2015年02月05日14時31分掲載
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アラン・マバンクウ著 「ジミーへの手紙」 〜黒人作家の生〜
コンゴ出身でパリでの生活を経て、現在、カリフォルニア大学で教鞭をとる作家のアラン・マバンクウ(Alain Mabanckou)氏の「ジミーへの手紙」。
これは米黒人作家、ジェームズ・ボールドウィンに宛てた長い手紙を本にしたものだという。とはいえ、ボールドウィンはすでにこの世の人ではない。マバンクウ氏の独自性はアフリカ大陸、欧州大陸、そして米大陸と動きながら、黒人の生を考えているところにある。
ジェームズ・ボールドウィンもアメリカの作家だが、のちにパリに渡って作家活動を行ったことでも知られる。ゲイでもあった。
黒人が越境することはどのような体験なのか、あるいは同性愛者であることはどういう体験なのか、そうしたことを自身も黒人作家であり、越境して生きているマバンクウ氏が長年の作家との心の対話を経て語った本のようだ。
筆者はボールドウィンの文学を読んだことがない。しかし、ボールドウィンとアメリカの女性の文化人類学者、マーガレット・ミードの対談を何かの映像で見たことがある。そこでのボールドウィンは饒舌で、ユーモアを持った人物だった。「黒人でもあり、ゲイでもある・・・僕は三重苦だよ」そんなことをつぶやいていた。
そのユーモアには社会に対する批判とともに自己に対する批判も含んでいるように感じられた。これだけでも、当時の多くのアメリカ人にとっては過激なテーマだったはずである。黒人であることに対しても、ゲイであることに対してもアメリカは強烈な烙印が押される社会だった。そうした国の中で作家として生きることはすべてにおいて新しい挑戦だったはずだ。だからというべきか、ボールドウィンの文学がたとえ忘れ去られようとしていても、彼に影響を受けた黒人作家が大陸を越えて育っている。
■ジェームズ・ボールドウィン(1924- 1987)
「山にのぼりて告げよ」
「ジョバンニの部屋」
「もう一つの国」
「白人へのブルース」
など
■アラン・マバンコウ著 「黒人のすすり泣き」(Le sanglot de l'homme noir)
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