2016年05月15日13時15分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201605151315410

農と食

欧米でネオニコ系農薬の禁止や規制強化の動きが強まる

  フランス議会は3月17日、18年9月からの全てのネオニコ 
 チノイド系農薬禁止法案を可決するなど、欧米でネオニコ系農薬の使用を禁止したり規制する動きが高まっている。米国では家庭用農薬メーカーがミツバチ保護で脱ネオニコ宣言した。ネオニコ系農薬は神経系統を狂わせるなど毒性が強く、ミツバチの大量死の原因ともいわれている。他方、日本政府は規制をさらに緩めるなど世界の流れに逆行する動きが目立つ。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 
■フランス ネオニコ系農薬を禁止 
 
  フランス議会は3月17日、18年9月からの全てのネオニコ 
 チノイド系農薬禁止法案を可決した。法案は17年1月から禁止 
 を目指したが、農業への影響懸念からネオニコに代わる代替案検 
 討のため18年9月に延期された。 
 
  フランスは2008年から農薬削減に取り組み、2025年ま 
 でに50%削減を目指している。フランスはまた、2004年、 
 浸透性農薬のうちフィプロニルの使用を禁止している。この4月 
 8日には、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)が、モンサ 
 ントのラウンドアップを含む一部のグリホサート農薬の使用禁止 
 を決め、農薬規制を強化している。 
 
 フランス議会が可決したネオニコ系農薬禁止の詳細: 
 (1)全てのネオニコ系製品と、種子処理を含むその使用。 
 (2)対象農薬は、EUが規制しているクロチアニジン、イミダ 
    クロプリド、チアメトキサムに加え、アセタミプリド、チ 
    アクロプリド、スルホキサフロル、フルピラジフロン。 
 (3)ネオニコ系農薬のうち、ジノテフランとニテンピラムは 
    EU未承認。 
 (4)浸透性農薬のフィプロニルは、フランスでは2004年 
    よりすでに禁止されている。 
 
  欧米では、ミツバチの蜂群崩壊症候群(CCD)などの受粉媒 
 介昆虫の急激な減少の原因の一つがネオニコ系農薬である可能性 
 が高いとして、規制を強化している。 
 
  EUでは2013年12月から、3種類のネオニコチノイド系 
 農薬の一時使用禁止がされた。当初は15年12月までに再評価 
 を終え、使用禁止の可否を決定することになっていたが、再評価 
 の期限が17年1月までに延長された。 
 
  EUはまた、2013年7月、浸透性農薬のフィプロニルの使 
 用を制限した。 
 
 
 ・Reuters, 2016-3-18 
  France moves toward full ban on pesticides blamed 
  for harming bees 
  http://www.reuters.com/article/us-france-pesticides-idUSKCN0WK1KL 
 
 ・Connexion, 2016-3-18 
  Neonicotinoids to be banned 
  http://www.connexionfrance.com/neonicotinoids-ban-France-view-article.html 
 
 ・Farming Online, 2016-3-18 
  French legislators approve neonicotinoid ban 
  http://www.farming.co.uk/news/article/12296 
 
 
◆EUにおける浸透性・ネオニコチノイド農薬承認状況 
 ---------------------------------------------------------- 
   農薬名    承 認 日    備   考 
 ---------------------------------------------------------- 
 イミダクロプリド 09-08-01 13年より一時使用禁止 
 チアメトキサム  07-02-01 13年より一時使用禁止 
 クロチアニジン  06-08-01 13年より一時使用禁止 
 アセタミプリド  05-01-01 
 チアクロプリド  05-01-01 
 スルホキサフロル 15-08-18 日本:16年3月、承認作業一時中止 
 フルピラジフロン 15-09-12 日本:15年12月承認 
 ---------------------------------------------------------- 
 ジノテフラン        EU未承認 
 ニテンピラム        EU未承認 
 ---------------------------------------------------------- 
 フィプロニル   07-10-01 フランス:04年使禁止 
               EU:13年一部使用制限 
 ---------------------------------------------------------- 
 
 EUの農薬検索サイト 
 ・Search active substances 
  http://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/eu-pesticides-database/public/?event=activesubstance.selection&language=EN 
 
 
 ◆日本で承認されている浸透性・ネオニコ系農薬: 
  クロチアニジ、イミダクロプリド、チアメトキサム、アセタミ 
  プリド、チアクロプリド、フルピラジフロンに加え、EU未承 
  認のジノテフランとニテンピラムモ承認。また、フランスで禁 
  止のフィプロニルも承認されている。2016年3月、スルホ 
  キサフロルは、承認手続きが中断された。 
 
【関連記事】 
 ・No.No.568 EU:神経毒性農薬フィプロニルの使用制限を決定 
   http://organic-newsclip.info/log/2013/13070568-1.html 
 ・ネオニコチノイド農薬関連年表 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15050668-3.html 
 
 
■米国家庭用農薬メーカー ミツバチ保護で脱ネオニコ宣言 
 
  米国の家庭用農薬メーカーのScottsMiracle-Gro社は4月12日、 
 同社の芝生や園芸用農薬(オルト・ブランド)から、ミツバチ保 
 護のために、ネオニコ系農薬(イミダクロプリド、クロチアニジ 
 ン、ジノテフラン)を、2017年までに排除すると発表した。 
 
  この決定に関し同社は声明で、ミツバチとそのほかの受粉媒介 
 動物の受けうる脅威を慎重に考慮した結果だとしている。その上 
 で、この決定が業界リーダーとしての責任であり、他社が同じよ 
 うにネオニコ排除に続くように呼びかけた。 
 
  同社は、環境保護団体などからなるミツバチなどの受粉媒介動 
 物保護団体のPollinator Stewardship Councilと共同して、消費 
 者向けのプログラムを展開するという。また、政府機関に対し、 
 消費者が効果的に非ネオニコ系農薬を選択できるようなラベル表 
 示を認めるように求めた。 
 
  米国ではネオニコ系農薬に関する風当たりが強くなっている。 
 昨年4月には、環境保護庁が4種類のネオニコ系農薬について新 
 規の用途登録や変更を中止、ポートランド市が市有地でのネオニ 
 コ系農薬の使用を禁止、ホームセンター大手のロウズが全ての商 
 品から段階的にネオニコ系農薬を排除すると宣言など、官民上げ 
 て脱ネオニコ系農薬の動きが顕著になっていた。ScottsMiracle- 
 Gro社の決定は、こうした脱ネオニコの動きが、本丸の農薬メー 
 カーに荷まで及んだということだ。 
 
  ScottsMiracle-Gro社は、ラウンドアップも取り扱っている、 
 売上げ年間30億ドルの米国家庭用農薬のトップメーカーとのこ 
 と。日本での販売は不明だが、世界的に販路があるとしている。 
 
 ・ScottsMiracle-Gro, 2016-4-12 
  Ortho Brand Announces Plan to Eliminate Neonics 
  from All its Outdoor Products 
  http://phoenix.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=98364&p=irol-newsArticle&ID=2156274 
 
 
【関連記事】 
 ・No.656 米国EPA ネオニコ系4農薬の新規登録を凍結 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040656-1.html 
 ・No.658 米国ポートランド市 市有地でのネオニコ系農薬使用禁止 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040658-2.html 
 ・No.659 米国ホームセンター大手 4年でネオニコ排除を約束 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040659-1.html 
 
 
■米国 州レベルでもネオニコ規制に踏み出す 
 
  自治体レベルでのネオニコ系農薬規制が動きだしている米国で、 
 メリーランド州議会はこのほど、2018年から家庭用のネオニ 
 コ系農薬の購入を禁止する法案を可決した。州知事は拒否権を使 
 うかどうか態度を明らかにしていないというが、拒否権を使った 
 としても再議決が可能な賛成票があるとみられているという。 
 
  メリーランド州ではミツバチの消失が米国の平均よりも多く、 
 超党派での法案提出となったという。農民や庭師は適用除外で、 
 施行された場合、一般市民はネットなどを通して購入ができ、抜 
 け道があるという。しかし、米国初の州レベルでのネオニコ規制 
 が実施される可能性が出てきた。 
 
 ・Washintong Post, 2016-3-24 
  Maryland’s honeybees are being massacred, 
  and the weapon might be in your house 
  https://www.washingtonpost.com/news/energy-environment/wp/2016/03/24/marylands-honeybees-are-being-massacred-and-the-weapon-might-be-in-your-house/ 
 
 ・EcoWatch, 2016-3-24 
  Maryland to Become First State to Ban Bee-Killing 
  Pesticides for Consumer Use 
  http://ecowatch.com/2016/03/25/maryland-ban-neonicotinoids/ 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。