスラム国を生んだ元凶なのである。
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