2015年07月29日14時18分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201507291418343
政治
アメリカの国会を見る 遺伝子組み換え食品のラベリングを義務付ける州法を無効にする連邦法が下院で可決
7月23日、ワシントンD.C.の米議会(下院)である法案が可決した。法案のコードネームは「H.R.1599」。なんだか秘密作戦の暗号のようだが、この法案は食品メーカーに対して、遺伝子組み換え作物が含有された食品でもそれをパッケージに表記しなくてもよい、とする法案。
ニューヨーク・タイムズではInside Congressという欄にこの「H.R.1599」が下院で多数決された時の賛成議員と反対議員、そして棄権した議員を全員明記している。賛成票275、反対票150、棄権9.しっかり共和党は赤、民主党は青に色分けまでされているから一目瞭然だ。
http://politics.nytimes.com/congress/votes/114/house/1/462
この欄はOn Passageと書かれていて、現在まだ法制化の途上であることが記されている。下院で可決されても、上院で可決されない限り法制化できないからだ。米国の場合は下院と上院の双方で可決されて初めて、法制化となるが、その順番は問わない。だから、「H.R.1599」の場合は、これから上院での審議と議決が行われることになる。
ところで今、なぜこのような法案が国会に提出されているかというと、州によっては遺伝子組み換え作物を含有する食品に対して、食品メーカーにその明示を義務付ける州法を作成したところが現れはじめたからだ。しかし、もし連邦議会で「H.R.1599」が可決されれば州法を無効化することができる。というのは連邦法が州法に優先するからだ。米憲法にその根拠が書かれている。
「この憲法、これに準拠して制定される合衆国の法律、及び合衆国の権限をもってすでに締結され、また将来締結されるすべての条約は、国の最高の法規である。これによって各州の裁判官は、各州憲法又は州法の中に反対の規定がある場合でも、これに拘束される」(合衆国憲法6条2)
そういうわけで、州法の動きを見て危ういと思った遺伝子組み換え食品を作っている食品会社やその業界団体は大慌てで議員たちに圧力をかけたのだろう。というのはバーモント州では遺伝子組み換え食品のラベリングを義務付けた州法が作られ来年7月から完全に施行されることになっているからだ。
そんなことをしたら、膨大なコストがかかるから食品価格の値上げ要因となり、国民に多大な負担をかけることになる、というのが法案「H.R.1599」の理由だという。賛成票を投じたのは圧倒的に共和党議員だが、共和党議員の中にも反対票を投じた議員もいるし、民主党議員の中にも一部賛成票を投じた議員もいることがニューヨーク・タイムズの報道からわかる。
アメリカの報道を見れば個別議員の投票行動を報じているから、住民たちは政治的な要望があれば議員にすぐにコンタクトができるようにマスメディア自体も制度的にデザインされているようだ。法案提出議員の名前も明示されている。つまり、報道の仕方の中に国民に政治参加を促すものがあることが感じられる。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。