2015年03月18日20時17分掲載
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TPP/脱グローバリゼーション
TPP交渉 医薬品データ保護期間で対立、米国内でも強硬意見
大詰めを迎えたかに見えるTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉だが、いくつかの難航分野がほとんど進展のないまま残されている。その一つが知的財産権の扱い。なかでも医薬品データの保護期間の問題。できるだけ短くして安い医薬品を国民に供給する体制を敷きたい開発国・途上国とできるだけ長く保護をして自国医薬品産業の利害を守りたい米国との対立は解けていない。そんな中、4人の米上院議員がオバマ大統領に宛て、米国に現在の基準である12年を断固守れと書簡を送った。市民団体「TPPに反対する人々の運動」ブログから同書簡を紹介する。この中で、TPP交渉で“12年間”を主張している米国が議会答弁では“7年間”としていることに製薬業界が怒っている様が、上院議員の書簡の中に見られる。(大野和興)
知財保護における医薬品デ−タ保護が米国対途上国の間の対立もあって最難航分野と言われている。途上国は現行の2年間を少しでも短くと主張する一方、米国は自国のル−ルである12年間を主張している。そしてそれ故に交渉の遅れが生じているともいわれている。昨年も米国の医薬品業界は途上国に業界関係者を派遣したり、先般のハワイでの首席交渉官会合の際も大挙押し掛けて交渉に圧力を掛けている。
以下、書簡―
拝啓 オバマ大統領、
現在TPPの交渉を進めている大統領のご努力に対し、我々は謝意を表するものです。しかし、本協定が参加諸国に経済的利益を与える可能性があるとはいえ、いかなる最終合意も、米国の知的財産保護を含む主要な優先事項に関するわが国の確約をより強固にするものであることが不可欠です。
つきましては、TPPが現在及び将来に向けてこれらの基準を満たすようにするために、最終合意において知的財産権の高い基準―生物製剤データ保護期間を12年にすることなど―を維持するよう切にお願い申し上げる次第です。このようなデータ保護があれば、技術革新を進める人々による創意工夫の追究を可能にしつつ、必要となる相当額の初期投資を相殺するに足る十分な保護を与えることができます。
しかし我々は、特許権保護の維持、とりわけ生物製剤にのみ12年間データを保護するという約束は、オバマ政権にとって我々が思うほどには強固なものではないのではないかと懸念しています。米保健福祉省の2016年度予算案には、ここ数年、国内データ保護12年を7年に短縮する案が含まれています。上院財政委員会の公聴会で、保健福祉省長官のシルビア・マシューズ・バーウェル氏は本案と現在進行中のTPP交渉との関わりについて具体的に質問され、「オバマ政権の見解(立場)としては、思うに…7年でやって行くべきではないか」と言明しました。長官の発言は、政権が我々に何度か確約してき“12年基準”の維持という立場と矛盾します。
ご承知の通り、米国経済の活力ある部門は技術革新を伴う産業が支えています。これらの産業は、熟練の技術を伴う、高賃金の仕事を国内で創出するのみならず、活力に満ちた、急成長を見せる数多の産業において、米国を世界的な先導者となしています。TPPにおける標準以下の知的財産条項は、将来の貿易協定にとって危険な前例を作ることになり、グローバル市場における米国の競争力を弱体化させることになります。また、雇用や将来の技術革新も同様に危険にさらすことになりましょう。
我が国の活力ある生物薬剤部門は、しっかりとした知的財産権保護法が与える影響を示す優良な事例になっています。生物製剤産業は、推計340万人の雇用を支え、生産額として7890億ドルを生み出しています。これらの経済的成果は米国の強力な知的財産権保護法の直接的結果であり、生物薬剤産業は新しい画期的な治療薬を開発する研究に莫大な投資を続けることができているのです。本法律を、国内的にもまた国際的貿易取引の一環としても弱体化させるようなことがあれば、我が国の革新力および患者たちが画期的療法の恩恵を受ける機会に、重大な影響を及ぼすことになりましょう。
TPP交渉の進展に伴い、我々も大統領およびフロマン通商代表がいかなる最終合意にも強固な知的財産権保護基準が確実に盛り込まれるよう尽力されることを、求め続ける次第であります。
敬具
2015年3月11日
(自署)
上院議員Thomas R. Carper 上院議員Robert Menendez
上院議員Maria Cantwell 上院議員Robert Casey
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