2015年08月10日22時42分掲載  無料記事
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反戦・平和

安保関連法案に反対する被災三県大学教員有志の会

  東日本大震災で被災した東北三県の大学の教員ら有志の会も安保関連法案に反対の声をあげています。東北三県とは福島、宮城、岩手の三県です。 
 
 「安保関連法案に反対する被災三県大学教員有志の会」 
 
安倍政権は自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法等を改正する平和安全法制整備法案及び新規立法である国際平和支援法案(以下「安保関連法案」)について、7月15日の衆議院の委員会に続き、翌16日の衆議院本会議においても採決を強行した。私たちは、憲法の根幹にかかわるこの安保関連法案をこのような仕方で採決することに対して、強く反対を表明する。 
 
 安保関連法案が憲法に違反していることは、ほとんどの憲法学者が等しく認めているところである。憲法学者たちの意見表明が、専門家としての知性と良識にもとづくものであることを疑う理由はない。また、法案の内容をよく知るにつれ、多くの人々も憲法学者の意見を支持し、法案の採決に対して慎重な判断を求めるようになっている。人々の見解が市民としての知性と良識を示すものであることもまた疑う理由はない。しかるに安倍政権は、こうした専門家の声にも市民の声にもいっさい耳を傾けることなく、法案を押し通そうとしている。日本に対する外国の脅威を言いつのることで、立憲主義とそのもとでの民主的議論を踏みにじる現政権の態度はそれ自体、知性と良識によって支えられた市民社会にとっての脅威であると私たちは判断する。 
 
被災地を内に含む東北三県の大学に身を置く私たちは今、心苦しく思っている。東日本大震災においてかけがえのない人を失った人たち、故郷への帰還が今も叶わない人たち、生活の基盤を今も取り戻せない人たち――そうした人たちは、安保関連法案をめぐる動きを伝えるテレビの前で、あるいは新聞の前で何を思うだろうか。 
 
  知性と良識にもとづく民主的議論は、被災地復興のための最も重要な社会的源泉の一つである。民主的議論によって触発される自治と、これによって醸成される市民間の紐帯なくしては、復興がこの社会に生きる私たち全員にとっての課題であることが見失われてしまうだろう。このことは他の脆弱化した地域についても、貧困層の人々の苦境についても当てはまる。被災三県において教育・研究に携わる私たちは、現在そのことを明瞭に再認識し、安倍政権の強引なやり方に強い危惧を覚えている。現政権が立憲主義を踏みにじり、知性と良識を踏みにじったとき、いったいその先に何が起こるのか。知性と良識が法の制定プロセスから排除される前例ができたとき、いったい何が起こるのか。 
 
 私たちは、あの日に始まる苦境に耐えつつ、出口を求め続けている被災者の顔を思い浮かべるとともに、他の多くの脆弱化した地域、人々の呻吟を想像しないではいられない。そして、その苦境をともに乗り越えてゆくための礎となるのは、知性と良識によって支えられた市民間の紐帯に他ならないと強く信ずる。 
 
安保関連法案の可決が知性と良識の否決である限り、私たちは安倍政権のやり方を断じて認めるわけにはいかない。 
 
2015年7月31日 
安保関連法案に反対する被災三県大学教員有志の会 
http://antisrbtohoku.wix.com/manifesto 
 
■安保法案に反対する広島大学人有志の声明 〜昨日原爆から70周年を迎えた広島から〜http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508071338565 
■「安保法制に反対する筑波大学有志の会」 地方の動きから 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508042210402 
■静岡大学教職員組合が「安全保障関連法案」の強行採決に抗議し、廃案を求める声明を出す 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201507231620174 
■安全保障関連法案に反対する大阪市立大学教職員有志の会 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508052331123 


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