2016年07月21日00時16分掲載  無料記事
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核・原子力

「核兵器を先に使う場合もある」と安倍は言いたいのか

 安倍政権は、アメリカのオバマ政権が核兵器の「先制不使用」政策の検討を始めたことに、危機感を覚えたらしい。米政府に新政策の立案に待ったをかけるべく協議を申し入れたことが話題になっている。 
http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=265189&comment_sub_id=0&category_id=256 
 いま「先制不使用」を宣言しているのは、5つの核保有国の中では中国のみ。これにロシアと並ぶ最大の核大国・アメリカが加われば、核軍縮に与えるインパクトは相当なものとなる。「核の傘」に依存し続ける安倍・日本政府とはいえ、今回の横やり的な動きは「唯一の被爆国」として恥ずかしく、罪深い。 
 
 「オバマ大統領が核兵器に関する新政策を検討している」と報じたのは、米紙ワシントン・ポスト7月10日付。日本でも注目された記事だが、あらためて検討のポイントを列挙しておく。 
 
① 核の「先制不使用」宣言:米国の核態勢にとって大きな変更となる 
② 核実験を禁じる国連安保理決議を目指す:包括的核実験禁止条約への上院(野党共和党が多数)での批准を待たず、核実験をしないという米国の誓約を公式化できる 
③ ロシアとの新START条約による配備核兵器への上限を2021年から26年まで5年間延長する:オバマの次期政権の間に条約が失効しないようにできる 
④ 新型の核巡航ミサイルの配備中止ないし延期:このミサイルは限定的核攻撃用のもので、こうした能力は米国に必要ないとオバマは考えている 
⑤ 配備核兵器の大半を「一触即発の警戒態勢」から外す 
⑥ 核兵器庫近代化の長期計画も予算を削減、そのための専門家委員会を設置 
 
――などだ。 
 
 あくまで検討であり、実際にこれらのどれだけが実行に移されるかは全くわからない。しかし、2009年のプラハ演説で「核兵器の役割を低減させ、最終的には核兵器のない世界を目指す」と表明したオバマ大統領らしい野心的な試みだ。 
 ワシントン・ポストの記事によると、すでに野党・共和党の指導部からは、「政権が任期最後の数カ月を使って核抑止力を弱め、議会への約束を破るような措置をとるべきではない」「核政策の変更が、米国の核の傘の下にある欧州と北東アジアの同盟国にどれほど影響するかについて考慮していない」との批判が上がっているという。 
 こうした動きとも呼応した安倍政権の横やり。非人道兵器の極みである核兵器を「場合によっては先に使って良いですよ」と公言するに等しい。また巡ってくる暑い夏を前に、日本国内そして世界から厳しい目が向けられることになるだろう。(西条節夫) 


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