2015年11月21日23時08分掲載
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国際
サウジアラビアが外国メディアに資金援助 サウジアラビア寄りの報道を促す
ジャカルタポストによると、サウジアラビアが外国メディアに資金を投じて、自国に有利な報道をするように促しているという。情報源はウィキリークス。記事では経営難に陥ったレバノンのテレビ局がサウジアラビアから、サウジアラビアよりの報道をすることを約束に、200万ドル(2億円以上)の資金援助を受けたとされる。
記事によればサウジアラビアの動機は敵対するシーア派のイランの影響力を削ぎ、中東でスンニ派の勢力を強めたい意向があるとされる。これまでの報道なども参考に入れれば中東以外にも多くの国々のメディアにオイルマネーが注がれて報道をサウジアラビアよりに改変しているらしい。テロとオイルマネーのつながりは国連で緊急のテーマになっており、今後さまざまな国で実態が検証されることになりそうだ。
ウィキリークスが以前、暴露した米政府の外電によればサウジアラビア政府は米国にイラン空爆を執拗に進言していたとされる。イランが核武装すればサウジアラビアも負けてはいられなくなるからだろう。イランを空爆することになった場合、サウジアラビアはイスラエルに領空を使わせることを許可する方針だったことも報じられている。
http://www.thejakartapost.com/news/2015/06/24/saudi-cables-suggest-money-links-with-media.html
サウジアラビアについては同じスンニ派のイスラム原理主義組織を支援しているとの批判が西側諸国にこれまでにも根強くあった。現在、アメリカの司法当局がサウジアラビアの王族の要人がテロリストグループ、アルカイダに献金していた疑いを持っていて取り調べを進めている。それらのことと関係しているかどうか不明だが、今年に入り、ドイツがサウジアラビアに兵器を売却するのをとりやめ、スウェーデンもとりやめている。ドイツのメルケル首相はサウジアラビアにドイツ製の武器売却をやめる理由は中東地域の不安定さを増すことになるからだ、と伝えたとされる。
すでに2012年10月の段階で、サウジアラビアとカタールがテコ入れした兵器は穏健派ではなく、過激派の聖戦主義者(ジハーディスト)に渡っていることがニューヨーク・タイムズで報告されている。つまり、ドイツ政府が今年に入って兵器をサウジアラビアに売却するのをやめる決定をしたのだが、それまでイスラム原理主義勢力に兵器をテコ入れしているサウジアラビア政府にドイツは兵器を売却して国益を増やしてきたのである。ドイツはナチスの過去を立派に反省したとか、欧州の優等生などともてはやされているが、苦境に沈むギリシアにも、ジハーディストを支援するサウジアラビアにも恥じることなく兵器を輸出して国家経済を潤わせてきた国である。
http://www.nytimes.com/2012/10/15/world/middleeast/jihadists-receiving-most-arms-sent-to-syrian-rebels.html?pagewanted=all&_r=1
サウジアラビアがアルカイダを支援する動機は双方ともにスンニ派であり、イランが支援するイラク政府もシリアのアサド政権もともにシーア派系であり対立していることである。したがって対抗勢力であるアルカイダやISISに資金援助をすることはサウジアラビアにとっては理にかなっていることだった。シリアで2011年に内戦が始まったとき、まっさきに兵器や資金を投じて反政府派軍事勢力をテコ入れしたのがサウジアラビアと米国であり、そのことが結局、戦火を拡大し、400万人を越える難民を生み出すことになった。米国は当初は自由シリア軍はアルカイダとなんの関係もないと主張していたが、のちに米国がテコ入れした兵器がイスラム原理主義勢力に渡っていたことを認めるようになった。
■S. Arabia manipulating world media with petro-dollars ; Reporters Without Borders
https://www.rt.com/news/272713-saudi-media-freedom-propoganda/
■Who's Funding ISIS? Wealthy Gulf 'Angel Investors,' Officials Say
http://www.nbcnews.com/storyline/isis-terror/whos-funding-isis-wealthy-gulf-angel-investors-officials-say-n208006
この記事の情報源は米国の軍事筋だが、サウジアラビアを含めた湾岸諸国のマネーがISISにとって大きな意味を持ったのはとくにISISが立ち上がった時で、それはあたかもウォール街の投資家のマネーが、アップルやグーグルのような新興企業の立ち上げ時に決定的な意味を持っていたことに似ているとしている。いったん、ISISが成功してからは油田からあがる石油収入で勢力を維持する基盤ができたが、そこまでに達するまでの兵器購入や兵士の生活費、外国人のルクルート費などはスンニ派勢力の寄付が大きかったという。ISISはもともとアルカイダから別れたグループである。
しかし、それとは別にリビアから流れてきた高性能兵器やアメリカ、サウジアラビア、カタールなどが送ってきたアサド政権つぶしのための兵器が聖戦主義勢力に渡り、これらがISISの立ち上げに大きく貢献したことは間違いないだろう。
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