2015年07月18日11時19分掲載
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沖縄/日米安保
新外交イニシアティブ(ND)訪米報告会(2)〜沖縄訪米団による訪米行動の意義〜
糸数参院議員に続いて登壇した猿田佐世ND事務局長は、翁長知事及び沖縄訪米団による訪米行動の意義等を説明した。
「私がワシントン滞在中、そして日本に帰ってきてから最も多く受けた質問は『琉球新報も沖縄タイムスも、今回の訪米行動について“非常に成果があった”と大々的に報じていますが、本土メディアは、朝日新聞まで含めて“沖縄冷遇”みたいな感じの報道が多くあります。実際のところ、どうだったのですか?』というものでした。この質問に対する私の答えは『大きな意義があったが、これが生きるか否かは今後次第』です。
私が本土メディアの報道を見て最初に思った感想は『よくもまあ、現場を分かっていない人たちが、こんなにいろんなことを書くよね』というものです。日本に帰ってくると、私たちのワシントン行動に同行していた記者以外の人たちが識者と称していろいろ書いていました。その記事を見ながら『全然違うんだよな』と思ったのです。
『私がこれまで読んできた新聞であれ、雑誌であれ、インターネットのニュースであれ、渦中にいる者からすると、全然真実を伝えていないことがあるんだな。これからは、バイアスがいろいろと掛かっていたり、全然分からないまま記事を書いている人がいるということを理解した上で、情報を手に入れていかなければならないな』と強く思いました」
「翁長知事及び沖縄訪米団による訪米の意義については、ありきたりですが『沖縄県のリーダーたちがアメリカの関係者に対して明確に反対の意思を示したこと』です。本土メディアは『沖縄の思い、通じず』と書きますが、翁長さん自身もアメリカに行ったらすぐに相手方が『辺野古案を止めようと言ってくれるはずだ』と期待していた訳ではありません。そんなに簡単な問題であったら、とっくの昔に終わっているはずです。翁長さんも、反対の意思を伝えたからと言って、アメリカ国務省や国防総省の面談相手が『辺野古案が唯一の選択肢だ』という反応を示すであろうことは、那覇空港を出発する前から分かっているのです。それでいて、本土メディアが『沖縄の思い、通じず』と書くのは目標設定が間違っていると思います」
「今、米軍普天間基地の辺野古移設問題について、ワシントンでどのように扱われているかというと、ワシントンのほとんどの人が問題の存在自体を知らない、それ以前に沖縄が何処にあるのかさえ知らないという状況です。多少問題に関心を持っているアメリカの方々の間には『仲井眞さんという沖縄県知事が、確か2013年に埋め立てしても良いと言ったらしい。沖縄の人が良いと言っているのであれば良いじゃないか』という空気が存在しています。
もちろん、仲井眞さんがどうこう言う前から『辺野古案は日米合意なのだから、辺野古案でいきましょう』という人がそもそも多い訳ですが、何人かの方々、例えば有力者としてはジョン・マケイン上院議員(共和党)や米国防総省に近いランド研究所の研究者も『辺野古反対』と言っています。
特にマケインさんの姿勢は非常に分かり易く、『仲井眞さんが承認するのだったら、良いでしょう』ということで、辺野古案受入れ派に回った人なのです。民主党政権に近いと言われているパトリック・クローニンさん(新アメリカ安全保障センター)もそうで、仲井眞さんが埋立てを承認するまでは『辺野古はちょっと』と仰っていましたが、仲井眞さんの承認を機に辺野古案賛成に回っています。
そこで、現在の沖縄県知事である翁長さんが『仲井眞さんは公約違反しました。私は、辺野古反対を掲げて彼に大差で勝った知事です。沖縄を代表する私が、辺野古NOと言っているのです』ということを伝えたことは、ワシントンの空気を変えるために非常に大きな効果があったと思います。もちろん、それで全員の意見が変わる訳ではありませんし、マケインさんも翁長さんの一言で意見を再び変えた訳ではありません。ただ、パトリック・クローニンさんと面談した沖縄訪米団メンバーから聞いたところによると、『なるほど。今の沖縄は辺野古NOなのですね』と理解を示す変化を見せていたそうです」
「もう1つの意義は、日米合意改定を可能にするための環境醸成の第一歩になったということです。ワシントン、アメリカ全体を見て、沖縄の基地問題はほとんど知られていない問題で、その中で日米関係に専門性を持った人たちの中には『辺野古じゃなくてはならない。安倍政権で実現してほしい』と思っている層がいる訳ですが、それ以外の人が辺野古案を推しているかというと、決してそんなことはありません。そもそも基本的にワシントンのほとんどの人が問題の存在自体を知りませんし、問題を知った米国会議員からは『これは間違いなく正しいことではない』『沖縄に直接見に行ってみたい』『沖縄のことを全く知らなかったことは申し訳なかったけれども、話を聞いてみると、自分が今まで追いかけてきた環境問題と真正面から重なる問題だ。強い問題意識を持った』という意見をたくさん聞きました。
日米合意改定を可能にするための環境醸成の第一歩というのは、ゴリゴリの辺野古派でない人たちを1人1人発掘して育て、直ちに『辺野古NO』ということにならなくても、『辺野古NO』という環境を徐々に醸成していくことです。そのためには環境問題や女性の問題から切り込むとか、保守派の人たちには『アメリカも財政難で基地にお金を使っていられないのではないですか。辺野古新基地の運用費用はアメリカも一部負担しなければならない訳ですから、海兵隊を日本に置いておく余裕なんて無いのでは?』と財政問題から切り込んだりして、各米国会議員が関心を持つテーマに絡めて訴えていく必要があります。
そういう意味で、今回のように55件もの面談が出来る機会などそんなに無い訳で、今回の訪米行動は環境醸成を図っていく第一歩になったと思っています」(つづく)
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