2016年03月21日13時52分掲載  無料記事
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北朝鮮

スローガンから見える北朝鮮のお寒い内情

 国連安保理の新たな制裁決議と米韓の合同軍事演習に反発し、北朝鮮が物騒な言動を繰り返している。36年ぶりに開かれる5月の朝鮮労働党第7回大会まで、この調子で続くだろう。同大会に向けたスローガンには勇ましい言葉が並ぶ。だが、我慢強く読み進めていくと、一種戯画的で「??」「!?」と笑えるお寒い内情が見えてくる。 
 スローガンは、朝鮮労働党中央委員会と党中央軍事委員会が2月17日、共同で発表した。日本語に直してB5版で18ページ。「敬愛する最高司令官金正恩同志のために一命を賭してたたかおう!」「全人民武装化、全国要塞化の方針を徹底的に貫徹しよう!」といった個人崇拝、軍事化の部分はさておき、かなりの部分を占める経済関係のスローガンからは、北朝鮮で今、何が欠如・不足しているか窺える。 
 
 スローガンの列挙順に、若干を紹介する(カッコ内の「*〜〜」部分は筆者のコメント)。 
○ 電力は人民経済の生命線である。国の電力生産を決定的に増やせ! 
○ 火力発電設備の補修資材を最優先に供給せよ! 大規模な発電所の建設に力を入れよ! 
○ 節電闘争を大衆あげての運動として繰り広げよう! 
○ 1グラムのセメント、1滴の燃油、鋼材の切れ端一つも極力節約しよう! 
(*核、ミサイル開発は別として、こんな状況で他国と戦争するのは難しい) 
○ 対外貿易を多角化、多様化せよ! 
○ 三池淵郡をジャガイモ農業のモデル郡に立派に整えよう! 
○ 全国が温室野菜栽培の熱風で沸き立つようにせよ! 
○ 平壌市キノコ栽培工場のような近代的なキノコ栽培基地を至る所に建設せよ! 
○ 畜産物の生産を大衆あげて! 草を肉に替えることに関する偉大な領袖たちの遺訓を最後まで貫徹しよう!「愛国草」を大々的に植えよう! 
(*収量と栄養価が高い牧草。命名は金正恩。とにかく農業・食料生産は一番の懸案) 
○  一般消費財の問題を画期的に解決せよ! 
○ 生徒に格好の良い制服と良質の学用品を随時生産、供給せよ!われわれの化粧品工業を世界的水準に! 
○ サービスを多様に、親切に! 
(*この間、こうした民生品の改善が強調されている) 
○ 全党、全軍、全民が山林復旧戦闘に奮い立とう! 
(*はげ山が洪水被害をより深刻にした) 
○ 河川と湖、海の汚染を防ぐ闘いを力強く繰り広げよ!わが国を、公害を知らない労働党時代の錦の山河に輝かしていこう! 
(*有害物質を大気や河川に垂れ流し、が現状か) 
○ 現代化はすなわち国産化である。原料と資材、設備の国産化を重要な政策的課題として捉えていけ!輸入病に終止符を打て! 
(*対中依存からの脱却、制裁による貿易制限をもにらんだ方針だろう) 
○ 国際大会で英雄朝鮮の新たなスポーツ神話を創造せよ! 
○ スポーツを大衆化、生活化して労働と国防にしっかり準備しよう! 
(*目的がこれでは本当のスポーツとは言えない…) 
 
 いま北朝鮮は、こうしたスローガンの下、成果を出そうと、大会までの「70日戦闘」と銘打った国民動員のキャンペーンを展開している。中距離ミサイルの発射や軍事的動きは、その一環とも言える。 
 
 新たなキーワードは「自彊(or強)力」第一主義。 
 
 “自分で自分を強くする力”という意味で、国際的な批判が強まる中で生き残りを図る構えだ。スローガン自体から垣間見える深刻な状況を脱却することは可能だろうか。(西条節夫) 


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