2016年08月09日13時26分掲載
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やわらかくしなやかな闘争宣言――原ミナ汰・土井いつき編著『にじ色の本棚−LGBTブックガイド』 大野和興
ぼくが好きな歌の一つに、島倉千代子の『人生いろいろ』があります。昭和もそろそろも終わりかけの昭和62年(1987年)、この歌の登場は衝撃的でした。寺山修司はすでになく、紅テントも黒テントも昔語りになって、戦後労働運動の最後の牙城国労が中曽根改革で最期を迎えていました。空前のバブル時代の予兆に人びとが心をざわつかせ、反体制的なるものが終焉を迎えていた時代でした。
「人生いろいろ/男もいろいろ/女だっていろいろ咲き乱れるの」と歌うこの歌に、社会のらん熟とともに生の多様性を肯定する時代の空気が感じとれたものです。でも、まだ性は男と女の二分法のままでした。
それからほぼ30年、一寸刻みではありますが、性の多様性を認め合う時代の流れが見えているようにもみえます。副題に「LGBTブックガイド」とある本書『にじ色の本棚』はそうした時代の中から必然的生まれた本といえるでしょう。LGBTとは「L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー」の頭文字です。本書の帯はそれを「Lovely Great Book Tour」と読み替えています。
そう、本書は「多様な性を生きる性的越境者」とその人たちをサポートする人たちのためのブックガイドなのです。自伝、小説、社会・歴史書、コミックから始まり生活、医療、法律などの分野にも視点を広げて、46人の読み手が我が事として読み込んで編んだ本書は、どこを読んでも深い思索に裏打ちされた言葉に出会うことができます。それはぼくには、やわらかく、しなやかな闘争宣言と読めるのです。
三一書房 A5版
1700円+税
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