2015年04月15日17時41分掲載
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国際
米ドルを使用する日
アフリカ南部の国、ジンバブエに行くとわかるのだが、そこで使われているドル紙幣は湿っている。色もどす黒い。潔癖症の人は抵抗を感じるかもしれない。その理由はジンバブエが通貨発行権を失っているため、古くなった紙幣を新札に変更できないからである。
国が通貨を発行することをやめて外国通貨を導入することがある。経済危機に陥って、その国の通貨が紙くずになってしまった時である。紙幣はそれが一定のモノや外国通貨に還元できるかぎりではマネーとしての絶大なパワーを誇っているが、モノに還元できる裏付けを失った時、たちまち紙くずとなってしまう。お金の幻想性が露わになる瞬間だ。
ジンバブエでも2008年ごろにハイパーインフレが起き、通貨は紙くず同然となった。欧米からの経済封鎖のもと、国内経済の低迷に政府が財政難から紙幣を大幅に刷って公務員への支払いに充てたことがきっかけだった。100兆ジンバブエ・ドルまで作られるという途方もないハイパーインフレとなって、2009年ついに自国通貨の使用を諦め、米ドルを使用することにした(一部は南アのランドを使用)。
米ドルを使用することで、通貨は米ドルと同じ価値を持つことになり、ジンバブエのハイパーインフレも鎮静化した。しかし、自国の通貨発行を諦めたため、金融政策などを諦めることも余儀なくされた。米政府あるいは米財務省の金融政策に異国の人々の経済も影響を受けることになるのだ。米国がドルを大量に刷ってドルの為替価値を減価すればジンバブエのドルもまた連動することになる。米ドルはジンバブエ以外でも、パナマやエクアドル、エルサルバドルなどで使用されている。これはドラライゼーションと呼ばれている。
ジンバブエの場合はインフレが進行するに沿って国民がドルを持ちたがるようになり、すでに2009年以前の段階でドルがジンバブエに流通している現実があった。インフレになると言う事は通貨価値が刻々と減少していくことであり、多くの人が価値が下落しているとはいえ少なくとも国際的に一定の安定を維持していて世界で通用する米ドルに換えて蓄えておこうと考えるようになる。ドラライゼーションはそうした状況が前提になっている。
ジンバブエは一朝一夕にハイパーインフレになったわけではない。白人から土地を接収して黒人農民に分けた2000年に端を発する欧米による経済封鎖に起因する。つまり、7〜8年の歳月をかけてゆっくりと進んだ事態だった。
■悪評高かったジンバブエの土地改革の真実〜英国農業学者の意外な調査結果〜
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