2016年08月17日02時56分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201608170256453
みる・よむ・きく
強制収容所の眼差し 「生者が通る」(Un vivant qui passe ) クロード・ランズマンのインタビューから
フランスのドキュメンタリー作家クロード・ランズマンはホロコーストを記録した映画「ショアー」で知られていますが、その映画を製作していた時にスイスの医師にインタビューしていました。このインタビューは独立したドキュメンタリー作品として公開され、さらには活字として書店にも並ぶことになりました。「生者が通る」(Un vivant qui passe )というタイトルです。
ランズマン氏がインタビューしたスイス人の医師は第二次大戦末期の1944年にチェコのテレジエンシュタット強制収容所を赤十字国際委員会の視察団団長として訪れました。このドキュメンタリーは様々な問いかけを含んでいますが、忘れられないやりとりの1つに収容されていたユダヤ人の眼差しの強さがあります。
以下CLはクロード・ランズマン。
CL「もし、それをあなたが目にしたとき、あなたは彼らがひどく苦しんでいると思いませんでしたか。つまり、死への道にある、と。あるいは死刑に処せられているのではないか、と・・・」
医師「それは・・・それは・・・その通りだったんですよ。まさに歩いている骸骨でした。というのも、栄養が与えられていなかったのだから・・・」
CL「そうです」
医師「・・・そうですよね。生きているのは眼だけです。」
CL「生きているのは眼だけ、ええ。」
医師「そうです」
CL「それはイスラム教徒に見られる、あのものすごく強烈な眼差しではないでしょうか」
医師「はい。強烈そのものでした。収容されていた人々は信じられないほど強烈な眼差しであなたを見て、ほとんどこう自問したでしょう。<やって来るのはあれはいったい誰なんだろう?何のためにここに? 生きている人が通るぞ>と。そうじゃありませんか。そして彼らが間近に見るその人物は親衛隊ではない。」
CL「ええ、ええ、あなたは民間人でした」
医師「常に民間です」
人間を支配民族と劣等民族に分けて、劣等な人間は殺しても、レイプしても、工業原料にしてもよいと考えたのがナチスの排外主義でした。現在、人間が家畜などの動物に適用している考え方を人間自身に適用したのがこの思想です。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。