2015年11月01日22時28分掲載
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沖縄/日米安保
「沖縄・福島連帯する郡山の会」が沖縄連帯交流ツアーを実施
辺野古新基地建設を阻止のため「オール沖縄」で闘う沖縄県民と連帯して主権と民主主義を守ることを目的に、福島県郡山市で今年5月に発足した「沖縄・福島連帯する郡山の会」(以下、郡山の会)は、10月6日から8日までの3日間、沖縄県民との交流や米軍基地などの視察を目的として「沖縄連帯交流ツアー」を実施した。
福島県在住者を中心に参加した総勢37人の顔ぶれの中には、福島第一原発事故に伴い発生した諸問題の解決に取り組む福島県労連議長の斎藤富春さんの姿も。ツアーに参加した理由について、斎藤さんは次のように語っている。
「東日本大震災に伴う福島第一原発事故以降、福島県労連などが中心となって『ふくしま復興共同センター』を立ち上げ、この間、『オール福島』として県内の原発事故問題に取り組んできました。その運動を続けていく中で、オール沖縄の運動を実際に現地に行って目にしたり、肌で感じて学ぶべきなのではないかと考えていました。そこに郡山の会主催によるツアーの存在を知りましたので、沖縄の現状を知る良い機会だと思い、参加したのです」
<名護市辺野古区を訪問>
郡山の会は、沖縄県訪問2日目の10月7日、米軍普天間基地の移転先とされている名護市辺野古区を訪れた。
沖縄県が辺野古埋立て承認取り消しに向けて国側(沖縄防衛局)の意見を聞く「聴聞」手続きの日と重なったこの日、辺野古現地の闘いはどういう様子だったのか。斎藤さんは次のように語っていた。
「辺野古訪問では当初、埋立て予定地となっている沖合に船を出してもらう計画だったのですが、台風の影響で沖合に出ることはできませんでした。そのため陸地から、埋立て予定地の辺野古沖が見える場所と、米軍キャンプ・シュワブの2カ所を視察しました。
キャンプ・シュワブ正門前は、民間警備会社の警備員複数人が前面に立ち、その後ろに警察官がいるという状況で、彼らに対峙するように、キャンプ・シュワブ正門前でテントをいくつか張り、埋立て反対を訴えて座り込みを続ける沖縄の方々と交流しました。その中で、彼らは『翁長知事は我々が支えなければならない』と訴えていました」
「辺野古訪問で印象深かった出来事は、私たちが同地を離れようとした際、突然、現地の人たちが三線の音色に合わせて踊り出したことです。これは、私たちのように県外から来た者に対し、特別に行ってくれたということではなく、普段の運動の最中においても行っているということでした。
私はその様子を見たとき、沖縄県民の『どんなことがあっても決してくじけず、常に前を向いて進んで行くんだ』という強い意志と楽天性を感じましたし、ある種の文化、すなわち戦後何十年間にも亘って沖縄県が置かれてきた苦難の歴史の中で積み重ねてきた経験によって培われた強さ、懐の深さ、度量の広さというものを感じました」
「ヘリ基地反対協共同代表の安次富浩さんから辺野古に関する説明を受けました。
まず始めに安次富さんは、沖縄県の海がいかに貴重な海であるかということを強調していました。沖縄県は北緯26度付近に位置しているのですが、この緯度に位置する陸地はほとんどが砂漠地帯ということのようです。
そういう緯度にあって、沖縄県は亜熱帯気候で、陸地には固有種が数多く生息しており、さらに周辺海域には5300種もの海洋生物がいるとのことでした。沖縄県の地理的状況を考えた場合、このような自然環境と多様な生物に恵まれているということは奇跡のようであり、まさに宝石のような存在であると語っていました」
「続いて安次富さんから、普天間基地の移転に関する説明を受けました。普天間基地移転について、私たち県外の者が考えるイメージは、普天間基地を辺野古にそのままスライドさせるというように考えてしまいがちですが、安次富氏の説明による辺野古への基地移転は全く違っていました。
辺野古に計画されている基地建設は、計画では埋め立てによって海抜10メートルほどまでかさ上げするのですが、これには2100万立方メートルの土砂が必要とされます。すなわち、10トントラックで350万台分、那覇〜札幌間にこの10トントラックを並べると、実に12列分にもなるという、とてつもない量なのです。
これだけ大量の土砂が必要になるのですから、九州地方を始め、日本全国から土砂を運搬しなければならず、そうなると自然との関係において問題が生じてきます。というのも、他県から運び込まれた土砂によって、沖縄県以外に生息する生物が入ってくる可能性があるのです。
ですから、辺野古に米軍基地を建設するということは、自然豊かな海を埋め立てることによる自然破壊とともに、埋立てのための土砂を他県から持ち込むことによる生態系の破壊という二重の環境破壊を及ぼすことになる訳です」
<沖縄経済の現状>
本土に住む人たちは「沖縄県は、米軍基地があることによって雇用や税収入が安定し、県民生活にとってはプラスの面もある」と考えてしまいがちだが、実態はどうなのか。
斎藤さんたちが現地の方から聞いた話によると、米軍基地が存在すること方が沖縄経済にとって弊害なのだそうだ。話をまとめると次のようになる。
1 国から沖縄県に支出される交付金 < 国が沖縄県から徴収する税金
沖縄県は、米軍基地が存在するによって莫大な交付金が国から出ているように感じてしまいがちだが、全国の都道府県の中では決して上位にいる訳ではない。
例えば、2002年から2011年まで、交付金を含めて国から沖縄県に対して組んだ予算は2兆4930億円、全国16位である。
これに対して、沖縄県が国から徴収された税金額は2兆6080億円。交付金の額に比べて約1,150億円も多く国から徴収されている。
2 基地返還前の経済波及効果 < 基地返還後の経済波及効果
沖縄県では、1987年に米軍関連施設のあった牧港住宅地区という跡地を再開発し、商業施設や住宅施設が集まった地区「那覇副都心」が完成した。この米軍関連施設が存在していたときと、再開発後を比べると次のようになる。
○直接経済効果=約32倍(52億円→1,634億円)
○税収=約31倍(6億円→199億円)
○生産誘発額=約28倍(57億円→1,624億円)
○誘発雇用人数=約34倍(485人→1万6,475人)
○雇用者実数=約93倍(168人→1万5,560人)
3 基地関連収入 < 観光収入
2010年度の沖縄の県民総所得は3兆9,490億円。
このうち基地関連収入は2086億円(全体の5.3パーセント)で、観光収入は4025億円(全体の10.2パーセント)。
このように、基地が存在するからといって必ずしも沖縄の経済振興につながっているとは言い難い結果が数字の上からもはっきりと出ている。かえって、基地があること自体が沖縄経済の発展には阻害要因になっている状況は明々白々だ。
このような結果に、沖縄県の経済界から「沖縄県に基地はいらない」との声が出てくるのは当然の成り行きであろう。
<基地と原発は、共に地元経済の発展を阻害している>
沖縄連帯交流ツアーを終えて福島に戻った斎藤さんは、現地を見てきた感想を次のように語った。
「沖縄の現地を見て、現地の人から話を聞いて思ったことは、基地があるから経済が発展する訳ではないということと、原発に関しても同じことが言えるということでした。
原発を立地することで交付金を受けることはできますが、原発があるからといって地域経済の発展につながるという訳ではないのです。まして、ひとたび原発事故が発生すれば、今回のようにとてつもない被害を受けることになります。そういう意味では、地域経済というものは、第一次産業からしっかりと作り上げていかないと持続的な経済というものはできないと思うのです。
沖縄県の基地問題と福島県の原発問題を経済面から考えていくと、両県の状況や歩むべき道を理解することにつながっていくのではないかと思いました」
なお、斎藤さんは、福島県内での今後の取組について、
「オール福島が目指す到達点は、現在県内に10基存在する原発を全て廃炉にすることです。既に福島第一原発の6基は廃炉にすることが決まっていますが、福島第二原発の4基については未定のままで、廃炉にするともしないとも決まっていません。この点は、全国の皆さんが意外と知らないことなのです。この県内の原発廃炉問題について、安倍政権は7月16日に『長期エネルギー需給見通し』を正式決定しました。この計画は、2030年の電源構成における原発比率を20〜22パーセントとするもので、要するに原発を永久に使い続けるという計画です。仮に、廃炉が決定した原発を除き、全国に存在する原発43基全てを再稼動させても15パーセント程度ですから、40年超えの老朽原発を再稼動するか、新増設しない限り、成り立たない枠組みです。私たちは、去る6月26日の経産省との交渉で『福島第二原発4基が、この計画に含まれているのか』と追及しましたが、経産省は『第二原発は入っているとも、いないとも言えない』と回答し、『対象にはしない』とは明言しませんでした。この経産省の発言が意味するところは、福島第二原発が既に国のエネルギー政策の中に入っており、再稼動させるスタンスであることが間違いないということを示しているのです。こういった福島県内の原発の先行きについては福島県民が知らないままでいるので、この点は訴えていかなければならないと思っています」と語っている。
筆者には、「沖縄県の状況を知りたいと思うのであれば、現地を実際に見ることが一番効果がある」「“福島県に原発はいらない”という『オール福島』の願いと、“沖縄県に米軍基地はいらない”と訴える『オール沖縄』の願いは、お互いに通じ合うところがあるのではないか」という斎藤さんの言葉が強く印象に残った。(館山守)
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