2015年05月30日00時01分掲載  無料記事
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遺伝子組み換え/ゲノム編集

「遺伝子組み換え作物の圃場試験要請は取り上げないで」 日本消費者連盟ら58団体が北海道知事に申し入れ

 北海道で今年4月、「北海道農業者の会」を名乗るグループが北海道立総合研究機構に遺伝子組み換え(GM)作物の圃場試験実施を要請する文書を提出した(本誌既報)件に関し、特定非営利活動法人日本消費者連盟と市民団体「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」は29日、58団体の賛同署名を添えて、高橋北海道知事と道立総合研究機構長に対し、同要請を取り上げないよう文書で申し入れた。「申し入れ」は、もし道内でGM作物の圃場試験が行われるようなことがあれば、北海道産の作物の安全性に対する懸念が生まれ、北海道農民がもっとも被害を受けると指摘、総合研究機構には今後の対応方針を質問している。この申し入れに対する賛同団体は生協や市民グループ、環境や社会問題に取り組むNGO、農民団体など幅広い分野にわたっている。(大野和興) 
 
 国際的なGM推進機関であるISAAA(国際アグリバイオ事業団)が4月22日に報じたニュースで、「北海道農業者の会」の動きが明らかになった。その後、日本経済新聞社のグループ会社日経BP社が、同社のメディア「日経バイオテクonline」5月7日号でISAAAの報道を翻訳、転載した。圃場試験の要請を出した「北海道農業者の会」についてはほとんど何も知られておらず、突然登場した団体といってよい。 
 
 日本消費者連盟らの「申し入れ」にあるように、北海道ではモンサント社などGM作物の育種、栽培を世界的に進めている多国籍企業の影響下にあるグループが、2002年に1ヘクタールの広さに遺伝子組み換え大豆を栽培、2003年には、札幌市郊外にある独立行政法人北海道農業研究センターで農業生物資源研究所が開発した遺伝子組み換え稲の試験栽培が行なわれた経過がある。 
 こうした動きに懸念を深めた消費者団体や農民団体によって北海道内で遺伝子組み換え作物栽培を規制する条例制定運動が広がり、数十万に達する署名が寄せられ、2005年3月31日に同規制条例が公布された。 
 
 この条例によって北海道農業の発展が阻害されたというのが「北海道農業者の会」の主張で、ダイズ、トウモロコシ、テンサイの三作物について、GM品種の圃場試験を求めている。(資料して全文掲載) 
 
 農業分野での遺伝子組み換え栽培を含むバイオ技術は、安倍政権の経済政策でも目玉に位置付けられている。また現在交渉中のTPP(環太平洋経済連携協定)でも米国政府の強い主張で遺伝子組み換え表示は貿易阻害要因であるとして排除される恐れも出ている。そうした政治や経済の動向も背景に、今回北海道で現れたようなう動きが全国化する可能性もある。日本消費者連盟の今回の「申し入れ」は、そうしたことも念頭に先手を打ったものでもある。 
 
 
【資料1】 
北海道立総合研究機構 殿 
 
要望書 
平成27年4月7日 
 
私どもは、北海道農業の将来像を描くために、同志を募り任意団体「北海道農業者の会」を立ち上げ、学習及び相互研鑽を積んで参りました。その結果、別紙署名のための要望書にあるように、地球環境、人口問題、気象変動に対応するための農業技術革新が必要であるとの結論に達しました。技術革新の中でも生産性向上、農業生産性の向上などが必須であり、そのためには、組換え作物の導入が大きな位置を占めるとの考えに至りました。特に労働力削減、生産性の向上に大きな進歩があることを学びました。このことを実証するには、実際に栽培することが極めて重要であります。世界では、多くの国々や地域でその効果が証明され、悪い影響は、全くないことを学びました。現在北海道では、甜菜の作付け面積は減少していますが、その大きな理由が除草作業にあること、大豆の生産性が低いのは、同じく除草と生産効率にあることが上げられている。トウモロコシもダイズと同様の理由が挙げられている。 
一方、先に述べた組換え品種を利用することで大きなベネフィットを上げていることが報告されている。そこで、私どもは、組換え品種、特に甜菜、大豆、トウモロコシについて相当する従来種との比較を是非とも貴機構で早急に試験していただきたく署名を添えてお願い申し上げます。どうか早急に試験をしていただきこの技術の有用性を確かめていただきたく、お願い申し上げます。 
 
                   北海道農業者の会 
事務局 有限会社 西南農場 宮井能雅 
HOKKAIDONIAN  
 
 
【資料2】 
北海道立総合研究機構 
理事長 丹保憲仁様 
 
特定非営利活動法人日本消費者連盟 
 共同代表 安達由起 
 共同代表 大野和興 
 共同代表 田坂興亜 
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン 
 代表 天笠啓祐 
 
 
申入れおよび公開質問状 
 
 2015年4月7日に「北海道農業者の会」が北海道立総合研究機構に対して遺伝子組み換え作物の試験栽培実施を求める要望書を送ったことが、国際的な遺伝子組み換え作物の推進機関であるISAAA(国際アグリバイオ事業団)の報告で明らかになりました。ISAAAの報告は、日本経済新聞社のグループ会社「日経BP社」が発行するメディア「日経バイオテクonline」5月7日号にそのまま転載され、拡散されております。 
 北海道では2002年にバイオ作物懇話会によって1ヘクタールの広さに遺伝子組み換え大豆が栽培され、農家や消費者の間で不安が広がりました。2003年には、札幌市郊外にある独立行政法人北海道農業研究センターで農業生物資源研究所が開発した遺伝子組み換え稲の試験栽培が行なわれ、道内で遺伝子組み換え作物栽培に反対する農家や消費者の声が大きくなりました。その声は、北海道内で遺伝子組み換え作物栽培規制条例制定を求める運動になり、全国からも数十万に達する署名が寄せられ、2005年3月31日に同規制条例が公布されました。 
 さらには、2014年11月に発表された、北海道が行なった道民意識調査(※)において、遺伝子組み換え作物の栽培に不安を感じている人は8割以上(「不安に思う」48.0%、「やや不安に思う」32.4%)に達していることも明らかになっています。仮に遺伝子組み換え作物の試験栽培が認められるようなことがあれば、北海道産農産物の安心安全への疑念が生じることが懸念されます。そのときもっとも被害をこうむるのは北海道の農業者です。 
 遺伝子組み換え生物への懸念をもっている私たちは、貴機構が「北海道農業者の会」の要望を受け入れず、遺伝子組み換え作物の栽培試験を行わないよう強く求めると同時に、下記の事項についてお尋ねします。ご多用とは存じますが、ご回答は6月12日までに日本消費者連盟宛てにお願いいたします。 
 
【質問事項】 
1、「北海道農業者の会」から遺伝子組み換え作物栽培の試験栽培に関し何らかの要望書を受けられましたか。 
2、もし要望書を受け取られたとしたら、その日時、内容はどのようなものでしょうか。 
3、その要望書に対し、貴機構はどのように対応されましたか、あるいはこれからどのように対応するご予定ですか。 
 
【資料3】 
北海道知事 
高橋はるみ様 
 
特定非営利活動法人日本消費者連盟 
共同代表 安達由起 
 共同代表 大野和興 
 共同代表 田坂興亜 
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン 
 代表 天笠啓祐 
 
 
申入書 
 
 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が公表した報告によりますと、2015年4月7日、「北海道農業者の会」が北海道立総合研究機構に対して遺伝子組み換え作物の試験栽培実施を求める要請を行なったとのことです。国際的な遺伝子組み換え作物の推進機関であるISAAA(国際アグリバイオ事業団)のこの報告は、日本経済新聞社のグループ会社「日経BP社」が発行するメディア「日経バイオテクonline」5月7日号にそのまま転載されて、拡散されております。 
 北海道では2002年にバイオ作物懇話会によって1ヘクタールの広さに遺伝子組み換え大豆が栽培され、農家や消費者の間で不安が広がりました。2003年には、札幌市郊外にある独立行政法人北海道農業研究センターで農業生物資源研究所が開発した遺伝子組み換え稲の試験栽培が行なわれ、道内で遺伝子組み換え作物栽培に反対する農家や消費者の声が大きくなりました。その声は、北海道内で遺伝子組み換え作物栽培規制条例制定を求める運動になり、全国からも数十万に達する署名が寄せられ、2005年3月31日に同規制条例が公布されました。 
 さらには、2014年11月に発表された、北海道が行なった道民意識調査(※)において、遺伝子組み換え作物の栽培に不安を感じている人は8割以上(「不安に思う」48.0%、「やや不安に思う」32.4%)に達していることも明らかになっています。仮に遺伝子組み換え作物の試験栽培が認められるようなことがあれば、北海道産農産物の安心安全への疑念が生じることが懸念されます。そのときもっとも被害をこうむるのは北海道の農業者です。 
 私どもは遺伝子組み換え生物に対し深い懸念をもっております。今後もし北海道庁に対し、今回のような遺伝子組み換え作物の栽培を求める要請があったとしても、高橋知事におかれましては、2005年に公布された上記遺伝子組み換え作物栽培規制条例に則り、そのような要請を受け入れないよう強くお願い申し上げます。 
 なお、道立総合研究機構には、「北海道農業者の会」からの要望を受け入れないよう申し入れるとともに、要望書を受け取ったかどうか、受け取っている場合はどのような内容だったか、同要望書に対しどのように対応したか、あるいはこれからどのように対応する予定かを質問しております。 
以上 
 
 
                 ※「平成26年度道民意識調査」より 
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/ishiki/26chosakekka.htm 
 
 
【問合せ先】 
特定非営利活動法人日本消費者連盟 
〒169-0051東京都新宿区西早稲田1-9-19-207 
Tel 03(5155)4765 Fax 03(5155)4767 
Eメールoffice.j@nishoren.org 
 
<賛同団体>(順不同) 
食の安全・監視市民委員会/国際有機農業映画祭運営委員会/全日本農民組合連合会/北海道農民連盟/食政策センター・ビジョン21/NPO法人日本有機農業研究会/特定非営利活動法人APLA/置賜百姓交流会/有限会社朝日ヶ池農場/菅野農園/アジア農民交流センター/特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター/企業組合しらたかノラの会/上越有機農業研究会/星の谷ファーム/みやもと農園/有機農業ネットワーク神奈川/農業生産法人なないろ畑株式会社/はだの有機栽培クラブ/湘南ほっと農園/すどう農園/東京都地域消費者団体連絡会/港区消費者の会/渋谷区くらいの会/新宿アクティ/麦の会/品川区消費者の会/杉並区消費者の会/中央区消費者友の会/目黒区消費者友の会/西東京市消費者の会/自治市民の会/提携米研究会/農と食の環境フォーラム/ふぇみん婦人民主クラブ/遺伝子組換え食品を考える中部の会/土こやしの会/食と環境の未来ネット/道長/わっぱの会/グリーンコープ共同体/パルシステム生活協同組合連合会/生活協同組合パルシステム東京/なのはな生活協同組合/生活協同組合ナチュラルコープヨコハマ/生活協同組合あいコープみやぎ/株式会社大地を守る会/バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックス/ルナ・オーガニック・インスティテュート/国際環境NGOグリーンピース・ジャパン/NPO法人秀明自然農法ネットワーク/奈良よつ葉牛乳を飲む会/農民運動全国連合会/一般社団法人農民連食品分析センター/ネットワーク農縁/農事組合法人庄内協同ファーム/市民バイオテクノロジー情報室/DNA問題研究会(以上、58団体) 


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