2016年08月20日17時17分掲載
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国際
トルコの「合意があれば子供とのセックスは解禁」は西欧の誤解という報道 端緒はスウェーデンとトルコとの確執から 来年1月までに新たな罰則を制定か
昨日、本サイトで「非常事態宣言後のトルコ 憲法裁判所が12歳から15歳までの年齢の子供とのセックスは子供の合意があれば解禁することに決定」という見出しの紹介記事を書いた。すると知人から、別のソースの記事が送られてきた。そこには欧州で広まっている記事にはトルコの憲法裁判所の決定をめぐる経緯や、誤解されている部分などがあるとされていた。
昨日書いた紹介記事の冒頭は以下。
「先月のクーデター未遂で憲法裁判所などを含む多数の司法関係者が解任されたトルコで憲法裁判所によって新たな司法の決定が下された。12歳から15歳までの少年少女とセックスしても、子供の側の合意があれば「性的虐待」とはみなさない、とする解禁措置である。これまでは合意があろうとなかろうと、相手が子供であるという理由で、無差別に「性的虐待」として犯罪行為とされていたのだが、その法律を覆したのだ。トルコ大手の Anadolu Agencyが発信したとされ、様々な独立メディアや英国のインディペンデント紙などが報道している。人権団体などが抗議の声を挙げているようだ。」
ここで、争点になっているのは12歳から15歳までの子供とのセックスが「合意があれば」無罪なのかどうか、という点だ。トルコの新聞hurriyet(英語版)は以下のリンクでそのあたりを説明している。タイトルは’Turkey will implement heavier sentences for sexual abuse of children’であり、「トルコは児童の性的虐待を重罪化」である。これは昨日の記事とは一見まったく逆のことを意味している。いったいどういうことか。
http://www.hurriyetdailynews.com/turkey-will-implement-heavier-sentences-for-sexual-abuse-of-children.aspx?PageID=238&NID=102980&NewsCatID=510
記事を読むと、トルコの地方裁判所から憲法裁判所に、子供とのセックスの場合の刑罰が年齢に応じて段階的にあるべきではないか、ということが問題提起された。性的に大人に近い年齢の子供に対してセックスをした場合の刑罰と、幼児に対してセックスをした場合の刑罰に差をつけるべきではないか、ということである。そして、12歳までの児童に対して性的虐待を行った場合の刑罰の最低基準を禁固10年以上にし、それがレイプだった場合は18年以上にする(これは今までより重くなるようである)。この意味では刑罰は強化されている。
問題となっているのは今まで15歳までの子供に適用されていた「15歳までの子供とのセックスは(合意があろうとなかろうと)性的虐待とする」と無条件に処罰の対象となっていた刑法103条を取り消す決定が実際に憲法裁判所でなされたことである。
これはこの記事でも確かに7対6で決定されたと報じられている。そして、この新たな司法判断は7月の公式の情報公開から半年後の来年1月から実行されることになるという。それでも、トルコの司法当局は法の「抜け穴はない」と訴えているようだ。つまり、12歳から15歳までの子供との「合意がある場合」の刑罰はどうなのか、という点で「抜け穴を作らない」と訴えていることを意味しているようだ。この点で、来年1月までにトルコ議会で、新たに刑法103条に変わる法律を作成する予定とのことである。だから、ここで「抜け穴」を封じる法案が提出されればトルコの司法当局が訴えているように子供への性的虐待に対する厳罰化と言えるだろうし、あるいは少なくとも「解禁」ではなかったと言うことができる。だが、トルコのhurriyetの記事によれば、それはこの先のトルコの国会次第なのである。
この経緯を欧州のトルコに対する人種差別主義であると告発するフランスのインターネット新聞Mediapartへのある寄稿によると、当初、スウェーデン議会がこの決定を問題視し、トルコとスウェーデンの間に衝突が生じたとされ、これを欧州の右翼メディアが意図的にクローズアップして、 "La Turquie legalise la pedophilie"(トルコが児童への性的虐待を合法化)というような単純化した形で拡散したという。そこにはいわゆるトルコ=トルコ風呂というようなトルコに対する歴史的な偏見が根底にあり、今回の件もその上にのったものかもしれない。
https://blogs.mediapart.fr/guillaumepostel/blog/190816/la-turquie-va-durcir-sa-legislation-contre-la-pedophilie
さらに、今回の件に関してはエルドアン大統領のクーデター未遂後の強権的な弾圧の後でもあり、トルコのイスラム原理主義国家化への傾向と、児童虐待の件がリンクしやすいという点があった。筆者も、そういう文脈を強く感じて紹介記事を書いた。しかし、より詳細に情報取集すべきだったと反省している。そしてまた、別なる視点の記事を紹介してくださった知人に感謝している。
今後はトルコ国会が、この刑法103条の取り消しの穴をどう埋め合わせるのか、そこをウォッチしたいと思う。
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