2014年10月24日15時02分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201410241502525
北朝鮮
“北朝鮮”訪問で考えさせられたこと(3) 板門店に佇(たたず)んで 池住義憲
板門店(パンムンジョム)を訪問しました。平壌の南東約 215km、ソウルの北約80km の地点です。1953年7月27日、朝鮮戦争(1950年6月25日〜現在)休戦ラインとして、ほぼ38度線に沿う東西 248km にわたって民族を分断している軍事境界線(MDL)上にある地区です。
■ 板門店に佇(たたず)んで
軍事境界線の南北それぞれ2kmは、非武装中立地帯(DMZ)として設定。北側の朝鮮人民軍と、南側の「国連軍」(実際は米軍の強い影響下にある韓国軍)による共同警備区域(JSA)となっています。
板門店内には、休戦協定に基づいて1953年10月に設置された「中立国停戦監視委員会」(現在はスイスとスウェーデン2ヵ国により構成)と「軍事停戦委員会」の本会議場があります。軍事境界線の上に建てられている唯一の建物です。
「軍事停戦委員会」本会議場に、入りました。中央のテーブルの真ん中には、マイクとマイクケーブルが配置・配線されています。この”ライン”が、丁度38度線の真上、とのこと。この会議場の中に限っては、”ライン”を南北に行き来することができます。
私は、板門店に佇(たたず)んで、奇妙な感覚に襲われました。不条理、不自然さ、人間の愚かさ、とでも言おうか・・・。空気は風に乗って”ライン”上空を自由に、自然に、南北・東西を行き来している。草木は”ライン”に関係なく、大地に根を張り、生息している。鳥も、自由に行き来している。でも、人間だけは・・・。
朝鮮戦争の休戦協定は、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と規定しています。当初は、休戦協定後、3カ月ほどで平和条約を締結する予定でした。しかし、61年経った今も、「最終的な平和解決」(平和条約)は、いまだ実現していない。
■ 南北分断をもたらした経緯と責任
そもそも、朝鮮半島の南北分断、民族分断のきっかけを作ったのは、どの国か。簡略に歴史事実を振り返ってみます。
朝鮮半島の日本植民地支配・統治は、1910年8月の韓国併合から始まります。第二次世界大戦(1939〜45年)で、朝鮮半島の北緯38度線以北を、当時中国北東部に駐留していた関東軍(かんとんぐん)が防衛を担います。北緯38度線以南は、当時朝鮮半島南部に駐留していた日本軍が防衛を担います。38度線は、日本軍による「防衛分担線」としてスタートしました。
1945年8月、日本の無条件降伏後、米ソは、先のヤルタ会談(1945年2月)での極東密約どおり、朝鮮半島に独立を与えるまでの間、38度線以北をソ連、以南を米国が信託統治することになります。日本軍の防衛分担線が、米ソによる「分割占領線」へと替わっていきます。
その後、大韓民国独立(1948年8月)、朝鮮民主主義人民共和国建国(1948年9月)、朝鮮戦争(1950年6月〜)と続き、1953年7月、米国が中心となった国連軍、中国、共和国の三者で休戦協定が締結されます。この休戦協定で、北緯38度線とやや斜めに交わる休戦ラインを設定します。これが「軍事境界線」で、民族分断、南北分断の”国境線”となって今日に至っています。
こうして見ると、米ソによる東西冷戦構造など種々な要因があったものの、日本による朝鮮半島の植民地支配・統治、軍事侵略が、民族分断・南北分断を作り出す大きな要因であったことは、紛れもない事実です。そうした歴史認識と責任意識が、今、私たちに必要であり、求められていると思いました。
■ おわりに
今回の共和国訪問は、私にとって重い旅でした。世代は替わっても、過去の歴史事実への責任を負うべきであることを、あらためて痛感させられた旅でした。
日本の政府/マスコミから得られる情報は、「一面」からのものです。中立な報道は、ありません。事実はひとつでも、加害者側と被害者側での伝え方は異なります。であるがゆえに、であるからこそ、私たちは一方からの報道で得られるものに限定せず、もう一方の側からの報道も含め、複眼的に、客観的且つ冷静に読み解き、理解していこうという姿勢が必要です。
政治的思惑、自己主張、自己正当化、さらには自己絶対化の姿勢を続け強める限りは、問題解決を遠ざけます。それの行きつくところは軍事力行使すなわち戦争であることは歴史が示しています。
私たちがよって立つ視点は、「人道」。民族、国籍、社会体制、文化が異なっていても、それぞれの違いを尊重し合い、認め合い、受け入れ合うこと。そこから問題解決へ向けての「対話」が始まります。可能性は、ある。私は、希望を持つ。
(完)
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。