2015年01月26日16時48分掲載
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人権/反差別/司法
狭山事件で、東京高検は証拠リストを開示 根本行雄
2015年1月22日、東京高検は狭山事件の証拠品279点のリストを開示し
た。無期懲役が確定し、平成6年に仮出所した石川一雄さん(76)は無実を訴えて再審を求める申し立てを行っているが、東京高等裁判所で審理が進められており、弁護団は検察に対し、事件当時の捜査で得られた証拠をすべて明らかにするよう求めていたが、東京高検は保管している物的な証拠を記載したリストを開示した。国は証拠リストの開示を法制化せよ。
狭山事件の弁護団によれば、第3次再審請求で、検察側が弁護団に、保管する全ての物的な証拠のリストを開示した。リストに記された証拠は279点あり、このうち44点は石川さんが書いたとみられるはがきなど、これまで存在が明らかにされていなかったものだということである。弁護団は「脅迫状の文字は石川さんの筆跡と違う」と主張しており、はがきで当時の筆跡が確認できれば有利な証拠となる可能性があるとしている。
検察が過去の事件について証拠のリストを開示するのは異例であり、再審を認めるかどうかの判断に大きな影響があることは必至である。今後の推移を注目していきたい。
狭山事件は埼玉県狭山市で1963年に女子高校生が殺害された事件である。だから、事件の発生から52年になろうとしている。それが今頃になって、証拠リストが開示されるとは驚いてしまう。検察は、何を隠しているのか、本当に、わからないのだ。今回の開示にしても、全面開示ではない。東京高検に保管されているもの以外の証拠物が存在する可能性もあるからだ。
周防正行監督の『それでもボクはやっていない』を見た人はきっと記憶していることだろうが、検察がどのような証拠を持っているかを弁護側は知ることができない。そのために、証拠を開示させることが困難を極めているのが実情である。そして、そのために十分な弁護活動ができないために冤罪が起こりやすくなっているのだ。
裁判員裁判が実施されるようになり、裁判の前に争点を整理する手続きが行なわれるようになった。それにともない、検察側と弁護側が平等な条件で協議できるように、弁護側の求めた証拠については原則、開示されることになっている。しかし、弁護士の間には「検察がどのような証拠を持っているのか全体像が分からないので、重要な証拠が請求の対象から漏れるおそれがある」との不満が根強く残っている。こうした状況を受け、2013年(平成23)から刑事司法の在り方を検討してきた法制審議会は2014年9月、被告側が求めた場合、原則として、すべての証拠のリストを開示するよう検察に義務づけることを盛り込んだ法改正の要綱を法務大臣に答申し、今後、法制化される見通しになっているという。
検察に証拠の全面開示をする義務がないことが冤罪の要因になっているばかりでなく、再審を狭き門にしている。
何度でも、言おう。検察には証拠の全面開示を義務付けること。検察には上訴権をなくすこと。これが裁判を公正にするために不可欠のことである。
国は証拠の全面開示を法制化せよ。
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