2015年11月20日21時54分掲載
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遺伝子組み換え/ゲノム編集
米国食品医薬品局(FDA) GMサケを「安全」として承認 200万人の反対の声を無視
米国食品医薬品局(FDA)は11月19日、「成長が早い」というアクアバウンティ社の遺伝子組み換え(GM)サケを食べても安全であるとして承認した。過去最大の200万人が承認反対の意見をFDAに提出していた。このアクアバウンティのGMサケは、日本では承認申請されていない。生産規模からしても、このGMサケがすぐに日本の食卓に上る可能性は微妙だが、このGMサケを手初めとして、GM魚やGM動物(肉)の商業的な販売が取りざたされてくる可能性がある。(有機農業ニュースクリップ)
FDAは、組み込まれたDNAが世代間で安定していて、栄養的にも問題ないと判断したとしている。
FDAはまた、GM動物に組み込まれるDNAが、連邦食品医薬品化粧品法の動物薬の規定と合致するため、この動物薬の規定でGM動物を管理するとした。
FDAはまた、消費者の義務的なGM表示要求の声の高まりを考慮し、GMサケととともに、GM作物由来成分を含む食品の自主的なGM表示に関する2つガイダンスの草案を公表し意見募集を始めるともしている。しかし、強制力を持たないガイダンスによる表示が、どこまで実効性を確保できるか大きな疑問が残る。
◆FDAが示した表示例(案)
“Not genetically engineered.”
「遺伝子組み換えではない」
“Not genetically modified through the use of
modern biotechnology.”
「バイオテクノロジーを用いた遺伝子組み換えではない」
“We do not use Atlantic salmon produced using
modern biotechnology.”
「バイオテクノロジーを使って生産される大西洋サケ不使用」
● 重大な環境影響 天然サケは絶滅の可能性も指摘
アクアバウンティのGMサケは、陸上の隔離した施設で採卵、養殖されるとしている。しかし、GMサケが海に逃げ出した場合、天然のサケは十数代で絶滅すると試算されている程に、環境への影響は大きいと見られている。FDAは、このGMサケは不妊だとしているが、このGMサケが他のサケと交雑の可能性がある、とが指摘されている。
FDAは、このGMサケの物理的封じ込め措置は十分であると判断できるとした。しかし、米国内での養殖を認めないともしている。
・FDA, 2015-11-19
FDA takes several actions involving genetically
engineered plants and animals for food
http://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/4131/fda-approves-first-genetically-engineered-animal-for-human-consumption-over-the-objections-of-millions
・Royal Society, 2013-5-23
Hybridization between genetically modified Atlantic salmon
and wild brown trout reveals novel ecological interactions
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/280/1763/20131047.full.pdf+html
このGMサケは、カナダで採卵し、パナマの山地に設けられた施設で養殖されるという。FDAの認定の一方で、米国の食品安全センター(CFS:Center for Food Safety)などから封じ込め措置が不十分だと指摘されている。アクアバウンティは2013年、パナマのGMサケの養魚場が環境法違反したとして約1万ドルの罰金刑を受けている。英国のガーディアン紙は2013年、パナマの標高1500mの山中にある、かなり「貧弱」に見える養魚施設を映像つきで報じている。外観からは、厳重な封じ込め措置がとられているとは見えそうもない施設だ。
・Guardian, 2013-4-24
GM salmon's global HQ −
1,500m high in the Panamanian rainforest
www.theguardian.com/environment/2013/apr/24/genetically-modified-salmon-aquabounty-panama-united-states
ロイターによれば、このGMサケが一般に販売されるには2年かかると見られているという。しかし、米国のセーフウェイ、クローガーなどの一部の大手食品チェーンは、GMサケの販売はしないと明言している。すでに米国ではGMサケの不買運動が展開され、約9千の食料品店やレストランなどが取り扱わないことを宣言している。米国消費者のGM離れが顕著になっている中、どのように販売されるか不透明だ。
・Reuters, 2015-11-19
U.S. clears genetically modified salmon for
human consumption
http://www.reuters.com/article/idUSL1N13E1X620151119
● 市民団体は承認取り消し訴訟を準備
FDAの承認を受けて、しみんの大きな反対の声を背景にした米国の市民団体や環境団体は19日、即座に承認反対の声明を出した。
この間一貫して遺伝子組み換え食品に反対してきた食品安全センターは19日、承認は環境に深刻な影響があり、FDAは市民を保護する義務を怠った、と承認を非難する声明を出した。その中で、他の反対している団体と協力して、承認取り消しを求めて提訴する方針を明らかにした。
食品安全センターとともに承認に反対してきたFood & Water
Watch も19日、GMサケの販売阻止に向けてあらゆる手段を検討しているとの声明を発表した。また、オバマ大統領が、この承認を覆すよう訴えるとしている。
大地の友(FoE:Friends of the Earth)も19日、承認反対の声明を発表し、このGMサケの承認が、開発中の35種に上るGM魚承認の先例となるとし、GMサケの販売や提供拒否宣言の運動を続けるとしている。
カナダのGM反対の運動を続けているカナダ・バイオテクノロジー行動ネットワーク(CBAN)は19日、環境に重大な脅威をもたらす懸念があるとして承認に反対する声明を出した。アクアバウンティは、カナダのプリンス・エドワード島に採卵施設を設けている。カナダ政府は、この施設での採卵とパナマへの移出を承認している。CBANは2014年1月、この承認の取り消しを求めて提訴し、裁判で争っている。CBANは、なぜ、米国で認められないGMサケの商業生産が、カナダでは認められるのか、と疑問を投げかけている。
・Center for Food Safety, 2015-11-19
FDA Approves First Genetically Engineered Animal for
Human Consumption Over the Objections of Millions
http://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/4131/fda-approves-first-genetically-engineered-animal-for-human-consumption-over-the-objections-of-millions
・Food and Water Watch, 2015-11-19
FDA Approves Unlabeled GMO Salmon Despite Widespread
Opposition from Scientists, Consumers and Members of
Congress
http://www.foodandwaterwatch.org/news/fda-approves-unlabeled-gmo-salmon-despite-widespread-opposition-scientists-consumers-and
・Friends of the Earth, 2015-11-19
FDA's approval of GMO salmon denounced
http://www.foe.org/news/news-releases/2015-11-fdas-approval-of-gmo-salmon-denounced
・Canadian Biotechnology Action Network
Canadian Groups Concerned as US Approves GM Salmon -
Canada to produce GM fish eggs
http://www.cban.ca/Press/Press-Releases/Canadian-Groups-Concerned-as-US-Approves-GM-Salmon-Canada-to-produce-GM-fish-eggs
◆アクアバウンティ
GMサケを開発したアクアバウンティは2013年、米国バイオ企業のIntrexon社に買収されている。Intrexonは、GMリンゴのオカナガン、GM昆虫のオキシテック(英)も買収し傘下に納めている。
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