2015年11月27日16時50分掲載
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文化
「嬬恋村のフランス料理」11 我らのサンドイッチ 原田理(フランス料理シェフ)
時間に余裕がなく、さくっと食事を済ませたいという時によく作るのがサンドイッチ。フランスでも手軽な日常の食事として楽しまれているサンドイッチは忙しい日々の強い味方です。なによりカトラリーを使わずに食べることが出来て、後片付けの手間が少ないのが魅力です。重石だけあればいいのですから。
日本のコンビニエンスストアなどで売っているサンドイッチは非常に柔らかくて、食べやすく、小腹を満たすには良いのですが、きちんと食べる食事として考えると物足りない感じがします。比べて欧米で食べられているサンドイッチはかなりのボリューム。一回の食事として充分な量があります。もちろん値段も違うのですが。
フランスでサンドイッチといえば当然バゲットが多く、シンプルな具材をはさんだものがよく食べられています。フランス語で言うところの「カスクルート」は軽食という意味ですが、それはそのままサンドイッチを表す言葉でもあります。
我が家でもサンドイッチは手軽な昼食としてよく作ります。ありあわせの野菜やハム、チーズなどをはさんだサンドイッチはゆっくり時間をかけることのできない仕事の日の昼食に重宝します。少し前のパンでも一度トーストしてバターを塗れば、硬いバターも塗るときに柔らかくなりますし、何よりパンに香ばしさと温度が加わることで、消化しやすく、食欲も増します。食パンとレタスにトマト、胡瓜、ハムやベーコン、チーズや卵。マヨネーズ、ケチャップ、マスタード。そのどれもが普段冷蔵庫に入っているものばかり。ちょっと組み合わせれば楽しい昼食になるので、遅くおきた休日の朝などにコーヒーやカフェオレを飲みながら、ゆっくり作って楽しむのも良いかもしれません。晴れていれば最高で、遅く起きた朝に暖かい日差しを浴びながら食べるサンドイッチには抗い難い魅力があるように思います。
僕も今日は妻と自動車で遠出だと言うとき、化粧にいそしむ妻の隣で、車内で食べるサンドイッチを作ることがあります。軽井沢や嬬恋の林道を走りながら頬張れば、そのままピクニック気分です。遠出とは言うものの、最短の街までは30キロと遠いので、ただの食材の買い出しだったりしますけれど。
片手で食べられるサンドイッチはパンより具を増やしてしっかりはさめば、1食のボリュームとして十分な量があります。ポイントは肉類など歯ごたえのあるものは形にこだわらずに極薄に切ることです。紙みたいに薄く切る事でパンとの食感が合うようになり、歯ごたえにまとまりが出てきます。極薄の肉で多少味が付いていれば相性は悪くないので、豚の生姜焼きと線キャベツの前日の余りを挟んでも結構美味しいものです。
もうひとつのポイントは具をはさんだ後に一度重石をして材料同士をくっつけてあげること。これで味わいがぐんと変わります。ばらばらだった食材同士が圧縮されてくっつき、一体感ある味わいが生まれます。家庭でやるときには重石といっても近所に石捜しに出かける必要は無く、家の中にある重い鍋などを載せればよいのです。鍋が軽いときは水をたっぷりと入れて乗せれば十分に重くなります。挟んだサンドイッチの上にもう一枚まな板を置いて、重石を載せ、それまでに使った道具を洗って、片付ける時間くらい待った後に押さえて切り、皿に載せれば、後は食べるだけ。
ハンバーガーもサンドイッチの一種なので同じ要領で作ります。嬬恋村にはファーストフード店が無いので恋しくなったら自分で作るしかないのです。サンドイッチやハンバーガーを作るときに欲しくなるのがやっぱりフライドポテト。余裕のあるときにしか出来ませんが、昔ながらの揚げ鍋でもって、その場で生の芋から揚げる出来立てのフライドポテトは、その苦労もあいまって美味しいものです。
明日は久しぶりに夫婦そろって休みなので、今晩はたまってきたディスクを選んで映画など見ながらワインとサンドイッチを楽しんでみます。具材を選べば、どのシチュエーションでも楽しめるのがサンドイッチの魅力。フランス料理とは程遠いように思えても、楽しみ方はフランス流を忘れないようにしたいと思っています。
原田理 フランス料理シェフ
( ホテル軽井沢1130 )
■「嬬恋村のフランス料理」1 原田理(フランス料理シェフ)
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■「嬬恋村のフランス料理」12 〜真冬のスープ〜 原田理(フランス料理シェフ)
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■「嬬恋村のフランス料理」13 〜高級レストランへの夢〜 原田理(フランス料理シェフ)
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■「嬬恋村のフランス料理」14 〜高級レストランへの夢 その2〜 原田理(フランス料理シェフ)
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■「嬬恋村のフランス料理」15 〜わが愛しのピエドポール〜 原田理(フランス料理シェフ)
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■「嬬恋村のフランス料理」16 〜我ら兄弟、フランス料理人〜 原田理(フランス料理シェフ)
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