2014年11月18日23時09分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201411182309112
安倍政権を検証する
安倍首相 「税は議会制民主主義の基礎である」
安倍首相は今夜のNHKの9時のニュース「ニュースウォッチ9」に生中継で出演し、衆院解散の理由について説明した。その中で最も耳についたのは「税は議会制民主主義の基礎である」という言葉だった。
安倍首相は消費税率10%への引き上げを1年半後に先送りすることを決め、国民に真意を問うとしているが、多くの国民にとって増税先送りに異論はない。ただ、この放送の中で強調していたのは1年半後にどのような経済情勢であっても必ず10%に引き上げるということであり、だからその真意を今問う、としていることである。国民にとっては今問わなくとも、来年問えば・・・と突っ込みを入れたくなるところである。「1年半後に必ず」という条件を加えなければ解散する理由付けがまったくなくなってしまう。
だが、それにしても「税は議会制民主主義の基礎である」とわざわざ「議会制民主主義」という言葉を安倍首相は持ち出した。それを言うなら、昨年の今頃、特定秘密保護法について十分な審議をせず、強行採決したことや、憲法という国の根幹にかかわることを閣議で解釈改憲として独断で変えてしまうなど、国会を軽視し、議会制民主主義をこれくらいないがしろにしている首相もいない。むしろ、このような言葉を使うことで議会制民主主義と言う言葉を中身のない空疎なものに貶めたとも言えるだろう。
なぜ今解散・衆院選挙なのか、と言えば来年になれば支持率が落ち、選挙でますます苦しくなると計算しているからではなかろうか。もし、安倍首相が言っているようにここがアベノミクスの正念場でこれから日本の経済が上昇するのであれば今、選挙を今行うより来年に行う方が支持が上がるはずである。もしアベノミクスが成功すると思うなら今解散する必要はない。
さらにまた日本経済が来年復調しているのであれば国民の理解も得やすいだろうから消費税率の審議を今する必要もまったくない。その時になればおのずと明白になっている。だから、安倍首相のこの決断はアベノミクスの失政を国民の責任にしようということ以外に考えられない。来年、どんなに不況になっていても増税を決めたのは国民のみなさんだと言えるようにだ。このように安倍首相の言動はつっこみどころ満載である。それなのに、だ。
NHKは貴重なインタビューの中で詰めを1つ1つ行うべきだった。台本を捨てて突っ込みを続けるべきだった。国民は聞きたかったのだ、緊張感のある質疑応答を1つでも。それが権力を監視するジャーナリズムの任務である。そこには右も左もない。もしかすると、ニクソンのインタビューを行ったデービッド・フロストの特別番組のように、歴史に残る素晴らしい番組になったかもしれなかったのだから。だが、国民はむしろ旧ソ連の国営放送を見せられたような気がしたに違いない。二階のバルコニーから書記長らが顔を出してみんなが手を叩いている風景だ。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。