2015年06月08日14時38分掲載  無料記事
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反戦・平和

「菅さん、たくさんいるって誰なの?」「それは3人です」と若手弁護士の会

 「明日の自由を守る若手弁護士の会」というサイトがおもしろい。最近のトピックスは、菅官房長官が「(安保法案について)「全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいる」と発言した件。衆院憲法審査会に出席した3人の憲法学者が、自民・公明推薦の長谷部恭男早稲田大学教授を含め、そろって「安保法案は違憲」と発言したことを受けての記者会見での言葉だ。早速若手弁護士がリストアップしたところ、どう頭をひねっても3人しか出てこなかった。(大野和興) 
 
 衆院憲法審査会で3人の憲法学者が「違憲」発言をしたのが6月4日。ちょうどその前日、参議院議員会館で「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」記者会見が行なわれた。呼びかけ人、賛同人合わせて172人の憲法研究者が名前を連ねた。そのご賛同者は増え続け、現在200人を超えている。 
 
 憲法学者の声明は、安保法制の問題点を厳しく指摘している。まず問題とするのはその政治手法。閣議決定で憲法を変え、米国政府と議会に法制定を約束し既成事実を積み重ねていくやり方は「『国権の最高機関』たる国会の審議をないがしろ」にするもので[憲法に基づく立憲主義をわきまえない]と痛烈に批判している。 
 
 法案の中身については、3点にわたって[憲法9条違反の疑いが濃い]ことを立証している。[歯止めのない集団的自衛権行使につながる]「国際法上違法な武力行使に加担する危険性をはらむ」「自衛隊が米軍などと事実上の『同盟軍』となり、武力行使にまでエスカレーロする危険をはらむ」といったことだ。 
 
 こうした観点にたって、憲法学者の声明は、「国会は安保関連法案を速やかに廃案にすること」「政府は集団的自衛権を決定した2014年7月1日の閣議決定と日米ガイドラインをただちに撤回すること」[国会は拙速な審議と採決を行わないこと]を求めている。声明の全文は末尾に紹介する。 
 
 図は、若手弁護士の会がサイトで紹介した、安保法案「合憲」対「違憲」の天秤。官房長官会見で「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と言う発言があった時に、ある記者から「では、そういう学者のお名前をたくさん挙げていただけますか」という質問が出て、官房長官は答えられなかった。官房長官に代わって法律専門家として答えを出してくれたのがこの図だ。この図では「3人対189人」となっているが、189人の方は今も急速に増えている。 
 
http://www.asuno-jiyuu.com/2015/06/blog-post_5.html 
 
【安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明】 
 
 安倍晋三内閣は、2015年5月14日、多くの人々の反対の声を押し切って、自衛隊法など既存10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と新設の「国際平和支援法案」を閣議決定し、15日に国会に提出した。 
 この二つの法案は、これまで政府が憲法9条の下では違憲としてきた集団的自衛権の行使を可能とし、米国などの軍隊による様々な場合での武力行使に、自衛 隊が地理的限定なく緊密に協力するなど、憲法9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の体制を根底からくつがえすものである。巷間でこれが「戦争法 案」と呼ばれていることには、十分な根拠がある。 
私たち憲法研究者は、以下の理由から、現在、国会で審議が進められているこの法案に反対し、そのすみやかな廃案を求めるものである。 
 
1.法案策定までの手続が立憲主義、国民主権、議会制民主主義に反すること 
 昨年7月1日の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は憲法違反」という60年以上にわたって積み重ねられてきた政府解釈を、国会での審議にもかけずに、ま た国民的議論にも付さずに、一内閣の判断でくつがえしてしまう暴挙であった。日米両政府は、本年4月27日に、現行安保条約の枠組みさえも超える「グロー バルな日米同盟」をうたうものへと「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を改定し、さらに4月29日には、安倍首相が、米国上下両院議員の前での 演説の中で、法案の「この夏までの成立」に言及した。こうした一連の政治手法は、国民主権を踏みにじり、「国権の最高機関」たる国会の審議をないがしろに するものであり、憲法に基づく政治、立憲主義の意義をわきまえないものと言わざるを得ない。 
 
2.法案の内容が憲法9条その他に反すること 
 以下では、法案における憲法9条違反の疑いがとりわけ強い主要な3点について示す。 
(1)歯止めのない「存立危機事態」における集団的自衛権行使 
 自衛隊法と武力攻撃事態法の改正は、「存立危機事態」において自衛隊による武力の行使を規定するが、そのなかでの「我が国と密接な関係にある他国」、 「存立危機武力攻撃」、この攻撃を「排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」などの概念は極めて漠然としておりその範囲は不明確である。この点 は、従来の「自衛権発動の3要件」と比較すると明白である。法案における「存立危機事態」対処は、歯止めのない集団的自衛権行使につながりかねず、憲法9 条に反するものである。 
その際の対処措置を、国だけでなく地方公共団体や指定公共機関にも行わせることも重大な問題をはらんでいる。 
(2)地球のどこででも米軍等に対し「後方支援」で一体的に戦争協力 
 重要影響事態法案における「後方支援活動」と国際平和支援法案における「協力支援活動」は、いずれも他国軍隊に対する自衛隊の支援活動であるが、これら は、活動領域について地理的な限定がなく、「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこでも行われ、従来の周辺事態法やテロ特措法、イラク特措法などで は禁じられていた「弾薬の提供」も可能にするなど、自衛隊が戦闘現場近くで外国の軍隊に緊密に協力して支援活動を行うことが想定されている。これは、もは や「外国の武力行使とは一体化しない」といういわゆる「一体化」論がおよそ成立しないことを意味するものであり、そこでの自衛隊の支援活動は「武力の行 使」に該当し憲法9条1項に違反する。このような違憲かつ危険な活動に自衛隊を送り出すことは、政治の責任の放棄のそしりを免れない。 
国際平和支援法案の支援活動は、与党協議の結果、「例外なき国会事前承認」が求められることとなったが、その歯止めとしての実効性は、国会での審議期間の 短さなどから大いに疑問である。また、重要影響事態法案は、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」というきわめてあいまいな要件で国連決議等の有 無に関わりなく米軍等への支援活動が可能となることから国際法上違法な武力行使に加担する危険性をはらみ、かつ国会による事後承認も許されるという点で大 きな問題がある。 
(3)「武器等防護」で平時から米軍等と「同盟軍」的関係を構築 
 自衛隊法改正案は、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している」米軍等の武器等防護のために自衛隊に武器の使用を認める規定を盛り 込んでいるが、こうした規定は、自衛隊が米軍等と警戒監視活動や軍事演習などで平時から事実上の「同盟軍」的な行動をとることを想定していると言わざるを 得ない。このような活動は、周辺諸国との軍事的緊張を高め、偶発的な武力紛争を誘発しかねず、武力の行使にまでエスカレートする危険をはらむものである。 そこでの武器の使用を現場の判断に任せることもまた、政治の責任の放棄といわざるをえない。 
領域をめぐる紛争や海洋の安全の確保は、本来平和的な外交交渉や警察的活動で対応すべきものである。それこそが、憲法9条の平和主義の志向と合致するものである。 
 
 以上のような憲法上多くの問題点をはらむ安保関連法案を、国会はすみやかに廃案にするべきである。政府は、この法案の前提となっている昨年7月1日の閣 議決定と、日米ガイドラインをただちに撤回すべきである。そして、憲法に基づく政治を担う国家機関としての最低限の責務として、国会にはこのような重大な 問題をはらむ法案の拙速な審議と採決を断じて行わぬよう求める。 
2015年6月3日 
 
呼びかけ人 
 
愛敬浩二(名古屋大学大学院法学研究科教授) 青井未帆(学習院大学大学院法務研究科教授) 麻生多聞(鳴門教育大学大学院学校教育研究科准教授) 飯島 滋明(名古屋学院大学准教授) *石川裕一郎(聖学院大学教授) 石村修(専修大学教授) 植野妙実子(中央大学教授) 植松健一(立命館大学教授) 浦田一郎(明治大学教授) 大久保史郎(立命館大学名誉教授) 大津浩(成城大学教授) 奥野恒久(龍谷大学教授) *小沢隆一(東京慈恵医科大学教授)  上脇博之(神戸学院大学教授) 河上暁弘(広島市立大学平和研究所准教授) 君島東彦(立命館大学教授) 清末愛砂(室蘭工業大学准教授) 小林武(沖縄 大学客員教授) 小松浩(立命館大学教授) 小山剛(慶應大学教授) 斉藤小百合(恵泉女学園大学) *清水雅彦(日本体育大学教授) 隅野隆徳(専修大学名誉教授) 高良鉄美(琉球大学教授) 只野雅人(一橋大学教授) 常岡(乗本)せつ子(フェリス女学院大学) *徳永貴志(和光大学准教授) 仲地博 (沖縄大学教授) 長峯信彦(愛知大学法学部教授) *永山茂樹(東海大学教授) 西原博史(早稲田大学教授) 水島朝穂(早稲田大学教授) 三宅裕一郎 (三重短期大学教授) 本秀紀(名古屋大学教授) 森英樹(名古屋大学名誉教授) 山内敏弘(一橋大学名誉教授) 和田進(神戸大学名誉教授) 渡辺治 (一橋大学名誉教授) 以上38名  *は事務局 


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