2016年04月16日02時39分掲載
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反戦・平和
安保法制違憲訴訟 東京地裁第一次提訴 近づく
「平和は一人ひとりの市民や集団が政府や国に求めることのできる“権利”であり“人権”である」という考え方に基づき、平和への権利を国連総会での人権宣言として確立することを目指す「平和への権利国際キャンペーン」という運動が10年に亘って続いている。
2006年頃から始まったこの運動は、2008年にはスイス・ジュネーブにある国連人権理事会で“平和への権利”を法典化するための決議が採択され、2013年からは国連人権理事会の作業部会で国際人権宣言化に向けて審議が進んでいるとのことである。
この運動を日本で取り組んでいる「平和への権利国際キャンペーン日本実行委員会」が3月25日、東京・永田町の衆議院第二議員会館において“安保法制と平和的生存権”をテーマに集会を開催した。
4日後の3月29日には戦争法(=安保関連法)が施行されるということで、平日の夕方であるにもかかわらず、「戦争法の施行は平和に逆行する」との危機感を有する市民が多数駆け付け、「“平和への権利”の国際人権宣言化を日本から推し進めよう」という意気込みを強く感じた。
集会では、資格試験予備校「伊藤塾」塾長の伊藤真弁護士が報告者の1人として登壇し、現在取り組んでいる安保法制違憲訴訟の準備状況を報告している。
まず始めに、伊藤弁護士は「“平和的生存権”はとても重要で、核になる権利であり、この権利に対する侵害ということで裁判を行おうと考えています」と語り、
① 全国で600人以上の弁護士が代理人として各地の裁判所で提訴すべく準備に当たっている、
② 今年4月中に東京で第1次提訴を行い、具体的な提訴の日取りは4月20日(水)18時から参議院議員会館で開催する決起集会の中で発表する、
ことなどを紹介するとともに、「決起集会には、原告だけでなく、裁判を支援したいという方々にも是非集まっていただきたい」と訴えた。
続いて、伊藤弁護士は、安保法制違憲訴訟に掛ける思いを次のように語っている。
「私の周りの弁護士に提訴の話をしても、『それはもう負けるに決まっている。負けるのが分かっている裁判なんか、やる必要はない』『敵を利することになるじゃないか』『具体的な事件が起こっていないのに、裁判したって意味が無い』と言われるなど、法律家の中にもかなり消極的な考えが根強くあります。
しかし、そこを何とか突破しなければならないと思います。法律家が黙って見ているだけで、何もしないのは、現状を追認していると評価されてしまうのではないでしょうか」
「残念ながら今、この国では、法的には安保法制に対して合憲という判断しか出ていません。内閣が合憲と判断して法案を提出し、国会も組織としては合憲と判断して可決しています。この国では、まだ公的な機関が“安保法制=違憲”という判断をただの1つも出していません。元最高裁長官、元内閣法制局長官、ほとんどの憲法学者、日本中の全ての弁護士会が『憲法違反』と言っていますが、法的に見れば、私人が憲法違反と言っているだけなのです。
ですから、地方裁判所でも構わないので、何としても公的な機関に憲法違反との自主的な判断を出させる必要があります。もちろん、いくら最高裁が『憲法違反だ』という判決を下しても、それを受けて国会が法律を廃止させなければ先に進みません。そのため、安保法制に反対する国会議員を応援して法律を廃止していただくための大きな国民運動が最終的には必要になる訳ですが、その国民運動の一環として安保法制違憲訴訟を起こそうと思っています。
私たちが黙っているうちに既成事実が積み重ねられ、国民の関心がだんだんと薄れていってしまうという事態はあってはなりません。だから声を上げていく。安保法制違憲訴訟は、そのための訴訟なのです」
訴訟の準備に当たる弁護士によると、原告になれるのは“平和的生存権を侵害される市民一般で、国籍は関係なし”という無条件に近い条件であることから、これまで原告に応募した市民は全国で数百名に及ぶとのことである。安保法制違憲訴訟に世間の注目を集めるという点では、1人でも多くの市民が原告になることは望ましいことだろう。
しかし、裁判に勝てる見込みがあるかどうかとなると話は別で、例えば、自衛隊がPKO(国連平和維持活動)で派遣されている南スーダンで活動しているNGO関係者など、“勝てる原告”は限られてくるのではないかと指摘する弁護士もいる。
実際、伊藤弁護士も、今後の裁判における課題として「“平和的生存権の侵害”を具体的な形に示すことが重要になってくる」と語っている。
「NGOなど、世界の現場で様々な国際協力関係や平和の構築というお仕事をされている方々の『非常にやりにくくなった』『とても危険になってしまった』という声を拾い上げ、“平和的生存権の侵害”をどのように具体的な形にして訴訟に乗せていくのかが私たちのこれからの課題ですし、やならければいけないことだと考えています」
近く始まる安保法制違憲訴訟に対し、1人でも多くの市民が注目してほしい。(坂本正義)
<安保法制違憲訴訟 第一次東京地裁提訴 決起集会>
■2016年4月20日(水)18:00~20:00
■参議院議員会館 1階 講堂
(住所)東京都千代田区永田町2-1-1
(最寄り駅)東京メトロ有楽町線「永田町駅」一番出口すぐ
■式次第
・「安保法制違憲訴訟の会」からご挨拶
・“今 違憲訴訟を起こす意義”について
・原告からの決意表明 など
「安保法制違憲訴訟の会」公式ホームページもご参照下さい。
https://anpoiken.wordpress.com/
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