2016年03月01日22時06分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発 】動かせば次々に事故を起こす 高浜原発の恐ろしい現実 山崎久隆
テレビカメラの目の前で原子炉がスクラムしたのは史上初めてだろう。2月29日午後2時頃、冷却材喪失事故の原因もはっきりしないまま再起動していた高浜原発4号機で、原子炉出力10%で発電と送電を行う「並列」という作業を行おうとした瞬間、原子炉が緊急停止(スクラム)した。高浜原発4号機の発電機からの電気を送り出す「主変圧器」に電力を送る作業を行う「並列」を行った瞬間、「発電機トリップ(停止)」信号が発せられた。この原因は分かっていない。
発電機が止まるとタービンも止まる。引き続き原子炉が止まるかどうかは場合によるが、今回は起動途中であることや原因が分からないトラブルであることなどから原子炉停止信号つまり「スクラム」信号が発せられた。なお、原子炉を止めずにタービンへの蒸気を復水器に逃がして原子炉を動かし続ける「タービンバイパス」という方法もある。もちろん極めて危険な方法だ。
◎ 電源設備の怖さ
発電所で発電機にトラブルを起こしても原因がすぐ分からないのだから深刻である。止まっていた4年7ヶ月、関電は一体何をしていたのか。発電所を壊していたのだろうか。
長い間止まっている機械は、急激に動かすとトラブルを起こしやすい。徐々に慣らし運転などをして、安全に稼働することを確認するのが常識だ。しかし原発には常識は通じない。スケジュールありきで、何が何でも動かせと政府からも圧力がかかり続けている。
原発の電源設備は極めて重要な「安全系」である。高浜原発では電力は3号機のみで作られている。4号機は発電していないので原子炉の冷却から保安設備まで全て「外部電源」に依存している。所内変圧器から4号機の電気が送られていても3号機の電力は外部電源であることに変わりはない。
原子炉を起動し、タービンが回りだし発電機が並列されると、一定の発電量になれば所内電源に切り替えられる。この段階で起動変圧器から所内変圧器に電源が切り替えられるので、以後は発電機が止まれば直ちに外部電源に切り替えないとステーションブラックアウトを起こす。
福島第一原発2号機では、2010年6月に実際に外部電源喪失から非常用ディーゼル発電機起動失敗事故を起こしている。原子炉はスクラムしたものの炉心水位が急降下し、ECCSの作動寸前にまでいった。
この事故で電源の脆弱性が問題となり、市民団体が東電と保安院に抗議を行っている。その9ヶ月後に福島原発震災が発生し最悪の全電源喪失が発生していた。
この事故を反省し、福島第一原発に電源設備の脆弱性対策が少しでもされていたら、あるいはもう少しマシだったかもしれない。
◎ 原子力規制委員会は何を見ているのか
先日の冷却材漏れといい、規制基準適合性審査を通った原発が次から次にトラブルを起こすのはどういうことかと思われるかもしれない。しかし規制委の審査はそんなところを見ているわけではない。新たな基準に沿った強度、例えば耐震性などがあるかどうか、または規制基準に合致した設備や設計になっているかを見ている。配管からの水漏れだとか電源設備の安定性は規制以前のことであり、そんな当たり前なことは事業社が当然達成していなければならないレベルである。
しかし当たり前のレベルにさえ達しないのが今の電力業者であり原子力産業である。規制委が目をつぶろうと無視をしようと現実には、高尚な事故対策以前に、達成されているべき電源設備や配管の健全性からして、崩壊しているのが今の原発だ。
なぜそうなるのか。いうまでもない。老朽化していて隅から隅まで歪みだらけになっているうえ設計も悪い設備を、金をかけて補修したり健全性を維持したりりすれば、その分儲けが減るからだ。
古い原発はできるだけ費用をかけないで動かさなければ元が取れない。しかも新規制基準に適合するため、既に1000億円もかけてしまった。
そんな事業者の懐具合に親切丁寧なのが規制庁だ。40年の老朽炉1号機にしても日程に間に合わせて動かし続けさせようとしているではないか。
規制委が何かを見つけて危険を未然に回避できるどころか、むしろ見て見ぬ振りで再稼働を推進している。これではどんな事故が起きても不思議ではない。
再び原発過酷事故を引き起こすならば、国や事業者の責任は言うまでもないが再稼働を容認した議会や首長や全ての人々にも応分の責任があることも言うまでも無い。
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