2015年10月10日18時41分掲載  無料記事
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反戦・平和

福島から国を動かしていこう!(1)〜福島は怒っている! 戦争させない9条壊すな! 戦争法案NO! 福島県民大集会

 「十分な審議が尽くされていない」として継続審議を求める野党や、国会を取り巻く市民たちの強い反発がある中、衆参両院における与党の強行採決により、安全保障関連法が9月中旬に可決・成立した。 
 安保関連法案が国会で審議入りして以降、国会周辺では廃案を訴える市民団体「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」や学生団体「SEALDs(シールズ)」などによる抗議行動が繰り返し実施されるとともに、これに呼応して全国各地でも抗議行動が行われた訳だが、東日本大震災の被災地で、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染で未だ多くの住民が避難生活を強いられている福島県でも県内各地で抗議行動が取り組まれた。 
 
 その中で、福島県内の労働問題解決などに取り組む「福島県労連」は、9月2日と9日の2日間に「戦争法案ゼッタイ廃案!全国統一行動」と銘打って県内各地で街頭宣伝やビラ配布を実施したほか、参議院での法案審議が大詰めを迎えた9月13日には、福島県庁前に組合員や市民ら約2500人(主催者発表)を集めて「福島は怒っている!戦争させない9条壊すな!戦争法案NO!福島県民大集会」を開催している。 
 大集会には、安保関連法案に反対する市民団体、護憲派団体、労働組合、学生団体のほか、政党関係者、学者、親子連れ、若者、戦争体験者である高齢者など幅広い層が参加していて、法案に対する関心の高さが窺われた。 
 
 大集会における登壇者の訴えや、集会に参加した市民から聞いた声をお伝えしたい。(館山守) 
 
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「戦前、日本は10年に一度、大きな戦争を経験してきました。その中には、集団的自衛権を行使し、地中海まで行った第一次世界大戦もありました。また、先の大戦直前には、日独伊三国軍事同盟を締結して、米英との戦争が避けられない集団的自衛権を結んだということもありました。 
 そして戦後70年間、我々は戦争せずに来たのに、それを安倍首相は破壊しようとしています。アメリカは戦後も10年に一度、大きな戦争を行っていますが、このアメリカの戦争に日本が戦後70年間巻き込まれずにこられたのは憲法第9条があるからにほかなりません。 
 しかし、安倍首相は憲法第9条を無視し国民の声も無視して、今、戦争法案を成立させようとしています。つまり、これは平和主義、立憲主義、民主主義の破壊につながることなのです」(「福島県九条の会」代表の吉原泰助福島大学元学長) 
 
「民主主義は国会の多数決だけで決まるものではなく、私たちは国会の外から、この安保法案に対して反対しているということを訴えて行かなければなりません。 
 万が一、安保法案が成立しても『それでも、この法案には反対だ』という声を上げ続けて、成立した法律を使わせないようにしていく活動を継続していくことが必要です」(「憲法をいかす福島県民の会」呼びかけ人の藤野美都子福島県立医科大学教授) 
 
「今、全国100を超える大学から、およそ1万4千人の大学教員が安保法案反対に立ち上がっています。福島県では、12の大学・短期大学から150人の大学教員や研究者が安保法案反対声明に賛同しています。特に、福島大学では歴代の学長5人が反対声明に賛同しており、同大学の教授も100人以上が安保法案廃案の声を上げています。 
 県民の皆さん、今、県民生活と自由が危機に晒されているのです。福島県では、未だ11万人もの県民が避難生活を送っています。安倍政権が目指すものは、戦前の戦争総動員体制そのものです。しかし、ここにこそ安倍政権の最大の弱点があるのです。それは、生活と自由を守る全国民の運動が安倍政権を完全包囲し、安倍政治に全国民が怒っているということです。 
 民主主義を守る運動は70年前から始まり、脈々と継続されてきています。今、大学生、高校生が先頭を切って『戦争するな』『立憲主義を守れ』と声を上げていますが、私たちも、彼らとともに声を上げ続ける必要があるのです」(「安全保障関連法案に反対する福島県大学・短期大学研究者の会」呼びかけ人の坂本恵福島大学教授) 
 
「安保法案審議中の参議院に対して8月3日現在、全国の地方議会から341件の意見書が提出されています。この意見書のうち、9割に当たる301件は安保法案廃案を求めるか、あるいは、強行採決に反対する内容となっています。これに対して、今国会での安保法案成立を求める意見書は、たった4件です。 
 安保法案に対する政府答弁は、もはや支離滅裂な状態となっています。そして、これにより見えてきたことは、アメリカの意向によって日本の政治が動かされているということです。 
 これと同様のことは、日本の原子力政策についても言えることであり、私たち福島県民はその現実を嫌というほど見せつけられてきています。今こそ、国が地方を動かすのではなく、地方が国を動かしていかなければなりません」(元・三春町長の伊藤寛さん) 
 
「戦前、私は学生でしたが、工場で兵器製造に従事し、勉強する時間はほとんどありませんでした。工場では旋盤工や鋳型作りといった単純作業を行い、空襲があると防空頭巾を被って逃げ回る日々でした。 
終戦から50年経ったある会合において、参加者から『自分は回天という人間魚雷に乗って死んでいくところだった』という体験を聞きました。その回天を作っていたのは、実は私自身でした。 
 それまで、私は戦争の被害者だとばかり思っていたのに、加害者であることを知った時、愕然としました。何も知らないということは、本当に恐ろしいことです。私たちが何も言わず、ただ黙っていていいのでしょうか。黙っていることは犯罪だと思います。皆さん、一緒に声を上げましょう」(元・福島県女性団体連絡協議会会長の遠藤宮子さん) 
 
 
「私たち世代は戦争体験をまだ直接聞くことができる機会がありますが、戦後100年経ったら、そういった機会はなくなると思います。 
 私自身、戦争を知らない世代ですが、そういう自分を怖く感じることがあります。例えば『誰とも衝突せず黙っていれば、世の中円満に行く。皆に嫌われたくないから、黙って国の言うことを聞いていればいい』と思ってしまいます。しかし、それで私たちは本当に幸せになれるのでしょうか。今の政治を見ていたら、とてもそんな風には思えません。だから、私はこの法案に反対します。 
 立場や考えはいろいろあると思いますが、今日ここにこうして集まったということは、戦争法案を廃案にしたいという思いは一緒だと思うのです。この思いを福島から政府に叩きつけましょう」(「戦争法案に反対する福島県若者有志の会」の菊池穂奈美さん) 
 
「福島第一原発事故によって、多くの福島県民が被害を受けているのに、国も東京電力も被害の状況を認めない、全く責任を取ろうとしない、こういう態度に凄く怒りを感じています。しかも、国は原子力政策を継続するとしており、原発維持の方針を捨てていません。 
 原発事故から学ぶべき教訓は、経済的利益を優先するのではなく、人の生命や健康を第一に考えるということです。しかし、国はそのような政策を取ろうとしないばかりか、究極の公害、究極の人権侵害である戦争に向かっており、これに非常に怒りを感じています。 
 憲法を守らない政府、そして国に対しては、徹底的に監視していかなければ被害を受けるのは国民です。今こそ、反対の声を上げて、生命や健康を大切にする社会を目指すという大きな目標を掲げていかなければなりません」(弁護士の鈴木雅貴さん) 
 
 
「安倍首相は『国民に安保法案を理解していただくため、一層の説明責任を果たしてまいります』と繰り返しますが、野党議員の追及に対し、なぜ明確な説明ができないのかということを、私たちはしっかりと理解しています。それは、安倍首相が真実を語っていない、語ることができないからなのです。 
 戦地の自衛隊員の安全確保をすることなどできるはずがありません。『後方支援は安全な場所で行われ、万が一の場合には中止や一時撤退するから軍事一体化ではない』と言いますが、そんなことはあり得ません。そして、安倍首相はこうも言います。『国民の生命と財産を守るため、この法案をどうしても成立させて法整備をしなければならない』と。 
 安倍首相に問いたい。他国と自衛隊員の夫や我が子が戦っている最中に、国によって生命や財産が守られていると実感できる親や妻がどこにいるというのですか。戦場にいる友人や恋人、夫の安全を願う人々に向かって『あなたの生命は守られている』と言ったところで、それに納得できるはずはありません。かえって『私の大切な人の生命は本当に守られているのか』と問い返すはずです。たとえ、私たちが知らない自衛隊員が戦地に赴いたとしても、私たちは彼らが殺されず、そして、誰も殺さないことを祈るのです。 
 真の政治は、国民の生命、財産、基本的人権を守ることであり、それを守るための平和な社会を創り出すことなのです。安倍首相の言う『国民の生命と財産を守るため、この安保法案をどうしても成立させたい』という論理は破綻しています。 
 安倍首相に言いたい。首相の務めは、敵対する相手と戦うことではなく、対話できる環境を作るための努力をすること、そして対話を重ねて平和の道を探り実現することです」(日本キリスト教団会津若松栄町教会の片岡輝美さん) 
 
「民主党は、主権者である皆様を守るため、命がけで戦います。野党でも出来ることはあります。なぜなら、皆さんが我々に力を与えてくれるからです。 
 安倍政権は、憲法違反の安保法案をどうして成立させなければいけないのでしょうか。それは、国民に説明する前にアメリカ議会において『この夏までには安保法案を成立させる』と言ったからなのです。 
 そもそも閣議決定のみで集団的自衛権の行使を決定して、憲法解釈を変更するということ自体、立憲主義に反しているのです。このとんでもない悪の戦争法案を成立させようとするなら、この国の民主主義は崩壊してしまいます。今こそ憲法を守り、そして民主主義を守っていこうではありませんか」(民主党・金子恵美衆院議員) 
 
「戦争法案の廃案を求める空前の規模の行動は、安倍政権に脅威を与えています。自民党幹部は『デモに囲まれて採決ができない』とまで言っています。直ちに安倍政権を退陣に追い込み、戦争法案を廃案にしようではありませんか。先般、自衛隊の内部文書が暴露されましたが、戦前のように軍(自衛隊)が暴走し国民と国会を無視しています。 
 安保法案について、安倍首相は『法案が違憲かどうかは、最高裁判所が決めることだ』と言っていますが、元最高裁判所長官でさえ『安保法案は違憲である』と断じているではありませんか。この国は安倍首相の“私物”ではありません。この国の主人公は、一人一人の国民なのです。安倍政権を打倒し、立憲主義、民主主義、平和主義を貫く新しい政治を築いていこうではありませんか」(日本共産党福島県委員会・久保田仁委員長) 
 
「戦争法案によって、今、再び若者や子どもたちに銃を持たせようとすることは断じて許せません。私たち県民の力、そして国民の力で安倍政権打倒のため、戦争法案廃案のために全力で戦いましょう。 
 我々社民党は、これまでの護憲政党として、何としても最後まで戦い抜くつもりです」(社民党福島県連・小川右善代表) 
 
「今の政治は、一言で言えば“野蛮”としか言いようがありません。安保法案に関しては、今、若い人たちが『SEALDs(シールズ)』といった団体を結成し、国会前で活動していて非常に盛り上がっているように感じます。 
 ただ、こういう大きな盛り上がりは長く持続しないと思います。やっぱり、こういうことには波というものがあって、盛り上がりが大きくなればなるほど、熱が冷めていくのも早いからです。たぶん、安倍政権もそのことを見通していると思うので、継続性のあるものにしていってほしいと思います。 
 安保法案のような法律を成立させようとする社会状況は、子どもが通う学校を見ていても感じます。例えば、私が子どもだった頃には、運動会で国歌斉唱や国旗を持って入場行進するということはなく、こういう点は理解できないことだなと思っています。こういうことを教育の場において、子どもが理解しないまま刷り込まれていっているようで、すごく恐怖を感じています。そういう意味では、今の学校行事や教育環境そのものが安保法案につながっているように感じます」(福島市在住・子ども連れの39歳女性) 
 
「安保法案が成立することは、自分の身に降りかかるだけでなく、自分たちの子ども世代にまで続いていく問題だと思うし、次の世代を守るためにも反対の声を上げていかなければならないと考えています。 
 私は福祉施設に勤めており、高齢者から戦争の悲惨さや辛さといった経験談を何度も聞いてきました。そういった経験談を教えてもらった者として、後世に伝えていくためにも、こういった集会の場で声を上げていかなければならないと思っています。そういった思いは、職場の同僚も共通して持っていて、一緒に安保法案反対を訴えていこうとしています」(福島市在住の30代男性) 
 
「戦時中、私は仙台市に住んでいて、仙台空襲を経験し、戦火の中を逃げました。当時を振り返れば、今こうして自分が生きていられることが奇跡的なことだと思っています。だからこそ、私たち大人の責任として、絶対に子どもたちに戦争をさせるような安保法案を成立させてはいけない。 
 今の政治は、とにかく何でも数の論理で押し通そうとしています。昔の自民党の中にはいろんな意見を持った国会議員がいたけれども、今の自民党からはそういった声が全く聞こえてこないというのは一体どういうことなんだと思います」(「福島県女性9条と24条の会」会員の75歳女性) 
 
「私は、いわき市で安保法案反対を訴える活動を仲間たちと継続的に行っています。街頭で署名活動を行っていると、ほとんどの女性が署名してくれますし、特に小さい子どもを持つ母親が『とんでもない』『ヤダね』と言いながら署名し、ときにはこちらが励まされることもあります。いわき市で共に活動する仲間たちと安保法案の問題を話し合っていても『戦争につながる法律なのに、政府はそうではないと言い張り、デタラメな嘘をついている』と皆怒っていて、それが行動の原点になっています。 
 この集会の状況について『福島でも平和への願いを込め、これほどの参加者が集まって、安保法案反対の声を上げたんだ』ということを他県の多くの人に知ってもらえるように、私が行く先々で伝えていきたいと思います」(いわき市在住の74歳男性)(続く) 


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