2016年07月06日22時40分掲載  無料記事
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マーティン・ファクラー著 「安倍政権にひれ伏す日本のメディア」  ニューヨークタイムズ前東京支局長が「日本の世論調査は誘導尋問のような『世論操作』だ」

  ニューヨークタイムズ前東京支局長のマーティン・ファクラー氏が書き下ろした「安倍政権にひれ伏す日本のメディア」は今年2月に出版された本です。今の日本の新聞やテレビメディアに対する厳しい評価が下されています。特に第二次安倍政権になってから、官邸のメディア対策が第一次安倍政権時代から格段に進化して高校野球からプロ野球になり、メジャーリーグを目指しているのに対して、日本のメディアは未だに高校野球レベルを出ていない、としています。 
 
  「本来、記者クラブはメディアが権力に対抗するために生まれた組織だ。今こそ記者クラブ同士で連帯し、安倍政権のメディアコントロールと真剣勝負で戦うべきだ」としています。日本のメディアが世界の潮流から目をそらし、ガラパゴス化した閉鎖空間に閉じこもっていることを批判しているのです。 
 
  本書で参院選挙を目前にした私たちが最も身近に感じる話題は世論調査でしょう。この世論調査もまた、世論操作であるとしています。 
 
  「日本の新聞社が実施する世論調査では、ある事柄について尋ねる際、あきらかに自分たちの論調を入れこんだ形で質問を設定することが多い。これでは『世論調査ではなく世論操作だ』と言われても仕方がない」としています。ファクラー氏によると、昔から外国人特派員の間では「日本の世論調査は全然信用できない」と言われてきた歴史があり、ファクラー氏自身も東京発の記事を書くときに日本の新聞の世論調査は極力参考にしないようにしてきたそうです。 
 
  ファクラー氏も指摘していますが、設問時の誘導だけではなく、固定電話で調査をすると携帯電話を使う比較的若い世代の声が反映されない問題があり、また逆に両者を混ぜると小選挙区の地域というくくりが乱れてしまうなどの限界があるようです。 
 
  アメリカでも2012年の大統領選の投票直前にギャロップという世論調査会社が共和党の「ロムニー勝利」の予測を流してしまったことがあるそうです。結果はオバマ大統領の再選でした。ギャロップの場合は民主・共和のどちらにも中立を守ろうとしたにもかかわらず、実際には誤りをおかしていたと言います。以下が2012年11月のギャロップの誤った世論調査で、ロムニー49対オバマ48と示したものです。 
http://www.gallup.com/poll/158519/romney-obama-gallup-final-election-survey.aspx 
  大統領選挙の前の10月の世論調査はもっと激しく結果と異なっていたようです。ロムニー52 対 オバマ45です。これだとロムニーの圧勝です。 
http://www.newsmax.com/Newsfront/gallup-poll-romney-leads/2012/10/21/id/460837/ 
  世論調査というものは本来、統計という科学にもとづいた調査であり、サンプルデータが全体の傾向と合致していることがこの方法の前提になります。サンプルが間違っていたら、統計は信頼できないのです。ですから、サンプル選びに偏りがあればまったく信頼できない結果が表示されます。世論調査はどのように実施されたかの記載がもっと必要で、その検証ができないならば、大衆操作に利用されている可能性も十分にあります。 
 
 
■マスコミ各社・選挙前の世論調査の「支持率」は本当に信頼できるのか? サンプル集合の選び方で数字はまったく変わる  谷克彦(数学月間の会 世話人) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201606181029266 
 
■世論調査は正しいか? 検証レポート その2  谷克彦 (数学月間の会 世話人) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201606302120084 
 
■ビッグデータによる世論調査  世論調査を問うレポート第三弾 谷克彦 ( 数学月間の会 世話人 ) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201607052025162 
 
※Opinion polls failure at 2015 election 'due to unrepresentative samples'(英テレグラフ紙の報道「2015年の英国選挙の世論調査はサンプル集合の選択で誤りがあった」) 
Inquiry into pollsters' failure to forecast Conservative victory finds sampling methods may have resulted in too many Labour supporters being questioned 
 労働党支持者が過剰にサンプル集合に含まれていたため、世論調査と選挙の結果がまったくことなっていたことで、のちに検証が行われた。 
http://www.telegraph.co.uk/news/general-election-2015/12107167/Opinion-poll 


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