2015年03月08日09時56分掲載  無料記事
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検証・メディア

沼津信用金庫が朝日新聞報道を換骨奪胎 「イスラム」口座拒否

  団体名に「イスラム」のある口座の開設を沼津信用金庫が拒否したという、3月1日の朝日新聞朝刊の報道(注)を受け、各紙が一斉に後追い報道をしたが、反響の大きさに危惧を抱いたのか、沼津信金は一転、朝日に話した内容の主要部分を完全に否定している。事件が起きた2月24日の経緯を述べるとともに、他紙の記事やブログなどでの事件へのコメントを紹介する。(。(齊藤力二朗) 
 
注・同紙のディジタル版 
http://www.asahi.com/articles/ASH2V64S9H2VUTPB01Q.html 
 
24日の午前中に斉藤(口座開設申請者)が、任意団体の口座開設申請するに当たって必要な書類や手続きを尋ねるため、沼津信用金庫の上町(かみまち)支店に電話する。対応した職員の米山氏は斉藤にまず4点を尋ねた。1、任意団体の代表者である申請者の名前,、2.任意団体の名称  3.任意団体の住所   4.任意団体の電話番号 
ほかには、団体の代表者と役員とで団体の規約を持参して支店に来てほしいといわれたので、無論応諾する。しかし団体名を聞いた米山氏が一旦電話を切って掛け直すというので、数分待つと、かけ直された。 
 
 そこで「最近問題になっているイスラムという一語が団体名にあるので口座の開設はできない」と拒否された。そこでほかの名称の団体なら開設できるかと問うと、たとえばどんな名前かと訊くので、たとえば「キリスト教だ」と答えると、返答できず。 
 
「宗教名を理由に断ることは、宗教的偏見に基づく差別になる。このことを公表しても構わないか?」 と尋ねると、再度かけ直すからと電話を切った。10分以上して米山氏からの二度目の電話が入り、「イスラムの一語やその他総合的に判断して開設はできない。このことを公表されるのも仕方がない」というので、話し合いはそこで決裂、電話は切られた。両者の会話は電話のみの会話なので沼信側は団体の規約も目的なども何も見ていない。わずか4項目の情報で何が総合的に判断できたのだろうか? 
 
それでは、3月1日以降に他紙に掲載された沼信の釈明に対する斉藤の反論を述べる。 
 
『沼新』同信金は、電話のやりとりだけで口座を開くことはなく、任意団体の口座開設は慎重にしているという。 
『斉藤』 電話のやり取りだけで開設できるとは誰も思っていない。しかし申請希望者が支店に行く機会も与えられず、団体名を告げたらそれを理由に拒否された。沼信側は巧みに論点を外そうとしている。 
 
【沼信】2月上旬には職員に「イスラム国とイスラム社会を分けて考え、誤解を招く発言は避ける」旨の文書を通知していた。 
『斉藤』そのような通知がされていたのなら、なぜ窓口の職員があのような対応をしたのであろうか。苦し紛れの言い逃れとも理解されるが。 
 
担当者は「電話のやり取りだけでは目的などをくみ取ることができなかった」とし、「(団体の)詳細が不明な中で口座が不正利用される疑念が払拭(ふっしょく)できなかった」などと話している。 
『斉藤』電話では4項目しか尋ねられていないのだから、目的や団体の詳細などを汲み取れるわけがない。沼信の職員は超能力者なのだろうか。 
 
【沼信】。団体名に『イスラーム』が含まれていたことが拒否の理由ではなく、対応に問題はなかったと考えている」 
『斉藤』支店窓口の米山氏が、最近問題が多いイスラムという一語が団体名に含まれている、と明言している。このことは、全国信用金庫協会や沼信に問い合わされた御殿場市役所消費生活センターの森脇氏が沼信支店の職員、田代氏に確認している。 
 
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中日新聞3月3日朝刊 
沼津信金が口座開設断る 
◆名義に「イスラム」だめ 
 沼津信用金庫(沼津市)が任意団体「日本イスラーム圏友好協会」名義の普通口座開設を拒否していたことが二日、団体側と信金への取材で分かった。職員が「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」と説明していた。 
 協会は御殿場市の無職斉藤力二朗さん(66)が設立。斉藤さんは「イスラム全体への偏見。納得のいく説明をしてほしい」と話している。 
 斉藤さんによると、二月二十四日、同信金上町支店に電話で口座開設の手続きを聞いた際にイスラムという名前が入った団体では口座は開けないと説明を受けた。 
 斉藤さんはイスラム情勢をまとめた記事をブログなどで配信し、口座はメールマガジンの購読料や講演料などの振込先に使う予定だったという。 
 信金は二月上旬に職員向けに「イスラム国とイスラム社会を分けて考え、誤解を招く発言は避ける」旨の文書を出していた。同信金業務部は、電話だけのやりとりで口座を開くことはなく、任意団体の口座開設は慎重にしていると説明。「設立目的が不透明で断ったが、誤解を招く対応だった」としている。 
 
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20150303/CK2015030302000102.html 
 
名義に「イスラム」 口座開設を拒否 
(2015/3/ 3 07:28) 
 
 沼津信用金庫が任意団体「日本イスラーム圏友好協会」名義の普通口座開設を拒否していたことが2日、同協会と信金への取材で分かった。沼津信金は「イスラムの名前を含め総合的に判断した」と説明し、開設を申し入れた御殿場市の男性(66)は「過激派組織『イスラム国』とイスラム圏全体を混同しているのではないか」と信金の対応に疑問を訴えている。 
 10年ほど前からイスラム圏の情勢などをインターネット新聞やブログで配信する活動をしている男性はことし1月、協会を設立した。2月24日、御殿場市内の同信金上町支店に電話で口座開設を相談し、団体名などを伝えたところ、開設を断られた。口座は、メールマガジンの購読料や講演料など協会の資金を管理するために使う予定だったという。 
 同信金は、電話のやりとりだけで口座を開くことはなく、任意団体の口座開設は慎重にしているという。2月上旬には職員に「イスラム国とイスラム社会を分けて考え、誤解を招く発言は避ける」旨の文書を通知していた。担当者は「電話のやり取りだけでは目的などをくみ取ることができなかった」とし、「(団体の)詳細が不明な中で口座が不正利用される疑念が払拭(ふっしょく)できなかった」などと話している。 
 男性は「イスラムへの偏見が日本全体に広まりつつある。金融以外の業界でも、同様の問題が起きなければよいが」と懸念を示した。 
http://www.at-s.com/news/detail/1174173003.html 
 
産経新聞夕刊  3月2日  末尾のみ 
一方、同信金業務部の担当者は産経新聞の取材に対し、「任意団体の口座開設は不正利用を防止するため、通常電話で受け付けることはない。団体名に『イスラーム』が含まれていたことが拒否の理由ではなく、対応に問題はなかったと考えている」とコメントした。 
http://news.livedoor.com/article/detail/9842324/ 
 
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各」ネットニュースへの書き込み 
 
弁護士小川義龍 @ogawalaw 
Follow 
もし書かれている事実のとおりであれば(これ以外の背景事情などなければ)、信用金庫の対応はとんでもないことだと思う。 / “団体名に「イスラム」、口座開けず 沼津信金が拒否:朝日新聞デジタル” http://htn.to/5sMrhh 
 
何だよ、オウム真理教を理由にオウム愛鳥家協会まで断るみたいな話だな。 
 
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この事件を取り上げられた方のブログから転載 
 
「イスラム」への過剰な恐怖にみる、偏見の生まれやすさ 
 
えっ? どういうこと?? 
名前に「イスラム」が入っているから、銀行口座が開けない?? 
それどういう判断基準なの??? 
思わず読み直してしまった。 
 
金融機関としての常識が疑われる対応 
 
このニュースの驚くべきところは、 
そういう非常にレベルの低い判断をしているのが、 
半世紀以上の歴史を持つ、地域に根差すれっきとした信用金庫だということだ。 
(wikipediaによると、沼津信用金庫は1951年に組織変更して誕生) 
 
しかもさらにさらに驚くのは支店長のコメント。 
「過剰だと思われるかもしれないが、(ISの事件で)イスラムに対する悪いイメージもあり、慎重にならざるをえなかった」 
 
だいたいこういう話題のとき、支店長的な立場の人は 
取材を受けると「それは誤解である」的なコメントをして火消しに走ります。 
ところがこの支店長は「慎重にならざるをえない」と正反対のコメント。 
本当にある程度の正当性があったんだと思っているのかもしれないけど。 
 
いともたやすくできあがる偏見 
 
沼津信金に対してひとしきりあきれた後で思ったのが、 
「金融機関で働く人でもこんなレベルの偏見を持つんだ」 
ということ。 
 
地方で暮らしていると、地元の金融機関で働く人たちって 
それなりにステータスがあるイメージだけど、 
その人たちでも、こうもふわっと流されてしまうんだな、と。 
 
ISは過激派組織で、宗教としてのイスラム教とまったく違う。 
イスラムの指導者たちが「あれは宗教ではない」と明確に否定しているし、 
その点はニュースでも繰り返し触れられている。 
 
それなのに、「イスラム国」⇒「イスラム」⇒「危険」 
みたいな馬鹿みたいな変換が、こうも簡単に行われてしまう。 
 
これって、福祉の世界に身を置く人たちにとっては、 
本当にがっくりくる話じゃないだろうか。 
 
僕は社会福祉士の実習で知的障害者施設に行ったのだけど、 
その職員さんや法人の理事さんたちは何度も 
「地域の偏見に対していかに戦ってきたか」を聞かせてくれた。 
施設ひとつ建てるのにも反対運動が起こり、 
地道に長い時間をかけて理解を得ていく。 
そうして、何とか今の環境ができあがったんです、と。 
 
間違いなく、これまで多くの人たちが必死になって積み重ねたものが、 
いまの知的障害者たちの権利を作ってきたのだと思う。 
まだまだ十分には程遠いけれど、時間をかけて、一歩ずつ前進してきた。 
 
でも、今日のニュースをみて、 
こうやって積み重ねたものでも、 
ささいなきっかけですぐ吹き飛んでしまうんじゃないか 
何十年もの積み重ねが一瞬でマイナスになってしまうんじゃないかと 
改めて暗い気持ちになった。 
 
偏見を取り除くのはこうも難しいのに、できあがるのは一瞬だ。 
 
http://kamitsuki2.com/post-97/ 


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