2015年05月12日22時33分掲載  無料記事
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自然と共にあることを選ぶ 映画「赤浜ロックンロール」 笠原真弓

 今日から始まった「赤浜ロックンロール」を見た。漁師って、みんなかっこいい。筋の通り方が違う。三陸海岸に、巨大防潮堤が出来る。高さは12〜14m。幅も半端ではない。万里の長城のように切れ目なく続くと聞いていた。その堤防を拒否して、以前のままでいいと言っている町があると聞いていた。ひょっこりひょうたん島のモデルと言われている島のある町、岩手県の大槌町。チラシと題名から、防潮堤「問題」はどう描いているのかな? 相当弾けた若者向き映画かな? と、期待と不安でスクリーンに向かったのに、すべてが杞憂だった。 
 
 漁師仕事にいのちをかける若者兄弟(新おおつち漁協組合長の阿部力・守)と、やはり海をこよなく愛し、孫にそれを伝えることを当面の目標にしているジジ(川口博美)を中心に回っていく。赤浜は震災後、大勢のボランティアの方たちに助けられた。その感謝の祭りが出来るまでに復興した物語だった。ここには、骨太の「日本」があった。取り戻す必要のない、「日本」が。 
 
 地震による津波で、ここ大槌町の赤浜は、たくさんの犠牲者と、漁業被害を受けた。震災後立ち上げた「赤浜の復興を考える会」会長の川口博美さんは孫を抱いて、なぎ倒されて単なるコンクリートの塊になった防潮堤の隙間から海を眺めながら、孫のために海を、浜を守ると低くいう。 
 
 ある漁師は、「みんながボーッとしていたとき、力(つとむ)が弟と海さ出て、浮き玉を拾いはじめたんだ。あッ、漁ばできるって……」という。鮮魚店の親父さんは、「力が毎日一番に、おっきな声出してくるから…」と笑う。 
 
 驚く程の水揚げが続く。川でも、洪水の後は豊作と言われているが、それと同じ原理らしく、海が荒れたら、豊漁になるという。湾内のヘドロが一掃されて、山からのプランクトンも増えるのだろう。びっくりするような牡蠣やホヤが収穫される。このあたりで住んでいたわたしのおばあちゃんが、東京に出てくるときは、いつも美味しいものを持ってきてくれた。ホヤなんて、たまらなかった。ヤキカゼも。 
 もともと海底湧水の多いところで、そのような湾は海が生き生きして豊かである。山の栄養素も流れこみ、プランクトンが豊富なのだろう。その自然の恵みを生かしての漁業を目指す人々がいる。 
 
 そこで開かれた感謝のロックフェスティバル。浜には櫓が組まれ、ボランティアにきたり、支援してくれた人たちとともに、ロックにゆれていた。 
 
 「赤浜の復興を考える会」では、集落の中でも一旦は14.5mの防潮堤でと決まりかけたものの、話し合いを続け、集落の移転を軸に、防潮堤は被災前の6.5mに決まる。津波で、母、妻、孫を亡くした川口さんは、つくづく人間は自然の力には勝てないのだから、次に津波が来た時は逃げればいいという。 
 
 三陸のリアス式海岸の入江で、確かに生きている人たちがいる。 
阿部くんのわかめを持つ小西監督とのトーク。阿部力(つとむ)さんは、素晴らしい。浜の漁師を引っ張ったらしい。態度で。先輩たちが、彼を見て、海に出ようと、元気になったという。阿部くん、 ポスターに感想一言。オレ、こんなじゃない。イメージ違う。そうだよね。東北人だものね。彼らに励まされる思いで、スクリーンを後にした。 
 
監督 小西晴子 初監督作品 
新宿K’s cinemaにて5/15まで10:00から 
http://www.u-picc.com/akahama_rocknroll/ 
 
【写真】映画ポスター 
ソネットエンタテインメント株式会社 


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