2015年11月03日17時51分掲載
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北朝鮮
日中韓の首脳会談・・・ピョンヤンでもいろいろ動きが
11月1日は日本、中国、韓国の首脳による久々の3国会談、翌2日は日韓会談である。場所はいずれもソウル。中身や結果はマスコミの報道に譲るとして、その北側の方にも気になる動きが出てきた。
ご存じのとおり、北朝鮮の朝鮮労働党は10月30日、来年5月に36年ぶりの党大会を開くと明らかにした。その発表の20日前には、関係がぎくしゃくしていた中国共産党の劉雲山・政治局常務委員(序列5位)と金正恩第一書記が会談し、両国の関係強化で合意している。北朝鮮の体制固めの一連の動きと見られているが、朝中会談の報道には、そのことに関連して興味深い点があった。
1つは、経済。
劉氏は会談で、北朝鮮が、
「経済発展と人民生活の向上をはじめ各分野において大きな成果を収めた」(朝鮮中央通信)
「経済発展・民生改善などの面で積極的進展を収めている」(新華社通信)と評価する発言をした。
国連の食料支援を受け続けている状態の国の経済であり、その絶対的レベルはまだまだ大変だが、ここ数年、日本のメディアでも報じられてきた経済改革が、一定の結果を出しているということだろう。
2013年の夏に北朝鮮を訪問した日本の研究者は、
「中国の改革開放が農業改革から始まったのと似ている」と当時話していた。彼は「田舎の視察に行ったとき、夜8時の真っ暗な中から、ぞろぞろ農民が出てきた。水やりや草取りをしていたのだ。朝鮮の人々がこんな時間まで働いているのは見たことがない」と驚いたという。農民が自由に販売できる作物の割合を当局が増やしたことが、労働意欲を刺激し高めているというわけだ。
中国の外交筋によると、
「今の北朝鮮は1970年代、80年代の中国と同じ。経済の『自由化』で、国民は恩恵を受け始めている。地方に行くと食料の配給はピョンヤンと比べ少なく、人々はピョンヤン以上に物々交換や様々な取引で生活を賄っているが、それへの取り締まりが金正恩政権になって緩くなり、歓迎されている。今後、さらに自由化、経済の対外開放を検討する声もある」という。
もう1つ、2人の会談で注目されたのは、北朝鮮の核問題。
中国の新華社通信は、劉氏が次のように述べたと報じた。
「中国は半島の平和・安定の維持を堅持し、半島の非核化目標を堅持し、対話と協議による問題の解決を堅持し、今後もそのためにしかるべき役割を果たす。我々は朝鮮と共に努力し、6カ国協議を早期に再開することを願っている」
また、金第一書記が「朝鮮は、引き続き北南関係の改善と半島情勢の安定維持のため努力する。関係各国の共同の努力を希望する」と応じたとも報じた。
ところが、北朝鮮の朝鮮中央通信には、この問題での報道が抜けている。北朝鮮の核兵器への固執、また中国側への不信・反発の反映だろうか。
北朝鮮側の報道には、金第一書記のこんな発言が紹介されている。
「(朝中友好の)伝統は、歴史の本や教科書に記録するのにとどまるのではなく、実践で継承し、輝かしていかなければならない」
これは、逆に読めば「両国・両党の友好は昔の話。この間、まさにお寒い関係になっていた」ということであり、この言い回しには金第一書記の不満が滲んで聞こえる。
来年上半期には金第一書記が訪中するという報道もある。これからの1年、朝鮮半島ではまた大きな展開がありそうだ。(西条節夫)
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