2015年10月27日23時44分掲載  無料記事
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環境

全国災対連ニュース第109号(2015年10月9日発行)

≪復興庁から概算要求の説明受け、被災者支援を要請≫ 
 
 全国災対連は、10月6日に第4回拡大世話人会を開催し、関東・東北豪雨災害や火山噴火などの状況を交流するとともに、11月に開催する全国交流集会のとりくみについて議論しました。 
 なお、会議の前段に東日本大震災の復興事業にかかる概算要求について復興庁から説明を受け、要請を行いました。衆議院第2議員会館で11時から行った復興庁への要請は、全国災対連からは、川村事務局長をはじめ宮城県民センターの綱島代表、宮城災対連の鈴木代表、福島民医連の佐藤さんほか5人が参加しました。復興庁は予算会計班の前田企画官ほか4人が対応しました。 
 冒頭、復興庁の前田企画官が「平成28年度復興庁概算要求のポイント」(復興庁HPに掲載)にもとづいて、被災者支援や住宅再建・復興まちづくり、産業・生業の再生、「新しい東北」の創造、原子力災害からの復興・再生について説明。 
 特に「被災者支援総合交付金」について、28年度の重点事業として、今年度の59億円から228億円と大幅に増額要求し、心の復興やコミュニティー形成支援などを自治体からの要望にもとづいて自治体ごとの総額として支援する予定との説明がありました。 
(○は災対連、●は復興庁) 
 
≪市町村が柔軟に活用できる「総合交付金」の拡充を要求・復興庁≫ 
 
○復興集中期間は今年度までだが、遅れており復興は終わっていない。 
 
●生活支援は重要と認識。復興のステージの進展により、要望も変化しているが、応えられるように努めていきたい。 
 
○人の住まないところにも防潮堤が作られている。「刑務所の中にいるようだ」の声もあり、防潮堤の建設で住まなくなるなど根本問題。景観も損なわれるものであり、復興庁として頑張ってほしい。 
 
○仮設住宅にまだ4割が残っている。災害公営住宅の建設は2017年度までかかるのではないか。一方でズサンな建設による排水管詰まりなどの欠陥もでている。高齢者が多く、4階だとエレベーターがないと住めない。現地とのすり合わせが必要。自治会長が決まらないなどコミュニティーの形成が難しい問題もある。学校敷地の仮設では子供も大変だが、被災者も「子供たちに申し訳ない」などのストレスがあり、丁寧な対応が必要だ。心のケアでは、地域の被災者が分散しており民生委員が機能不全になっている。民生委員を軸にしたとりくみが必要ではないか。仮設住宅の5年終了にあたって、宮城では5年経過後の転居見通しがあれば延長可能だが、見通しがないと追い出される。パーソナルサポートセンターに委託して支援しているが成果は上がっていない。子供の保育所や就労場所など、生活再建の主体者を軸にした対応が必要だ。 
 
●ご指摘の点は承知している。生活支援については市町村が中心となる。国の事業は従来、国が細かく基準を示したりしていたが、地方の実情に応じたものとするようにしている。例えば防潮堤の高さについては、当該地域にお住まいの方々の気持ちの変化もあると聞いている。市町村で合意形成できたものから実施していると聞いている。地元の方々が合意されたものをつくるという立場であり、国が一方的に決めているものではない。それぞれの市町村の復興計画に基づき、申請されたものに予算をつけている。民生委員の問題は難しいが、そういう問題を含めて総合交付金で各市町村の要望に基づいた対応ができるのではないだろうか。 
 
○仮設住宅では公営住宅への転居などで自治会が成り立たない状況。新しい公営住宅でもできていない。「見守り」が大事という点では同じ立場を確認したい。支援員の予算は? 
 
●仮設住宅などの「見守り」については総合交付金で対応する。交付金は国があらかじめ使途を決めずに、メニューを示して市町村がやりたい事業について総額を交付することになる。柔軟に対応できるもの。 
 
○公営住宅の家賃が負担できずに仮設に残らざるを得ないものがいるが軽減できないか。 
 
●その問題は市町村も悩んでいると聞いている。最後は住宅費用の支援として社会保障につなぐことになるが、阪神・淡路大震災などの事例も参考にして、地元の声をよく聞いていきたい。 
 
○土地代や建設費で公営住宅の家賃は高くなるが、周りのアパートより高いのではないか。生活保護になると自治体予算がふくらむ。住宅補助で生活再建できれば押えられる。 
 
●今までご自宅で家賃ゼロの方が借家に引っ越すことになるので負担感はあると思う。市町村ごとに立地条件などいろいろ違うのではないか。極端に高い家賃があるのかは、実情を国土交通省に聞いてみたいと思う。被災者の復興住宅などの問題は、まずは被災者と市町村の話し合いが第一。我々も寄り添って話を聞きたい。 
 
○グループ補助金は継続するということか。 
 
●そうだ。 
 
○グループにならない事業所への支援はできないか。 
 
●災害時の支援について昔は、個人財産への支援はなかったが、阪神・淡路大震災をきっかけに個人への支援も創設された。事業者個人への支援は無利子や低利の融資が基本だが、グループという位置づけでこの制度ができている。 
 
○被災者の今の生活がどうなっているのか。住宅所有と生活水準での機械的な切り捨ては許されない。自治体職員も悩んでいる。 
 
●現場自治体の方が悩んでいるというのはそうだと思う。復興庁では被災者の支援については被災者支援班がどういう支援ができるか、現場を含め、話を聞いて検討している。 
 
○福島の再生加速というが、避難解除と住めることとは別。帰還促進が一方的なものとなってはいけない。 
 
●放射能は目に見えない。除染を進めており、科学的な知見などを踏まえ実情に応じて指示を解除していると思うが、個々の方々が安心して生活できると判断されるのは別の問題。一方的に帰還を押しつけるものではない。避難されている方ともよく話し合いをすることが大事。例えば自治体が復興拠点というものを決めて、まずは、そこを重点に除染や環境整備を実施することも考えている。そこで実際に安心できるという判断ができれば帰還につながると思う。 
 
○復興道路を整備しても、高齢者に車はないがどうするのか。 
 
●高齢者の交通確保は被災地に限らず大事な問題である。被災地でのコミュニティーバスの助成などは継続する。 
 
○グループ補助金の下限を下げられないか。移動商店などは大変。 
 
●買い物の支援も大事だと思う。民間レベルではあるが、高台移転とかで地元スーパーなどが支援している例もある。市町村が横の連携でそうした事例を手掛かりによい方法を検討できればと思う。 
 
○概算要求の段階の話だが、6月の閣議決定もあり、満額査定されると理解していいのか。 
 
●査定はきびしい。例えば要求している事業もやり方を効率的に変えることが可能なら削減できるという査定などには応じることも考えられる。 
 
○岩手90億円、宮城80億円、福島50億円の地元負担のしわ寄せはどうなるのか。 
 
●基幹事業は引き続き全額国負担であるが、道路などの一部の事業で1%程度が地元負担となる場合があるが地元も受け入れられる水準と聞いている。 
 
 最後に、川村事務局長が「被災者本位の復興が必要との認識は一致している。被災者が自ら命を絶つことのないよう引き続きの努力を求める」と述べて要請を終わりました。 
以上 
 
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