2015年05月11日11時47分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

米議会で審議中のTPA法案の概略 米国のTPP戦略と利害が前面に

 現在米国議会は上下院両院で、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉権限を大統領に一括して与えるTPP法案の審議を進めています。その概略を市民団体「TPPに反対する人々の運動」翻訳チームが翻訳しましたので紹介します。11ページに及び、法律と貿易用語と論理が満載の文章で、翻訳チームの苦労がしのばれます。一読すると、米議会のTPP交渉への透明性の要求は相当に厳しいものがあり、またTPPの目的についても米国の利害と地域の経済における覇権を前面に打ち出していることが分かります。(大野和興) 
 
Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of2015: Section-by-Section Summary 
 
2015年超党派連邦議会通商優先事項及び説明責任に関する法律:各節の要約 
 
※原文へのリンクは以下に(法案の原文へのリンクはこの翻訳の末尾に) 
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CB0QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.finance.senate.gov%2Fdownload%2F%3Fid%3D0009D10C-38FD-4D67-AC17-C9F29ABEAF05&ei=ZLJOVcPwBpXX8gW9nIBY&usg=AFQjCNHjuJgondEeI8C0YFCleuag5718Uw&sig2=2T-atfPeAHDNw0D5BvVsQQ 
概要 
第1節: 略称 
第2節: 貿易の交渉目的 
第3節: 貿易協定に関する権限 
第4節: 議会による監督・協議・情報入手の権利 
第5節: 通知、協議および報告 
第6節: 貿易協定の履行 
第7節: 交渉がすでに開始された貿易協定の取扱い 
第8節: 主権 
第9節: 小規模事業体の利益 
第10節:定義 
第11節:改正手続き 
 
第1節:略称 
本節では、この法案を「2015年超党派連邦議会通商優先事項及び説明責任に関する法律」(法律)と称することとする。 
 
第2節:貿易交渉の目的 
本節は、3部で構成される: 全体的な貿易交渉の目的、主要な交渉目的および能力向上とその他の優先事項である。 
 
第2節(a)項は、貿易協定における米国の全体的な貿易交渉の目的を定める。これには次が含まれる。米国の製品およびサービスに対する開放された、公平な、そして互恵的な市場参入を獲得すること;米国の貿易および投資を歪曲するような、貿易および投資と直接関係する障壁の縮小および撤廃を獲得すること;紛争解決を含む国際的な貿易および投資の規律と手続きを一層強化すること;経済成長を促進し、生活水準を向上させ、米国の競争力を高め、米国の完全雇用を促進し、そして世界経済を拡大すること;貿易政策と環境政策が相互補完的になるようようにし、環境の保護および維持とそのための国際的手段の強化を追及し、一方で世界の資源利用を最適化すること;労働者の権利および児童の権利に対する配慮を促進すること;環境および労働に関連する法律が、結果として貿易の促進を弱体化することがないようにすること;貿易協定が、小規模事業体に等しく国際市場に参入できるようにし、小規模事業体に不均衡に影響を及ぼす貿易および投資の障壁を縮小又は撤廃すること;最悪の形態の児童労働の禁止および廃止に関するILO条約182条の批准および完全な遵守を促進すること;貿易協定が、確実に貿易および投資の相関的で分野横断的特性を反映し、助長するものとなるよう保証すること;米国の貿易相手国のより開かれた民主主義社会の創生と国際的に認められた人権尊重の促進に寄与するものとして米国の貿易相手国が良好な統治、透明性および法の支配を強化すること;国際貿易の基盤としてのインターネットの重要性を認識すること;そして正当な健康や安全性の確保、極めて重要な安全保障や消費者利益の保護を含め、その他の正当な国内の目的に配慮すること、である。 
 
第2節(b)項は貿易協定に対する米国の主要な貿易交渉の目的を定める。 
(1)物品貿易: 第2節(b)項の(1)で規定される物品貿易の主要な交渉目的は、世界的な価値連鎖(ヴァリュー・チェーン)の活用を通じることを含め、米国の輸出機会の拡大、および貿易のより公平で、より開放的な条件を獲得すること;米国製品に対する市場参入機会を減少させたり米国貿易を歪めるような、貿易に直接関係する外国政府の関税および非関税障壁を縮小又は撤廃すること;互恵的な関税および非関税障壁撤廃の合意を獲得することである。 
 
(2)サービス貿易: 第2節(b)項の(2)で規定されるサービス貿易の主要な交渉目的は、世界的な価値連鎖の活用を通じることを含めて米国のサービスの機会の拡大、およびより公平で、より開放的な貿易条件を獲得することであり、そのために内国民待遇および市場参入を否定し、あるいはサービス供給事業者の設立または活動を不当に制限する規制およびその他の障壁を縮小または撤廃させることである。本節はまた、既存のサービスおよび新たなサービスの両方に対して高い基準のサービスを引き受ける意思と能力のある国々との多国間協定によるものを含め、あらゆる手段を通じてこの目標追求を促す。 
 
(3)農産物貿易: 第2節(b)項の(3)で規定される農産物に関する主要な交渉目的は、以下のことを確実にすることにより、輸入品が米国市場において享受しているものと同様の競争的市場参入の機会を米国からの農産物輸出品に対して獲得し、より公平で、より開放的な貿易条件を達成する、という議会の指示を含むものである。それは、透明性、規制の調和、国際基準と科学的リスク評価の遵守を重視した、実効性のある衛生植物検疫措置(SPS)を確保する一方、各国は、それぞれの国際的責務と調和する方法で、人類、動物又は植物の生命ないし健康を保護してもよいことを認め;関税を縮小又は撤廃する一方で、米国にとって輸入に配慮を要する(センシティブ)産品には調整のための期間を与え;家族経営農場および地域社会を支えるための、しかし貿易をゆがめることのない施策は維持し;そして補助金、国営貿易企業による貿易を歪める活動、および不当な商取引条件のような市場をゆがめる慣行を縮小又は撤廃することによるものを含むものである。交渉官は、交渉相手国が農産品貿易に関して現存する責務を全うしているか否かを考慮に入れ、米国産品に対する市場参入を弱体化するために、貿易相手国が地理的表示の保護または識別のための制度を不当に利用しないようにすることを指示される。 
 
(4)外国投資:第2節(b)項の(4)は、外国投資に関する主要な交渉目的を規定する。これには、米国における外国投資家に、米国における米国の投資家以上に重要な権利は決して与えられないようにする一方で、しかし外国投資の障壁を縮小し、米国内と同等の権利を米国の投資家の海外投資において確保する、という議会による指示を含む。そしてそのことには、内国民待遇に対する例外の縮小又は撤廃;投資に関する送金の自由;強制された技術移転および投資の設定と運用に対するその他の不当な障壁の縮小又は撤廃;収用及び収用に対する補償についての米国の法原則に合致する基準の確立;米国の法原則に合致する公正で公平な待遇基準の確立;そして透明性のための最大限の措置を保証する投資家対国家間の紛争解決のための改善された仕組みを含む、紛争解決のための意味ある手続きの提供ということを含むものである。 
 
(5)知的財産権: 第2節(b)項の(5)は、知的財産権に関する主要な交渉目的を規定する。これには、貿易関連知的財産権協定(TRIPS)に関するWTO協定の完全な履行を保証し、知的財産権を統制しているあらゆる貿易協定の条項が米国国内法と同等水準の保護基準を反映することを保証することを通じて充分かつ有効な知的財産権保護を促進するという米国議会の指示を含むものである。つまり、正当なデジタル貿易の促進によるものを含む知的財産の送信およびと配信の新技術や方法の強力な保護の提供;知的財産権に関する差別の排除;(知的)財産保有者がインターネットを通した自身の作品の利用管理、およびその作品の無許可利用防止のための法的かつ技術的手段を有することの保証;知的財産権の強力な執行の提供;及びサイバー上の窃盗および海賊行為によるものを含む知的財産権侵害への政府関与の防止又は排除である。また、主要な交渉目的には、知的財産権の保護を期待する米国人が公正かつ公平で差別のない市場参入の機会を獲得すること、またTRIPS協定と公衆衛生に関する2001年宣言を尊重し、貿易協定によって革新を助長し医薬品入手が促進されるようにすることも含まれる。 
 
(6)商品およびサービスのデジタル貿易と越境データフロー(国境を越えるデータの流出入): 第2節(b)項の(6)は、商品およびサービスのデジタル貿易と越境データフローに対する主要な交渉目的を規定する。これには、すべての貿易に関する合意はデジタル貿易および越境データフローに適用されるようにし;電子的に配送される商品およびサービスは、物理的な形態で配送される商品と同等に取り扱われ、また最大限に自由な貿易待遇を確保すべく分類されることを保証され;政府はデジタル貿易を妨害したり、越境データフローを制限したり、各ブラウザ−側でのデータ蓄積での記録の保管またはデータ処理を要求しないようにし;そして正当な政策目的により必要とされる国内規制は貿易に関して最小限度の制限に留められ、非差別的で透明性があり、開放された市場環境を促進するようにするという議会の指令が含まれる。この条項はまた、世界貿易機関(WTO)の電子伝送に関する関税の暫定不賦課が延長されるよう指示する。 
 
(7)規制的慣行: 第2節(b)項の(7)で規定される米国の製品、サービスおよび投資に対する市場参入を弱体化するために使われる外国政府の規制的又はその他の慣行に関する主要な交渉目的は、次の通りである。規制の策定過程の透明性および策定過程への参加機会の向上を実現すること;提案された規制が信頼できる科学的根拠、費用対効果分析、リスク評価又はその他の客観的証拠に基づいていることを要求すること;規制慣行を改善し、規制の調和を促進させること;基準策定過程のより高い開放性、透明性および収斂を求めること;規制の調和、同等化又は相互承認を通じて規制の互換性を高め、世界的で相互利用が可能な基準の使用を促すこと;米国商品の市場参入を阻む価格操作および参考価格設定のような政策の撤廃を実現すること;政府の規制による補償制度に透明性があり、公正な手続きを提供し、差別的でないようにするとともに、米国製品が十分に市場に参入できるようにすること;公開されていない所有者の情報を政府が収集することは、適法で正当と認められる規制上の利益を満たすために必要なものに限定され、その情報は情報公開から保護されるようにすることである。 
 
(8)国有および国営企業: 第2節(b)項の(8)は、国有企業に関する主要な交渉目的を規定する。これは、商業活動にまで国有企業を優遇するような貿易の歪みおよび不公正な競争を撤廃又は防止する責務を追及し、国有企業による関与は商業的観点にのみ基づくようにすることである。 
 
(9)現地化という貿易障壁: 第2節(b)項の(9)で規定される現地化という貿易障壁に関する主要な交渉目的は、現地固有の革新を進める措置を含め、市場参入又は投資の条件として、米国の生産者およびサービス提供者に対して、施設、知的財産又はその他の資産を相手国内に置くように要求する措置を撤廃および防止することである。 
 
(10)労働および環境: 2節(b)項の(10)で規定される労働および環境に関する主要な交渉目的は以下を含む。米国の貿易協定の相手国が、国際的に認められた中核的労働基準及び一般的な多国間環境協定の下でその責務を履行する措置を採用し維持していること;法律や規則の放棄または免除が1つでも国際的に認められた基準と矛盾する場合には、米国と相手国の間の貿易または投資に影響を及ぼすような方法で、国際的に認められた中核的労働基準を履行する法律又は規則の放棄や免除を行わないこと;環境法で与えられた保護を弱体化又は減少させる方法および米国と相手国との間の貿易および投資に影響を及ぼす方法で、環境法の放棄または免除を行わないこと、但し法律で適用されている場合と、一般的な多国間環境協定の下での責務と矛盾しないとされた場合を除くものとする;米国と相手国との間の貿易および投資に影響を及ぼす方法で、持続的又は反復的な一連の作為又は不作為を通して、必ず環境および労働の法律を効果的に実行させること、である。主要な交渉目的はまた、次のことを含む。環境に関して、締約国は検察的裁量権を行使し、より優先順位が高いと判断された他の環境法に関する執行のための資源の配分を決定する権利を有することを認めること;労働に関して、執行の資源の配分は、締約国の労働に関する責務を全うしない理由にならないことを認識すること;中核的労働基準に対する配慮を促進し、また持続的開発の促進を通じて環境を保護するため、米国の貿易相手国の能力を強化すること;持続的発展を不当に脅かす政府の慣行又は政策を縮小あるいは撤廃すること;米国の環境関連の技術、製品およびサービスの市場参入の改善を追求すること;米国との貿易協定の相手国における労働、環境、健康、および安全に関する政策および慣行が、米国の輸出品およびサービスを恣意的にあるいは不当に差別せず、又は貿易に対し形を変えた障壁として機能しないことを保証すること;法的規制のある労働および環境的義務が、他の法的規制のある義務と同様の紛争解決方法に従うようにすること;貿易協定が、米国領土内において、労働又は環境に関わる法の執行を引き受ける権能を締約国政府に与える、と解釈されないようにすることである。 
 
(11)通貨: 第2節(b)項の(11)で規定される通貨措置に関する主要な交渉目的は、協調的な仕組み、強制力のある規則、報告、監視、透明性確保、あるいは必要に応じてその他の手段により、米国との貿易協定の相手国が、有効な国際収支の調整を妨げるためや、不公正な競争力を得るために、為替レ−トの操作をすることをしないようにすることにある。 
 
(12)WTOと多国間貿易協定: 第2節(b)項の(12)で規定される世界貿易機関(WTO)に関する主要な交渉目的は、情報技術協定、政府調達協定およびその他のWTOの多国間協定の拡大と強化を含め、WTOの多国間および数カ国間の協定の完全な履行を実現し参加国を拡大すること;貿易促進に関する条約を含む新しい協定を通して、世界的な価値連鎖の活用によつことを含め米国輸出品のための競争力ある市場機会を拡大し、そして貿易のより公正で、より開放的な条件を獲得すること;地域間の貿易協定がWTO規律に適合するようにすること;WTO諸機関への積極的な参加を通して、WTO加盟国の協力を高めること;そしてWTOとその他の国際機関の協力を促すことである。 
 
(13)貿易機関の透明性: 第2節(b)項の(13)で規定される貿易機関の透明性に関する主要な交渉目的は、WTO、その他の貿易協定により設立された機関およびその他の国際貿易の場における透明性の改善を追及することである。 
 
(14)腐敗防止: 第2節(b)項の(14)で規定される腐敗防止に関する主要な交渉目的は、外国政府の行為、決定又は不作為に影響を及ぼすために、金銭又はその他価値ある物品を使用する試みを禁ずる高い基準および効果的な国内の法執行の仕組みを獲得すること;米国人が貿易・投資活動を行う場合の条件を公平にすること;国際的な場における腐敗防止および反賄賂戦略の支援への関与を追及することである。 
 
(15)紛争解決および執行: 第2節(b)の(15)で規定される紛争解決に関する主要な交渉目的には次のことが含まれる。協定が一層遵守されることを目標に、効果的で、透明性のある、公平な方法で紛争の解決を規定する条項を追及すること;権限と責務を増やすことも、あるいは減少させることもなく、WTO小委員会と上級委員会が、明記されている通りにWTO協定を適用するそれぞれの権限と該当する検討基準を、遵守することを追及することである。 
 
(16)貿易救済法: 第2節(b)項の(16)に規定される貿易救済措置に関する主要な交渉目的は、反ダンピング、相殺関税およびセーフガード関連法を含む米国貿易関連の法を厳格に執行する権能;米国労働者、農業生産者および商業者が公正な条件で十分に競争ができるとともに、互恵的な貿易特権の利益を享受することができるようにするため、不公正貿易に対する規律やセーフガード条項の有効性を減ずるような協定を回避する権能;及びダンピングと補助金につながる市場の歪みに取り組み、救済する権能を、維持することにある。 
 
(17)国境税: 第2節(b)項の(17)で規定される国境税に関する主要な交渉目的は、歳入を間接税よりも直接税に主に依存している国々への不利益を軽減するため、内国税のための国境調整の扱いに関しWTO規則の修正を獲得することである。 
(18)繊維交渉: 第2節(b)の(18)で規定される繊維と衣類の貿易に関する主要な交渉目的は、米国市場において外国輸出品が享受している競争機会に実質的に同等な、外国市場において米国のために繊維および衣類の輸出機会を獲得すること、および繊維と衣類におけるより公正で、より開放的な貿易条件を達成することである。 
 
第2節(c)項は、その他の優先事項を規定し、次が含まれる。貿易協定の下で米国の貿易相手国が責務を遂行できる能力を強化し;必要な場合は技術支援を供与し;適切な科学的知識に基づいた環境および人間の健康を保護するための基準の開発と履行を協議する仕組みを設け;多国間の環境協定への配慮を促してそれらの協定貿易措置とWTOの責務の間の一貫性について協議するための条項;そして貿易交渉と貿易協定に関連して引き受けた能力強化の取り組みについての年次報告である。 
 
第3節:貿易協定の権限 
第3節(a)項は、関税障壁に関する貿易協定の権限について規定する。この小節は、議会に対する通知の必要性と一定の制限を条件として、大統領が、2018年7月1日以前まで(貿易権限の手続きが延長された場合は2021年7月1日まで)、米国の貿易に対し過度に負荷のかかる関税や他の輸入制限を修正するため外国との貿易協定を締結すること、および貿易協定を実施する上で必要または適切であると大統領が判断した関税の変更を布告することを認める。 
これらの期日以降、当該貿易協定に対する実質的な修正もしくは追加はこの小節のもとでは認めない。この布告の権限は、本法律の制定日時点で5%以上の関税を半分(50%)以上下げるか、輸入の影響を受けやすい農産物の関税をウルグアイラウンドまたはそれに引続く協定のもとで適用できる関税率よりも下げるか、あるいは本法律の制定時点で適用される関税率以上に関税率を上げる協定には適用されない。 
 
第3節(b)項は、関税と非関税障壁に関する合意のための貿易協定の権限について規定する。本小節は大統領に、関税および非関税障壁に取り組むために、議会との協議を条件として、貿易交渉に参加する権限を与える。 
協定は、第2節の交渉目的に合致するための進展がみられ、大統領が第4節と5節に定められた条件を満たした場合にのみ、本小節のもとで締結されることができる。 
本小節は2018年7月1日以前に締結された合意にのみ適用される(議会が貿易協定の権限を延長した場合は2021年の7月1日以前)。 
これらの期日以降、本小節のもと、当該貿易協定に対する実質的な修正や追加は不可能となる。本小節は、本小節のもとで締結された貿易協定を履行する法律は、この法律がその貿易協定を承認する規定から構成され、そのような規定のみが貿易協定を履行する上で厳格に必要または適切である限りにおいて、1974年の貿易法の第151節に規定されている貿易権限手続きの資格を持つことを規定する。 
 
第3節(c)項は、要請があった場合の大統領による貿易権限手続きの延長の手続きと、議会によりその延長が却下された場合の否認決議の検討のための手続きを定める。 
1974年の貿易法第13節に基づき創設された貿易政策と交渉に対する助言委員会と国際貿易委員会もまた、議会に対し延長要請に関する報告書を提出することを指示される。 
 
第3節(d)は、大統領に対し、全ての産業、製品、サービス部門に影響を与える関税と非関税障壁を対象とする交渉を追及し、それが実行可能で時宜を得ており、かつ米国の国益に適うのであれば既存の各分野の協定を拡大する交渉を行うことを指図する。また大統領に対し、その際、議会での全ての交渉目的を考慮することも指図する。 
 
第4節:議会による監視、協議、情報入手の権利 
 
第4節(a)項は議会に対する当該政権の協議の詳細な要件を規定する 
交渉過程において米国通商代表部(USTR)は以下を行うことを明記する。要請があればいかなる議員とも会合をもつこと;機密扱いの資料を含む関係資料を提供すること;上院の財政委員会と下院の歳入委員会に対し緊密で時宜を得た協議を行うこと;各上下両院の交渉に関する助言グループおよび上下両院の貿易協定により影響を受け得る法律を管轄するすべての委員会と、緊密で時宜を得た協議を行うこと、上下両院の各農業委員会に対し、農業の貿易に関連した交渉と合意に関して緊密で時宜を得た協議を行うこと 
本小節はさらに、協定の発効に先立ち、USTRは議会に対し、貿易相手国が協定の発効日に効力を発揮する規定を遵守するためにとった措置について、つねに知らせていなければならないことを規定する。  
本小節はまたUSTRに対し、上院の財政委員会と歳入委員会の委員長及び筆頭理事と協議のうえ、発効から120日以内に議会との協調を高めるための文書化された指針を策定することを要求する。 
本指針は、全ての議員に対する速やかな要旨説明と、文書および機密情報を含む議員、および必要であれば適切な機密事項取扱いの許可を得たスタッフ、そして委員会の責任上の観点から適切とされる、同様の許可を得た委員会のスタッフと情報共有を確実に行うためのものである。本指針は、貿易交渉によって影響を受ける可能性のある法律を管轄する全ての部局と機関に配付される。 
 
第4節(b)項は、議会の貿易政策と交渉に関する助言者となる委員を任命し、その委員と協議する手続きを規定する。いかなる議員も議会助言者に任命されうるものとする。 
貿易交渉の過程において、USTRはこれらの議会助言者らと緊密かつ適切な時期に協議しなければならない。助言者はUSTRから貿易代表団の公式な助言者であるとの信任を得ねばならない。 
 
第4節(c)項は各上下両院に、交渉に関する助言グループを設置し、助言者としての要件を明記するが、それには、貿易協定に影響される法律の条項を管轄するすべての委員会の委員長と筆頭理事の任命を含む。 
本小節はUSTRに対し、助言者グループと協議し助言を求めることに関する要件についても概説し、また助言者グループに入っていない議員との調整を行う仕組みを規定する。助言者グループの議員は貿易代表団の公式な助言者としてUSTRからによる信任を得なければならない。 
USTRは上院の財政委員会および歳入委員会の委員長および筆頭理事とともに、確定した日程に基づく詳細説明を含む、助言者グル−プとの最も実践的な調整のための指針を作成しなければならない。貿易協定締結後は、本小節は協定の遵守に関する協議を引き続き行うことを要求する。 
 
第4節(d)項は一般市民に対しての協議手続きを定める。USTRは、上院の財政委員会および歳入委員会の委員長と筆頭理事と共に、一般市民の目にとまりかつ利用しやすい形での迅速な情報公開、連邦官報等を通じた市民の意見を求める機会を頻繁に設けることにより、透明性を高め、市民参加を促し、交渉過程での協力を促進するため、貿易交渉に関する市民の情報入手指針を策定することが求められる。この指針は、貿易協定により影響を受ける法律を管轄とする全ての部局や機関に配付されなければならない。 
 
第4節(e)項は1974年制定の貿易法により創設された貿易助言委員会との協議について言及する。USTRは、上院の財政委員会および下院歳入委員会の委員長および筆頭理事と共に、時宜を得た説明と、委員会が代表している部門および分野に関する事項についての意見を求める陳述の機会とを提供するため、助言委員会との関係強化の指針を作成することを求められる。 
本小節は、この指針が、機密資料を含む詳細且つ時宜を得た情報と資料を共有する手続を、助言委員会の各委員、および必要な場合には適切な機密事項扱い許可のある被任命者に対して提示することが必要であるとする。本指針は、貿易協定に影響を受ける法律を管轄する全ての部局や機関に配付されなければならない。 
第4節(f)項はUSTRの透明性に関する主任担当官を定める。その責任は、透明性の方針に関して議会と協議し、貿易交渉における透明性を調整し、市民を巻き込み、支援を行い、透明性の方針についてUSTRに助言を行うことである。 
 
第5節:通知、協議、報告 
 
第5節(a)項は、大統領が貿易交渉を発議する前に、議会が受け取らなければならない通知、協議、報告を規定する。第5節(a)項(1)は、貿易交渉への参加に先立ち、大統領は議会に90日前に書面による通知を提出し、上院財政委員会と議会歳入委員会、上下両院の該当する委員会、上下両院の交渉に関する助言者グループと協議しなければならないことを規定する。 
大統領はUSTRのウェブサイト上に、貿易交渉の目的の詳細かつ包括的な要約を掲載、常時更新し、またこの貿易協定がどのように目的を前進させ、米国に利益をもたらすかの説明を公表しなければならない。 
 
第5節(a)項(2)は農業に関する交渉に付随するものであり、大統領は全ての関連した関税の影響評価をしなければならず、また上下両院の各農業委員会と協議しなければならないことを明記する。魚介類の貿易、繊維や衣類のような配慮を要する輸入品については、追加的な協議と報告の要求が適用される。 
 
第5節(a)項(6)は、大統領が、特定の国と交渉を開始するか否かの決定に際し、その国が米国に対する貿易と投資の関与をどの程度履行しているかを考慮することを要求する。 
第5節(b)項は大統領に対し、第3節(b)項に定めるすべての貿易協定の締結を行う前に上院財政委員会、下院歳入委員会、その他関連する議会委員会、上下両院の交渉に関する助言者グループと協議することを要求する。 
この協議は、この協定の性格と、それが本法律の目的にどの程度適っているのか、そして現行の法律に及ぼす一般的な影響を含め、この協定の履行について取り扱う。 
協定締結の少なくとも180日前に、大統領は、米国の貿易救済法への協定の影響に関して報告することも求められる。本小節は、さらに、下院または上院が、貿易救済法の改正案が、貿易救済に関する交渉目的と矛盾すると見なし、決議を検討するための手続きについて記述する。 
本節は、大統領による貿易協定の締結の意向の議会への通知が提出されてから30日以内に、助言委員会が報告を提出することも求める。 
 
第5節(c)項は大統領に対し、締結前90日以内に国際貿易委員会(ITC)に協定の詳細を提出し、大統領の協定締結後105日以内にITCは大統領と議会に対し、協定が米国経済に及ぼし)影響を評価した報告書を提出することを求められる。この報告書は一般に公開されることとなる。 
 
第5節(d)項は、大統領が議会に協定の最終条文を提出する際に、上院財政委員会と下院歳入委員会に対し以下の報告書を提出することを規定する。能力開発を目的とした協議メカニズムの運用評価を含む、大統領が実施した協定に対する環境監査の報告書、協定が米国の雇用に与える影響に関する報告書、米国の労働法と慣行の修正が必要なすべての条項の記述とともに、協定に含まれる国に関する実質的な労働権報告書である。そしてこれらの報告書は公開されることとなっている。 
 
第5節(e)項は、大統領が議会に協定の最終条文を提出する際に、併せて国境における人事要件、管轄機関の人事要件、税関の基盤整備要件、協定が国家と地方政府に及ぼす影響、を評価する履行・施行計画の提出を規定する。この影響調査は公開されること。大統領の次回予算提出には、この案を実施するための財源要請も含まれなければならない。 
 
第5節(f)項は次に関する追加報告書の提出を要求する。貿易協定のもとで権利を執行するために米国が適用する罰則と救済の効果、1984年以降の貿易権限手続きのもとで執行されたすべての貿易協定の経済的な影響とその報告書の5年以内の更新、貿易協定に従ってとられる執行措置である。そしてこれらの報告書は公開される。この節ではまた、USTRに、貿易協定のもとで定められた義務に関する見直しあるいは執行措置の実施のための請願を受領後に、上院財政委員会、下院歳入委員会と協議することを求める。 
第5節(g)項は、貿易協定案に関するあらゆる事項について、上下両院の議員は誰でも各々の見解を上院財政委員会と下院歳入委員会に提出することが出来)、関連する委員会はそれらの見解を参考として受け取ることを規定する。 
 
第6節:貿易協定の履行 
 
第6節(a)項は、貿易協定締結の少なくとも90日前に、大統領は協定締結の意向を議会に通知し、また連邦政府の官報に公表しなければならないことを規定する。 
少なくとも協定締結の60日前に、大統領は協定条文をUSTRのウェブサイトに公開しなければならない。協定締結後60日以内に、大統領はその協定によって必要となる現行法の変更に関する内容を提出しなければならない。 
議会に公式に協定締結を提出する少なくとも30日前に、大統領は議会に対し、協定の最終条文の写しと協定の履行にあたり提案された行政措置の草案を提供しなければならない。 
両院が議会の会期中に、大統領は、協定の最終条文、施行法案の草案、行政措置声明と必要な補足情報を提出しなければならない。 
求められた補足情報には次の説明が含まれる。施行法案、そしてこの協定が本法律の目的達成を前進させることとその理由を明記している行政措置の声明が、どのように現行の法律を変更し、または影響を及ぼすのか;この協定によりこれまで交渉された協定の条項が変更されるか否か、またどのように変更されるか;どのようにこの協定が米国の商業利益に貢献するのか、どのように施行法案が第3節(b)項3で定められた(貿易協定の権限の)条件に適合するのか。この補足情報は公開されること。 
本小節はまた、協定の利益と責務は、締約国のみに適用されることが協定と矛盾しない場合は、そのように適用されることを前提として、締約国以外の諸外国は、同国が協定で定められた責務の対象とならない限り、この協定のもとで決して利益を享受しないようにするため、施行法案に相互利益の規定が含まれることを求める。 
さらに、施行法案が導入される前に公開されていない外国政府とのいかなる協定も、協定の一部と見なされず、米国法もしくはいかなる紛争解決機関にとっても効力がないことを規定する。 
 
第6節(b)項は、大統領が本法律に従って通知または協議することを怠りまたは拒否した場合、貿易権限手続きの利用を否認するための方法と手続きを規定する。第6節(b)項(1)には、手続きの否認決議の方法が含まれる。この決議によって、両院は共同で行動し、貿易権限手続きを手早く撤回することが可能になる。第6節(b)項(3)と(4)は、協議と法令遵守決議の方法を定める。これにより、両院が単独で、貿易権限手続きを該当する議会から撤回することができる。 
 
第6節(b)項(1)(B)(ii)は、即ち、本協定が本法律の目標、方針、優先事項、目的の達成に向けた前進が出来ない場合;大統領が第4、5,6節に従った協議を怠った場合;大統領が交渉に関する上下両院の各助言者グループと会合をしなかった場合;または第4節が求める協議や透明性の指針を実施しなかった場合に;大統領は通知や協議を怠ったか、または拒否したのである、ということを明記している。 
これに加え、本小節は、大統領が2015年12月15日までに、WTO紛争解決委員会と上級委員会に関する議会の懸念を表明するための計画を定めた報告書を発行していなかった場合、貿易権限手続きは、WTOの保護のもとで交渉された合意のためのいかなる施行法案にも適用されないことを規定する。 
 
第6節(c)項は、本法律に基づく議会手続きは、議会下院および上院の法案作成権の行使として確立されていることを再確認し、どちらの議会にもいかなる時にも規則を変更する憲法上の権利があり、その議会のほかの規則と同じ範囲であることを認識する。 
 
第7節:交渉が既に開始された貿易協定の扱い 
 
第7節(a)項は、本法律の発効前に開始した特定の貿易交渉に対する履施行法案の貿易権限手続きの適用性に関するものであり、WTO関連の交渉、TPP、EUとの貿易交渉、サービス貿易に関する交渉、環境に関連した商品に関する交渉が含まれる。 
 
第7節(b)項は、第7節(a)項に記された交渉に関する特別の通知と協議手続きを規定し、具体的な手続きがその後行われた場合には、交渉開始に先立つ最初の90日間の通知の例外を認める。 
 
第8節:主権 
この節は、米国法と矛盾する第3節(b)項のもとで発効された貿易協定はどの条項の適用も効力を持たず、第3節(b)項のもとで発効された貿易協定の条項には、米国が米国の法律を改正または修正できなくなる条項はなく、第3節(b)項のもとで発効された貿易協定に従って召集された紛争解決委員会によって発行された報告書は米国法のもとでの拘束力はないことを規定する。 
第9節:小規模事業の利益 
この節では、USTRは貿易交渉の過程において小規模事業者の参加を促し、小規模事業に関するUSTR担当官の役割はその担当官の役職に反映され、小規模事業、市場参入、産業競争力を担当するUSTR代表補は小規模事業の利益がすべての貿易交渉において確実に考慮されているようにすべきである、という議会の考えが表明されている。 
 
第10節:改定 
この節は改定について定める。 
 
第11節:定義 
この節は協定において重要な用語を定義する。 
 
※以下は法案の原文へのリンク 
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CB8QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.finance.senate.gov%2Fdownload%2F%3Fid%3DFEC41212-F7AF-4A6D-BF83-978401999DAF&ei=VbNOVYqrNI6C8gWd4oHABQ&usg=AFQjCNEeBZVFVUv5ODzH10a9FARAu-jY9Q&sig2=iVhWpV7lZ0vM8_l5FgrPpg&bvm=bv.92885102,d.dGc 
(翻訳:田中 久雄  田所 剛    監修:廣内 かおり) 


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