2015年06月18日16時39分掲載  無料記事
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経済

戦争と買い物 〜GDPの実質成長率が増加したと報じているが物価上昇を差し引いた実質報酬は去年に比べて低下 しかし、新聞はなぜかこの点に触れず… すでに大本営発表?〜

  内閣府によると今年の1月〜3月の四半期のGDPの実質成長率(物価の変動を除いた数値)は前期(昨年暮れの四半期)から1.0%の伸び、年率に換算すると3.9%増加したとされます。伸びていたんですね、実質のGDPは。しかも、昨年暮れの四半期(10月〜12月)の実質成長率の伸びに続いて二期連続伸びたことから、安倍政権は追い風になったとしたいところでしょう。 
 
  ただし、GDPの6割を占める個人消費は昨年暮れの四半期との比較では0.4%の伸び。GDPの実質成長率が昨年暮れの四半期との比較で1.0%と伸びているのに、個人消費があまり伸びていないのはなぜでしょうか。給料が物価上昇と比べて、伸びていたら実質的な給料UPとなり、物価上昇分より上昇が低ければ実質減収を意味します。給料が増加傾向なら財布のひもも少し緩めてもいいですね。では、どうなんでしょうか、給料の伸びは。 
 
  雇用者の報酬については内閣府によると以下の通りです。 
 
  「2015 年 1-3 月期の雇用者報酬については、「毎月勤労統計」(3 月分)の確報化等を反映した結果、前年同期比では名目 1.4%増、実質▲0.5%と 1 次速報値(名目 1.3%増、実質▲0.6%)からそれぞれ上方改定となった 」 
 
  上方改定と書かれるとなんだか上向いてラッキーな印象ですが、上方改定となったのは一次速報の数値と比べてであって、前年同期比と比べると物価変動を除いた雇用者報酬は▲(マイナス)0.5%と下がっているのです。 
 
  これを簡略化して翻訳すると「去年の1月〜3月の期間と比べると、労働者の実質的な報酬は0・5%下がった」となるわけです。 
 
  つまり、企業の設備投資や値下がりした石油などの買いだめなどでGDPの伸びが増加したものの、実質の雇用者報酬は前年同期比で見ると減っているのです。新聞はなぜか、この点についてはまったく触れていませんね。国民の一番の関心、そして経済の要は国民の給料じゃないでしょうか。 
 
  時々、ニュース等で政府が賃上げを企業に要請しているシーンがありますが、大切なのは上がったかどうかではなく、物価上昇を差し引いた実質賃金の推移です。内閣府のこの発表では2014年の1月から3月の期間と比べて名目上の報酬は1.4%増えていますから、給料が上がったという映像は生み出せますが物価上昇をのぞいた報酬の実態は下がっている、ということなのです。個人消費が伸びない背景にこうした統計的な裏付けがあったということなのです。 
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2015/qe151_2/pdf/qepoint1512.pdf 
 
 
■新聞の翻訳力 
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