2016年05月29日23時44分掲載  無料記事
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農と食

米国メリーランド州で農民などを除き、ネオニコ系農薬の個人使用禁止法が成立

  米国メリーランド州はこのほど、あらゆる種類のネオニコチノ 
 イド系農薬の農業用を除く屋外使用を規制するポリネーター(受 
 粉媒介生物)保護法を可決し、知事も異議を唱えず州法として成 
 立したという。この州法は、個人による購入禁止禁止と屋外使用 
 の禁止に限定しているとはいえ、米国で初のネオニコ系農薬規制 
 となる。(有機農業ニュースクリップ) 
 
 
  メリーランド州法は、2018年1月1日より、小売店での販 
 売と個人の屋外での使用を禁ずるもので、農民や農業労働者、獣 
 医は除かれる。また、ペット用のノミ駆除剤や室内用は規制の対 
 象外となっている。また、違反には250ドルの罰金が科せられ 
 る。 
 
  あわせて、米国環境保護庁(EPA)が進めているイミダクロ 
 プリドなどの評価が終わり次第、同州農務省に評価結果に応じた 
 措置をとることも求めている。 
 
  対象となるネオニコ系農薬は次のように規定していて、今後、 
 新たに市場に出てくるネオニコ系農薬も規制できるようになって 
 いる。 
 
  ・イミダクロプリド 
  ・ニチアジン 
  ・アセタミプリド 
  ・クロチアニジン 
  ・ジノテフラン 
  ・チアクロプリド 
  ・チアメトキサム 
  ・その他のネオニコチノイドとして指定される化学製品 
 
  ネオニコ規制を求めて運動してきたラス・ベルリン(メリーラ 
 ンド農薬教育ネットワーク事務局長)は、この州法成立に「歴史 
 的な瞬間」であり、「ホワイトハウスやEPA、議会が、これま 
 での対応で十分とはいえないというメッセージ」だとコメントし 
 たという。 
 
 ・Maryland government 
  SB198:Neonicotinoid Pesticides - Restrictions on 
  Sales and Use (Pollinator Protection Act of 2016) 
  http://mgaleg.maryland.gov/2016RS/bills/sb/sb0198E.pdf 
 
 ・Beyond Pesticide, 2016-5-27 
  Maryland Pollinator Protection Act Becomes Law 
  http://beyondpesticides.org/dailynewsblog/2016/05/maryland-pollinator-protection-act-becomes-law/ 
 
 
  米国では、オバマ大統領は2014年6月、花粉媒介生物(ポ 
 リネーター)の健康に関する特別委員会を立ち上げ、180日で 
 対応策を策定するとぶち上げた。米政府は、予定を大きく遅れて 
 翌2015年5月、ミツバチの群れの消失を経済的に持続可能な 
 レベルに引き下げる、オオカバマダラの個体数の回復、花粉媒介 
 生物の生息地として280万ヘクタールを回復させるといった対 
 応策を示しただけで、劇的な対応策は示さなかった。米国環境保 
 護庁は2015年4月、イミダクロプリドなどネオニコ系農薬4 
 剤について、新規データの提出とリスク評価完了まで、新規の用 
 途登録や変更を停止した。 
 
  しかし、米国のミツバチの群れの消失は13年−14年以降、 
 年々、増加している。米国のミツバチの群れは15年から16年 
 にかけて44.1%が消失した、と米国の調査団体 Bee Informed 
 Partnership が5月10日に公表した。養蜂家は、おおよそ15 
 %の群れの消失を許容できるとしているが、この1年間の群れの 
 消失、その約3倍に達している。はっきりした原因は寄生虫であ 
 るが、農薬や土地利用の変化による栄養失調も考えられるとして 
 いる。この1月にEPA(米国環境保護庁)は、ネオニコ系農薬 
 の一つであるイミダクロプリドがミツバチに有毒であるとする、 
 予備的なリスクアセスメントを公表している。今回の調査はそこ 
 までは踏み込んで分析していない。米国政府の対策が効果的では 
 ないことを示している。 
 
  米国の農業における受粉の経済価値は100億ドルから150 
 億ドルに達していると推定されている。アーモンドはほぼ100 
 %が養蜂ミツバチによるという。 
 
 ・Bee Informed Partnership, 2016-5-10 
  Nation’s Beekeepers Lost 44 Percent of Bees in 2015-16 
  https://beeinformed.org/2016/05/10/nations-beekeepers-lost-44-percent-of-bees-in-2015-16/ 
 
 
  米国政府が抜本的な対策を取りえていない中、メリーランド州 
 のように、自治体レベルでのネオニコ系農薬規制の動きがでてき 
 ている。大手ホームセンターなどでも、ネオニコ系農薬の販売を 
 中止する動きがでてきている。内容に差があるものの、「先進  国」が官と民とが規制強化に動くの中で、日本だけが規制緩和に 向かっていて、異様な状況といえる。 
 
【関連記事】 
 ・No.670 米政府 5ヶ月遅れでミツバチ保護策を発表 
      新たな規制措置含まず 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15050670-1.html 
 
 ・No.656 米国EPA ネオニコ系4農薬の新規登録を凍結 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040656-1.html 
 
 ・No.659 米国ホームセンター大手 4年でネオニコ排除を約束 
   http://organic-newsclip.info/log/2015/15040659-1.html 


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