2015年02月05日21時45分掲載
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中東
ヨルダン:軍パイロット殺害への報復的処刑は問題
「イスラム国」を名乗る武装組織は、ヨルダン軍パイロットに生きたまま火をつけた。このおぞましい即決処刑は、人道に著しく反する残虐行為である。しかし、これに対して、死刑執行による報復は、問題の解決策にはならない。(アムネスティ国際ニュース)
ムアズ・カサースベ中尉が檻に入れられ、生きたまま焼かれる姿を撮った動画は、世界中に衝撃を与えた。一方、ヨルダン政府は4日早朝、アルカイダと関係があったイラク人のサジダ・リシャウィ死刑囚とジャド・カルブリ死刑囚に死刑を執行した。2人の処刑は、カサースベ中尉殺害への報復であることは明らかだった。
カサースベ中尉のあまりに忌まわしい殺害は戦争犯罪であり、人間性の基本原則に真正面から対決するものである。
ヨルダン政府が、許しがたいこの殺害に衝撃を受けたことは、全く当然のことだ。しかし、その報復として死刑に訴えることは決してすべきではない。なぜなら死刑それ自体が、究極的に残虐で非人道的な、人間の品位を貶める懲罰だからである。死刑を復讐の手段に利用してはならない。「イスラム国」の陰惨な戦術から報復的処刑へと、血を血で洗う連鎖を許してはならないのである。
国際人道法上、人質をとる行為は戦争犯罪であり、拘束されているすべての人は、人道的な取り扱いを受けなければならない。今回の残忍非情かつ練り上げた殺害方法は、「イスラム国」のような集団が有する残忍性を見せつけた。
ヨルダン政府が今回処刑したサジダ・リシャウィ死刑囚は、アンマンで2005年、60人が犠牲になった爆破事件に関与したとして死刑判決を受けていた。弁護人は同死刑囚の精神鑑定を依頼していたが、裁判所はこれを却下した。
拷問に関する国連特別報告者が2006年のヨルダン訪問後にまとめた報告書によると、リシャウィ死刑囚は、ヨルダン情報機関(GID)の下で拘束され、1カ月以上にわたって拷問を受けた。
処刑されたもう1人ジアド・カルブリ死刑囚は、違法組織への所属、爆発物所持、殺人の罪で有罪判決を受けていた。カルブリ死刑囚の弁護人は、自白は強要されたものだったとアムネスティに語っている。
ヨルダンはこれまで8年間、死刑執行を停止していたが、昨年12月に死刑囚11名に対して執行を再開した。アムネスティはヨルダン政府に対して、死刑廃止を視野に入れ、直ちに刑の執行を正式に停止するよう求めている。
ヨルダン空軍のパイロットであるカサースベ中尉は2014年12月、「イスラム国」への軍事行動中、シリアのラッカ近くに戦闘機が墜落した際に拘束された。
「イスラム国」はこの1年の間に、拘束した何十人を殺害してきた。その中には後藤健二さん、湯川遥菜さんの日本人2名も含まれている。
アムネスティは「イスラム国」に対し、即決処刑、拉致、人質行為をやめるよう求める。
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