2016年09月05日09時47分掲載
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コラム
日本メディアの神話 沖縄、南沙諸島、朝鮮戦争をつなぐもの
この稿を起こすにあたって最初に述べておきたいのですが、僕自身は中国の政権や北朝鮮の政権が好きではありません。とはいえ、これらの国々の軍事力に対して日本の国内新聞が書く記事は世界の基準からすると、非常におかしなものになっているように思えます。中国が空母の建設に取りかかったり、軍事費を増大させたりすることは脅威ですし、北朝鮮のミサイル開発もまた由々しき事態であることは間違いありません。だから、それらの国々の指導者を批判する記事が日本でたくさん書かれています。東アジアで日本が平和を愛するのに対して、これらの国々が一方的に誤った指導者に率いられて軍事力を底上げしているから日本が脅威にさらされている、という文脈です。
しかし、これは1つの神話だと思います。日本は世界最強かつ世界でもっとも巨額の軍事費をつかっている米国と軍事同盟を有しており、沖縄その他各地に米軍の最前線の基地を提供しています。こうした中で米国と北朝鮮は朝鮮戦争の休戦以来、平和条約は締結していません。未だ休戦でしかないのです。これまで北朝鮮側が何度となく、平和条約の締結をアメリカに申し入れていますが、その提案は米側に一蹴されてきたのです。こうした場合に、世界最大の軍事大国と向き合う小国が核兵器を開発したり、ミサイルを開発したりすることは、北朝鮮の立場に立って事態を想像してみれば無理からぬところではないでしょうか。中国の軍事力についても同様の見方ができるのではないかと思います。
米軍の軍事力、とくに核兵器の傘に守られながら、日本のマスメディアはあたかも自身が丸腰であるかのように考え、中国と北朝鮮の一方的な脅威を批判的に語っていますが、その行為自体が自己欺瞞であり、むしろ、日本国民を欺くものであると思います。もし、中国と北朝鮮の軍事力拡大を止めたければ、米国を含めた東アジアにおける軍縮交渉を行う必要があります。米軍の軍事力削減をてこにして、中国と北朝鮮に軍縮を要求するしか東アジアの軍事力削減を実現するあてはありません。しかし、日本政府は日本のマスメディアと手を携えるかのように、むしろ世界最強の米軍を後ろ盾に自身も軍事力を増大する方向に進もうとしています。これは問題を解決するよりもむしろ東アジアの軍拡競争をさらに促すことになるでしょう。日本国憲法は武力による国際問題の解決ではなく、平和外交による問題解決を要請しているはずです。
■「朝鮮戦争の終結」を希望 北朝鮮の外交官が米に提案(2011年9月)
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「朝鮮戦争を公式に終結させるために平和条約を米国と締結したいと北朝鮮が希望しているという。これは北朝鮮の核兵器開発をめぐる話し合いの場である六か国協議を再開するために、ニューヨーク入りしていた副外務大臣Kim Kye-gwan氏らが米側に伝えたもののようだ。」
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